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総力戦⑧

last update Last Updated: 2025-03-11 17:00:05

「攻撃が始まりました」

研究所では既に魔族の軍隊が作られており頑強な要塞と化していた。

「世界各地に散らばった魔族と魔物を呼び戻せ。全員ここの防衛に当たらせろ」

「首都の制圧にとりかかった者達も全てですか?」

「二度は言わん。全てだ。我が軍が全力をもってやつらを正面から叩き潰す」

魔神もこの世界に来たすべての戦力を今日ここで決着をつけるため集結させていた。

「くくく、この世界と異世界の総力戦か……心躍る戦いではないか。そうは思わないか?ゾラ」

「一部厄介な者達も混ざってはおりますが数はしれています。このまま防衛し続ければ奴らは消耗します」

「それに……リンドール様の結界はこの世界の人間では破れないでしょう」

研究所に用意された玉座に座る魔神は不敵に笑った。

――――――

進軍を開始した日本軍は結界が破れず、目的地を目前にし二の足を踏んでいた。

しかしそのおかげからか、アレン達は順調に進んでいる。

結界まで残り百メートルの位置で止まり、アレンさんは魔法の詠唱に入った。

詠唱は基本省略するが今回はしっかり詠唱している。

威力を上げるため、とのことだがそれほどまでに魔神の結界は硬いそうだ。

「全員ボクの後ろに」

指示に従い全員が後方へと下がる。

「じゃあいくよー。破滅の波動、グランドカタストロフ!」

両手を前に翳し、軽い口調とは裏腹にドス黒い魔力溜まりが作られていく。

一定のサイズになると今度はその黒い魔力が光線のように、結界へと飛んでいった。

極太の光線は轟音を響かせ、結界へと着弾する。

拮抗しているのか、雷のような音がここまで聞こえてきた。

風圧が後ろにいる僕らの所まで届いている為、顔の前に腕を出し踏ん張っている。

数秒ののち、結界はガラスの割れる音と共に消え去っていった。

「さあ、結界はなくなった!展開しつつ突撃!!!」

アレンさんの掛け声と共に団員達は各々駆け出し、ある者は屋根伝いに、またある者は道路を駆けていく
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    「久しぶりーガイアス。元気だった?」「元気も何もお前ら"黄金の旅団"が行方不明になったととんでもない騒ぎだったんだぞ」体格のいい男は苦言を零しながらもアレンさんが無事に帰ってきたことを喜んでいるようだった。「一体何があったんだ」「話すと長いよ」「そこの見たこともない男といい……全員こっちに来い」僕ら三人はギルドの二階へと案内され、ある部屋へと通された。VIP扱いのようで僕は少し緊張していた。長いソファーに腰を下ろすと目の前にギルド長が座る。「まずは無事の帰還を祝おう。よく戻ってきてくれた」「その辺りも詳しく説明がいるかい?」「当たり前だ!」アレンさんはやれやれと肩を竦め説明をし始める。ギルド長はその話をしっかりと聞き、最後に長い溜め息をついた。「はぁぁぁ……よくそれで無事に戻ってこれたものだ。そこの、カナタだったか?よくアレン達をこっちの世界に戻してくれた。礼を言う」「いえ、みなさんの力あっての結果ですから」「ふん。謙遜するタイプか。俺は嫌いじゃないぞ」ギルド長のお眼鏡には叶った受け答えだったようだ。「俺はこの帝都冒険者ギルドの長をやってるガイアスってもんだ。今後も何かと関わる機会が多いだろうからな、覚えておいてくれ」「はい、こちらこそよろしくお願いします」ギルド長と懇意にしておけば今後何かあっても手を貸してくれるだろう。僕はガイアスさんと握手を交わした。「それで魔神だったな……ギルドで高位冒険者は雇えるが魔神にどれだけ対抗できるかは分からんぞ」「まあボクの仲間が何人もやられたからね。普通の冒険者だと歯が立たないだろうから最低でもS級以上の手を借りたい」道中で教えて貰ったが、冒険者にはランクが存在する。アレンさんのような王の名を冠する冒険者は英雄級、アカリやレイさんのような冒険者はSS級。二つ名を持っているのはS級以上だそうだが、その中

  • もしもあの日に戻れたのなら   宿り木の仲間達⑦

    テスタロッサさんとの顔合わせも終わると今度は冒険者ギルドへと赴く事になった。正直少しだけ楽しみにしている場所でもある。アレンさんがギルドの扉を開けると中には沢山の冒険者がいた。依頼票を見ている者やテーブルで談笑する者、中には受付嬢を口説いている人もいる。そんな冒険者達がアレンさんを見て一斉に静まり返った。「やあ、みんな。久しぶりだね」アレンさんは呑気にそう声を掛けるが誰も反応しない。いや、正確には反応しているのだが、全員が全員口を開けて呆けた顔をしていた。「ア、アレンさん……生きていたと噂にはなっていましたが……」「ん?ああもしかしてオルランドが触れ回ってるのかな」受付嬢が驚きを通り越して恐ろしいものでもみたかのような顔で声を発する。国王陛下を呼び捨てなど不敬にも程があるがアレンさんだから許されているだけだ。聞いているこっちは冷や汗ものだが、アレンさんは気にする様子がない。「よくご無事で……おかえりなさいませ」「ただいま」アレンさんがそう言うとギルド内は喝采に包まれた。冒険者でも上位に君臨するアレンさんの人気は凄まじいようで、ワラワラと集まってきた。誰しもが笑顔を浮かべアレンさんやアカリに声を掛けているが、僕には誰も話し掛けはしない。見たこともない奴がいるな、くらいは思っているかもしれないが、先にアレンさんの無事を祝っているようだった。「道を開けてもらえるかな?ギルドに報告しなければならない事があってね」そう言うとみんな離れて道を開けていく。それに倣って僕も着いていくとやはり若干の注目を浴びた。眼帯を着けているの

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