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神域へ⑥

last update Huling Na-update: 2025-04-29 18:30:06

アレンさんが有無を言わせず吹き飛ばされたのを見ていた僕は固まってしまった。

他のみんなは視線が下を向いているお陰で今の状況をあまり理解できていないようだが、それで正解だ。

意味の分からない力で吹き飛ばされたのを見ていれば、口を開くのが恐ろしくて堪らない。

「さあ気を取り直して。カナタ君、世界樹を目指す理由は何かな?」

「元の世界を、取り戻す為です」

「取り戻す?それは比喩というわけでもなさそうだね。元の世界の話を聞かせてもらえるかな?」

まさかとは思うけど僕以外はみんな片膝を突いたままなのだが、その態勢で放置するのだろうか?

この状態で話を進めれば少なくとも数十分は身動きできないぞ。

「あの、ここで話すんでしょうか?」

僕がそう恐る恐る聞くとペトロさんはハッとしたような表情になり、申し訳なさそうな顔で謝罪してきた。

「おっと、すまないね。気が利かなくて。ガブリエル、彼らを部屋の外へ」

「ハッ」

神族のリーダーであるガブリエルさんは吹き飛ばされてどこに行ったか分からないアレンさん以外を部屋の外へと連れて行った。

アレンさんはもうどこまで吹っ飛んでいったのか見当もつかないな。

「よし、これでいいかな。さあ、これでも飲んで話を聞かせてくれるかな?」

僕はペトロさんと同席する事を許されテーブルに着くといつの間にか用意されていた紅茶を一口頂く。

少しだけ気持ち落ち着いたな。

「僕のいた世界は――」

そこから一時間ほどかけて今までのあった事を丁寧に話した。

ペトロはニコニコしたり悲しそうな顔をしたりと表情が豊かだった。

「なるほどなるほど……それで世界樹に願いを叶えて貰って元の平和な時を取り戻したいという事だね」

「はい。……時間を戻すなんて願いは難しいのでしょうか?」

「いや、そうではないさ。この世界に干渉する願いでなければ恐らく誰も文句は言わないと思うよ。ただ……世界樹へのアクセスは過半数の使徒の許可がいる。まあ私は許可し
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Kaugnay na kabanata

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ⑦

    扉をくぐった先はまた別の光景が広がっていた。周りは宝石のように光り輝く巨大な水晶が散乱している。ペトロさんの部屋とは大違いだ。「ここは私達使徒の求めるものが表現されているんだ。私の場合は果てしなく広がる平穏を望む。だから草原が広がっていただろう?ここの使徒は違うのさ」「水晶……輝かしい生を歩みたい、とかそんなところでしょうか?」「おお、察しがいいね。君、頭いいって言われないかい?」どうやら当てずっぽうが正解だったようだ。輝かしい生を歩みたい、か。言ってはみたけど実際よく分かっていない言葉だ。何をもって輝かしい生といえるのか。「その使徒様はどこにいるんですか?」「私が来たことは気づいているはずだからもうすぐ来るよ」ペトロさんがそう言ったタイミングで目の前の水晶が激しく砕け散った。「ふぅ~お待たせ!」現れたのはペトロさんと同じく白い服を着た女性だった。煌びやかな恰好をしてるのかと思いきや、まさか同じ白い服だとは思わなかった。「来たねアンデレ。ちょっと今日は紹介したい人がいてね」「何かしらペトロ。貴方が紹介したいだなんて珍しい事もあったものね~」ペトロさんは僕の方を見た。挨拶しろって事かな。「初めまして城ケ崎彼方です」「城ケ崎?えらく変わった名前ね~。で?ペトロが紹介したって事は普通の人間ではないのでしょう?」「はい。僕は別世界から来た人間でして――」もう何度目かも分からな自己紹介をするとアンデレさんの目が輝きだした。ペトロさんと同じく僕は興味深い対象であったらしい。話し終えるとアンデレさんは期待に満ちた表情に変わっていた。まるで初めて見た生物を観察するかのように。「へぇ~面白いね~!ペトロ、なかなか面白い子を連れてきたね!」「そうだろう?別世界となれば我々の手が届かない場所だ。だからこそ面白い」「うんうん!それでこの子がどうしたの?」ペトロさん

    Huling Na-update : 2025-04-29
  • もしもあの日に戻れたのなら   もしもあの日に戻れたのなら(プロローグ)

    〜プロローグ〜2044年4月9日。平和な世界は一変した。降り注ぐ隕石、崩れる高層ビル、燃え盛る住宅街、焼け爛れた道路を闊歩する異形な生物。空が割れ轟音が耳を劈く。無事な人を探すほうが難しいくらいだ。「助けて!!足が!!!」「なんだよこの化け物は!!うわぁぁぁ!」「痛いよぉ……」あちらこちらで、声が聞こえる。僕は手を差し伸べる事もせず、そんな声を聞き流し目的地へと足を進める。横を見れば黒髪の女性が悲しそうな目で周囲を見渡す呟く。「何人死んだんだろう……」そんな呟きも聞き流し、歩き続ける。もう望みはあそこにしか残されていない。何もかもが昨日の風景とは違う。何処を見渡しても阿鼻叫喚。もう、元には戻れない。全ての元凶である僕には、ただ静観するほかなかった……――――――  2043年9月2日。光が丘科学大学4回生、城ヶ崎 彼方《カナタ》。僕は近未来科学科に所属し、文明の発展に役立つ知識や技術を学んでいる。難しい事をしているように聞こえるが、ただ時代の最先端を知りたいから、なんて単純な動機で入っただけだ。昔は空飛ぶ車なんて物は出来たばかりで運用には至ってなかったみたいだが、今じゃ何処を見上げても車が飛んでいる。ちなみに僕は免許がないから乗ったことがない。両親は高校生の時に事故で亡くなったが姉と二人暮らしでなんとかやっていけてる。ただそんな姉もそろそろ弟離れしてほしいんだけどな……「カナター!ちょっと来てー!」ご近所さんに聞こえるほどの大声で2階の自室から僕を呼んでいるのは社会人2年目でアパレルショップで働いている城ヶ崎 紫音《シオン》。「姉さ

    Huling Na-update : 2025-01-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   世界を騙した男①

    バスに揺られること15分。隣には黒髪でショート、整った顔で誰もが見惚れる姉、紫音がいる。「緊張するなー自分が壇上に立つわけじゃないけどテレビとかも来るんでしょ?カナタは緊張してる?」落ち着きがない様子で僕の顔を覗き込んでくる。実際緊張してない訳がない。著名な科学者や研究者も来るし、テレビも来る。もちろん取材とかもされるだろうし生中継もされるって話も聞いてる。「もちろん緊張してるよ。流石に全世界に向けて話すんだから緊張しない訳がないよ」天才だろうが、僕は一介の大学生。今までテレビなんて出たことないし、著名な人達とも顔を合わせたことがない。ここまで大げさになるなんて、著名人の言葉は重いんだなと実感する。今日の朝もテレビで、[異世界は存在する!?そもそも行くことが出来るのか!?][科学者の五木さんが理論上可能と大胆発言!]なんてテロップが流れて芸能人が騒いでたな。誰だよ五木さんって。「姉さんも覚悟しといた方がいいよ。僕の身内ってだけで取材されるだろうから」「ええー!?聞いてないよそんなの!」「考えたら思いつく事じゃないか、一介の学生が世界に向けて発言するのに姉さんには何にも聞いて来ない訳がない」記者も僕の素性やプライベートではどういった生活をしているのか、なんて所まで知ろうとしてくるだろうし、一番身近な姉に聞くのは当たり前だろう。「次は、国際大会議場前〜」目的地を読み上げる運転手。窓に顔を向けると白く大きな3階建ての建物が見えてきた。バスを降りるとどこを見てもテレビカメラや取材陣で溢れている。僕を見つけた1人の記者が駆け寄ってきた。「彼方さん御本人ですね?」顔はもう出回ってるから知ってるくせに、と思いつつも真面目な顔で答える。「はい、本人です」その一連のやり取りを見ていた他の記者やテレビカメラも寄ってくる。「すみません、時間が押してるので取材はまた後でお願いします」断りを入れて、人をかき分けつつ会場へと足を運ぶ。「私を置いてくなーカナター!」残念、姉は取材陣に囲まれてしまったようだ。僕の代わりに適当に答えてくれ、申し訳ない。と、心にも思っていないが軽く両手でゴメンの合図を送って先に会場入りをした。――――――五木隆は若くして先進科学分野で実績を残した著名人である。反重力装置の開発に成功し、宇宙探査に大きく

    Huling Na-update : 2025-01-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   世界を騙した男②

    「何処にいるんだろうカナタは」ひとり呟くのは姉の紫音。取材陣にもみくちゃにされて、やっと抜け出したと思ったら弟がどこに行ったかわからず会場内を彷徨っていた。周りは自分より年上の人達ばかり。何処にいても聞こえてくるのは弟の話。「まだ学生だろ、彼方って子は」「いや、学生だなんて馬鹿に出来ないぞ。あの五木隆が目を付けて今回の場を設けたくらいだからな」「大体異次元へのアクセスなんて人類にはまだ早いんじゃないのか?」彼方の発表内容に対して、賛否両論ありそうな声があちらこちらから聞こえてきて、つい言い返しそうになる。「みんな分かってないなーうちの弟は天才なんですからね!」プリプリしながらも周囲を見渡し弟を探すが一向に見つからない。そのうち適当な席にでも座るかと、空いてる場所を探していると眼鏡をかけた一人の女性が前から手を振って近づいてきた。「紫音ちゃん!やっと見つけたわ!」「あれ!?茜さん!」紫音に声を掛けてきたのは、斎藤茜。光が丘科学大学のOBで今は地球工学の研究者として働いている。弟に誘われ大学の文化祭に行ったときに初めて知り合い、気があったからなのかプライベートでも遊ぶほどの仲でもある。「そりゃあ来るでしょうよ、大学の後輩がこんな大きな舞台に出るんだから!」彼方ともそれなりに付き合いがあり、私達姉弟からしたら保護者みたいな立場の人だ。「でも彼方が何処に行ったか分からないんですよ……」「彼方君は多分舞台裏にいるわよ?今日の主役なんだから」「あ!そうか。そりゃ探しても見つからない訳だ」肩を竦めて苦笑いをする紫音。会場には所狭しと人が詰め掛けている。紫音と茜は空いてる席を探しつつ、会場内を彷徨いた。中にはテレビで見た事のあるアナウンサーなども視界に入り、それだけ注目を浴びているのだと再認識する。「あ!ほら!壇上に出てきたわよ!そこの席にでも座りましょ」そんなやり取りをしているとやっと壇上に彼方が現れたようだ。隣には五木って人が立っている。大きな拍手と共に壇上にスポットライトが当たる。「さあ、彼方君が唱えた異世界へのアクセス方法とやらを聞かせてもらいましょうか」品定めするような眼つきで茜は壇上に目線をやった。――――――眼前に広がる無数のカメラや人の目線。これから僕が全世界に向けて異次元への行き方を提唱するんだ。

    Huling Na-update : 2025-01-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   世界を騙した男③

    五木にスポットライトが当たると皆が静かになった。静まったことを確認し、マイクを握る。「皆様本日はお集まりいただきありがとうございます。ご存じでしょうがまずは自己紹介をさせて頂きます。半重力装置でお馴染みの科学者、五木隆です。私の右手にいるのは今回の主役、城ケ崎彼方さんです。ではご本人から一言挨拶を頂きましょう」そう言って五木さんは僕にマイクを渡してきた。覚悟を決めるんだ。世界を救わなければならない、でも決して知られるわけにはいかない。震える手でマイクを握りしめ、カラカラに乾いた喉から声を出す。「初めまして、ご紹介に預かりました城ケ崎彼方と申します。本日は異次元へのアクセスを理論上可能とした為皆様に分かりやすくご説明していこうと思います」その言葉だけで精一杯だ。手汗も凄いし声も震える。そのまま五木さんにマイクを返すと小声で、リラックスリラックスと微笑みながら声を掛けてくれた。「では今回どうやって異次元世界へと行くのか、そもそも本当に異次元へ渡る方法など存在するのか、質問は無限にあるでしょうがしばしの間静粛に聞いていただこうと思います」ここからは五木さん主体で、話は進んでいく。僕はプロジェクターに表示された内容の詳細を説明しそれに対して五木さんから質問される。それが約2時間にも及び、僕もだいぶ慣れてきたのか言葉が詰まらず出てきてスラスラと答えていく。余裕が出てきたのだろう、会場内に姉の姿を見つけた。手を振っているが振り返せる訳ないだろうこんな衆人環視の中で……隣にいるのは茜さんか。あの人もやっぱり来ていたのか。事前に取り決められていた流れももうじき終盤に差し掛かる。その時ふと右端に腕を組みこちらを睨んでいる黒髪長髪の男性が目に映った。あんな人見たことがないが、睨んでいるってことは僕の発表に対して何か思うところでもあるのだろう、そう思い目線を外す。「ではこれより質疑応答の時間に移りたいと思います。挙手して当てられたら発言お願いいたします」五木さんがこちらに目線を合わせてきたが、今からが大変だからだろう。僕も目線で大丈夫と返した。「そちらの、スーツにショートカットで眼鏡の女性。どうぞ」まさかいきなり茜さんが指されるとは思わず少し驚いていると僕に目を向け少し微笑んだ。いや違うなあれはニヤッとした顔だ、あの人は僕の困ることを

    Huling Na-update : 2025-01-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   世界を騙した男④

    発表会から3日後五木さんから連絡があった。スポンサーが複数ついたため満足できる実験ができるとの事だ。それと立証実験にはもう少し人員がいるとの事で身近に優秀な人がいれば声を掛けてくれと伝えられた為僕の思いつく優秀な人材、茜さんに連絡を取った。「3日ぶりね彼方君、それにしても急用って何?」「実は五木さんからこんな事を言われまして」メールで来ていた内容をそのまま伝えると食い気味に返答してきた。「参加する!!!当たり前でしょ!科学者の権威とも言われている五木さんの研究所で働けるなんてお金出してでも参加したいっていうに決まってるじゃない」五木さんって思っているより凄い人なんだな……優しい人当たりのいいお兄さんって感じだから凄みが感じられなかったが。とにかくこれで1人人員確保できた。半年後に卒業とはいえ、他に今からでもしておくことはないだろうか。茜さんと別れた後そんな事を考えながら駅に向かって歩いていると、一人の男性が近づいてきた。あの人は発表の場で睨んでた人じゃないか?まさか僕が一人になるのを狙ってたのか?僕はできるだけ平静を保ちながら男性からの言葉を待った。「君が彼方だな、あれは君が全て考えた内容なのか?」「……いきなりですね、あなたは発表会の時にいましたよね。素性の分からない方にお答えする義理はありませんよ」男性は少し、申し訳なさそうにしながらも答えた。「すまない、私は一ノ瀬 漣《レン》と名乗っている」名乗っている?変な言い回しをする人だな……「こういうものだ」名刺を渡してきたが、どうやらどこかの研究所に所属している人みたいだな。「なるほど、さっきの返答ですが内容は僕が全て考え出した理論になります」そう言うと漣は苦虫を嚙み潰したような顔で答えた。「あまりよろしく無い事をしてくれたものだ。これ以上は危険すぎる身を引くんだ」「理解ができませんね。何がどのように危険なのか具体的に教えてもらえますか?」「異世界と繋がるのは危険なんだ。こちらの世界の技術では魔物に太刀打ちできないぞ」まるで実際に見たことがあるような口ぶりだな。この人は一体何者なんだ?話せば話すほど謎が深まってくる。「あなたはなぜ異世界を見てきたかのような話し方を?」そう言うと漣はハッとした顔で僕の顔を見つめた。「君が知るにはまだ早い、だが後悔すること

    Huling Na-update : 2025-01-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   世界を騙した男⑤

    「ではこれで今日の講義は終わります」そう教授が告げると同時にまばらに席を立ちだす人や、そのまま談笑している人達がいる。「で?今日はどうするよ。家遊びに行っていいか?」「ああ、別に構わないよ」「よっしゃ!久しぶりにカナタの飯が食えるな!」お前もか。そんなに楽しみにされると腕によりをかけて作ってしまうじゃないか。「紫音さんも今日は家にいるのか?」「いや、姉さんは今日仕事で帰りが遅いってさ」多分これは二人でゲーム三昧できるかどうかの確認だな。姉さんがいると混ぜろってうるさいから。入ってきてもいいんだけど姉さんはびっくりするほどゲームが弱い。接待プレイになってしまう為純粋にゲームが楽しめないのだ。「よし!二人でゲームしようぜ!」「そんな事だろうと思ったよ」やっぱり春斗の考えていた事はゲームだったみたいだ。「まあ、ついでにカナタに聞きたいこともあったしさ」不意に真面目な顔でそう呟いた春斗は少し寂しそうな表情をしていた。「お邪魔しまーす!」元気な声を張り上げる春斗。家には誰もいないが真面目な性格なのだろう。「ただいま」僕も春斗に習って無人の家に挨拶をする。「で、いきなりだが腹が減ったな!!楽しみにしてるぜカナタの料理!」本能に忠実な奴め。仕方ない、ここは腕によりをかけて料理を振る舞ってやろうじゃないか。「じゃあリビングで寛いでてくれ。和食好きだろ?」「めっちゃ和食好き!俺も手伝うぜ!」いや手伝う気持ちは嬉しいが、やめてもらおう。料理は僕の趣味の一つなんだ。邪魔になる。「いやいいよ、テレビでも見て暇をつぶしておいてくれ」そう言いつつ僕は台所に向かう。とりあえずメニューは肉じゃが、鶏肉の照り焼き、魚の煮付けってとこかな。早速料理に取り掛かるが、ふとリビングの方に意識を向けると春斗が誰かと電話しているようだ。「いや……まだ……い、聞いて……る」所々しか聞こえないが、何やら真面目な会話らしい。春斗にしては珍しく声のトーンが低いから恐らくバイト先とかと連絡でもしているのだろうと僕は気にしないことにした。「お、出来た出来た」つい独り言を呟きつつリビングに料理を持っていく。「うわー!めっちゃ美味しそうな匂いに見た目!もう食べなくても美味いって分かるな!!」そりゃそうだ、なにせ僕が本気で作ったのだから。「「い

    Huling Na-update : 2025-01-22
  • もしもあの日に戻れたのなら   隠れていた存在①

    「それでさ、異世界なんちゃらってやつなんだけど」おもむろに春斗が口を開く。「異世界へのアクセス方法のことか?」「そう、それなんだけどさ実際行けそうなのか?」なぜこんなことを聞くのだろう、と考えたが春斗の事だ。異世界に行きたい!とかそんな気持ちで聞いてきたのだろうと思い僕は答える。「行けるよ。理論上だけど僕の理論は完璧に出来ているし五木さんのお墨付きだぞ」「そうか。ならさ、もし異世界と繋がったとして向こうから何か得体の知れない者がやって来るとかないのか?」確かにそうだ。もし異世界に繋がったとしても向こうが平和的に接してくるとは限らない。だがもちろんそれも織り込み済みで考えている。「いや、実際は繋がってみないと分からないけど、念の為に実験時には軍の人に待機してもらうつもりだよ」そうは言ったが、先日一ノ瀬漣という男から言われた言葉が頭をよぎる。――後悔することになるぞ。それが気がかりだが、軍で対応できないのならばそもそも侵略されて地球が滅ぶ前に人類は滅ぼされる事になる。「軍か。勝てるのか?もし化け物が出てきたらどうするよ?」「勝てる勝てないじゃない、やるしかないんだ」僕の強気な発言に春斗も戸惑いを見せる。「やるしかないって……まあお前が怪我したりはやめてくれよ?俺が泣くぞ」春斗……ほんとに良いやつだな。僕の為に泣いてくれるのか。「ありがとう、でも大丈夫だよ。念には念を入れて繋がったとしてもすぐに閉じることができるような機構を組み込むつもりなんだ」そんな会話のやり取りをしていると、春斗の携帯が鳴る。「おっと、すまん!ちょっと電話してくるわ!」「ここで電話してもいいけど」言い終わる前にリビングを出ていく春斗。いつもならその場で悪い!って言いながらも電話に出るんだけどな。また途切れ途切れで聞こえてくる。「ああ……るみたいだ、どう……打ち明け……」打ち上げ?バイトの飲み会でもあるのか?「いや……対応……しっかり……でも……危険……る」なにやら不穏な会話のようだな、盗み聞きはここまでにしておこう。台所に食器を持っていき洗っていると突然背後から声を掛けられた。「ごめんな、ちょっと真面目な話いいか?」春斗の表情は固い、なにやら大事な話のようだ。食器を洗うのもそこそこにリビングで春斗と向き合う。「実はな、俺は異世界

    Huling Na-update : 2025-01-22

Pinakabagong kabanata

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ⑦

    扉をくぐった先はまた別の光景が広がっていた。周りは宝石のように光り輝く巨大な水晶が散乱している。ペトロさんの部屋とは大違いだ。「ここは私達使徒の求めるものが表現されているんだ。私の場合は果てしなく広がる平穏を望む。だから草原が広がっていただろう?ここの使徒は違うのさ」「水晶……輝かしい生を歩みたい、とかそんなところでしょうか?」「おお、察しがいいね。君、頭いいって言われないかい?」どうやら当てずっぽうが正解だったようだ。輝かしい生を歩みたい、か。言ってはみたけど実際よく分かっていない言葉だ。何をもって輝かしい生といえるのか。「その使徒様はどこにいるんですか?」「私が来たことは気づいているはずだからもうすぐ来るよ」ペトロさんがそう言ったタイミングで目の前の水晶が激しく砕け散った。「ふぅ~お待たせ!」現れたのはペトロさんと同じく白い服を着た女性だった。煌びやかな恰好をしてるのかと思いきや、まさか同じ白い服だとは思わなかった。「来たねアンデレ。ちょっと今日は紹介したい人がいてね」「何かしらペトロ。貴方が紹介したいだなんて珍しい事もあったものね~」ペトロさんは僕の方を見た。挨拶しろって事かな。「初めまして城ケ崎彼方です」「城ケ崎?えらく変わった名前ね~。で?ペトロが紹介したって事は普通の人間ではないのでしょう?」「はい。僕は別世界から来た人間でして――」もう何度目かも分からな自己紹介をするとアンデレさんの目が輝きだした。ペトロさんと同じく僕は興味深い対象であったらしい。話し終えるとアンデレさんは期待に満ちた表情に変わっていた。まるで初めて見た生物を観察するかのように。「へぇ~面白いね~!ペトロ、なかなか面白い子を連れてきたね!」「そうだろう?別世界となれば我々の手が届かない場所だ。だからこそ面白い」「うんうん!それでこの子がどうしたの?」ペトロさん

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ⑥

    アレンさんが有無を言わせず吹き飛ばされたのを見ていた僕は固まってしまった。他のみんなは視線が下を向いているお陰で今の状況をあまり理解できていないようだが、それで正解だ。意味の分からない力で吹き飛ばされたのを見ていれば、口を開くのが恐ろしくて堪らない。「さあ気を取り直して。カナタ君、世界樹を目指す理由は何かな?」「元の世界を、取り戻す為です」「取り戻す?それは比喩というわけでもなさそうだね。元の世界の話を聞かせてもらえるかな?」まさかとは思うけど僕以外はみんな片膝を突いたままなのだが、その態勢で放置するのだろうか?この状態で話を進めれば少なくとも数十分は身動きできないぞ。「あの、ここで話すんでしょうか?」僕がそう恐る恐る聞くとペトロさんはハッとしたような表情になり、申し訳なさそうな顔で謝罪してきた。「おっと、すまないね。気が利かなくて。ガブリエル、彼らを部屋の外へ」「ハッ」神族のリーダーであるガブリエルさんは吹き飛ばされてどこに行ったか分からないアレンさん以外を部屋の外へと連れて行った。アレンさんはもうどこまで吹っ飛んでいったのか見当もつかないな。「よし、これでいいかな。さあ、これでも飲んで話を聞かせてくれるかな?」僕はペトロさんと同席する事を許されテーブルに着くといつの間にか用意されていた紅茶を一口頂く。少しだけ気持ち落ち着いたな。「僕のいた世界は――」そこから一時間ほどかけて今までのあった事を丁寧に話した。ペトロはニコニコしたり悲しそうな顔をしたりと表情が豊かだった。「なるほどなるほど……それで世界樹に願いを叶えて貰って元の平和な時を取り戻したいという事だね」「はい。……時間を戻すなんて願いは難しいのでしょうか?」「いや、そうではないさ。この世界に干渉する願いでなければ恐らく誰も文句は言わないと思うよ。ただ……世界樹へのアクセスは過半数の使徒の許可がいる。まあ私は許可し

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ⑤

    巨大な扉が数秒かけて開かれる。使徒様とはどんな見た目をしているんだろうか。部屋の中はどんな風になっているんだろうか。出会った瞬間バトルにならないだろうか。色んな不安が押し寄せてくる。緊張しながら一歩部屋の中に入ると、そこは部屋ではなかった。いや、正確には部屋の中だ。ただのどかな草原が広がっていて、その真ん中にポツンと椅子とテーブルが置かれてある。そこで優雅にティーカップで何かを飲んでいる白い服の男性がいた。「ペトロ様、少々変わった人間を連れて参りました」神族のリーダーが膝をつき、頭を垂れる。それと同じくして他の神族も膝をつくのかと思って周りに視線を向けてみるとそこには誰もいなかった。神族のリーダー以外部屋の中に入っていなかったようだ。これは僕らも膝をつくのが正解かと思い、しゃがむとアレンさん達も同じように膝をついた。流石にここは空気を読んでくれたらしい。ペトロと呼ばれた使徒が立ち上がるとゆっくりとこちらを向くのが気配で分かった。下を向いていても使徒から放たれ圧は凄まじいものだった。何もしていないのに流れ落ちる汗が物語っている。「君の事かな?」誰に話しかけているのか分からないが、多分僕に話しかけている。というのも声が僕の頭上から降りかかってきているからだ。ここは頭を上げていいタイミングなのか?どういう動きをすればいいのか、何が無礼に当たるのか分からず僕が黙っていると、再び頭上から声がかかる。「えーっと、君は……カナタというのかな?」何も言っていないのに名前を当てられた。使徒ってのは心でも読むのだろうか。いや、とにかく返事をした方がいいのかもしれない。「は、はい」顔を上げて言葉を返すと、頭上で見下ろしている使徒と目が合った。ニコッと微笑むと、手を差し出してきた。これは手を取れという合図だろうか。

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ④

    一応神族達は飛行速度を落としてくれているらしく、僕らは何とか着いていけていた。僕ら全員を浮かせて操作しているクロウリーさんの実力は底が見えない。膨大な魔力と緻密な魔力操作の技術がいるそうだが、クロウリーさんは涼し気な表情だ。「ふうむ、こうして神域を自由に飛べるとはのぉ。前回はヒィヒィ言いながら飛び回ったのに」それはアンタが悪い。強引な入り方をして怒らない神族なんていないだろう。それにしても神族は優雅に飛んでいる。天使が本当にいたらこんな優雅に飛ぶんだろうかと思えるような飛行だ。「……遅いな」リーダーが後ろを振り返ってボソッと呟く。遅いのは当たり前だ。翼を持つ者持たぬ者で大きな差があるんだから。「おお、見えてきたね」しばらく飛んでいると視界に白い建物の密集地帯が見えてきた。神族って白いイメージが強いけど、やっぱりイメージ通りらしい。ちょこちょこと塔のような高い建物もある。街並みが見えてくると白い翼を持った神族が沢山目についた。「おお~これは壮観だね。神族がこれだけいるのを見られるのもかなりレアだよ」「これが神域なのね……」ソフィアさんは滅多に見られない光景に感動しているのかまじまじと見つめている。僕はここが天国なのかと思えてきた。想像上の天国って白い建物が沢山あって天使が至る所にいるイメージだ。それとまったく同じ光景を目にすれば、今の僕は死んでいるのかと錯覚してしまいそうになる。「あの塔だ」「あれが君達の親分がいるところかい?」「……親分ではない。使徒様だ」親分はないだろう流石に。どこの山賊だよ。アレンさんも所々抜けてるからな。たまに意味の分からない単語が飛び出てくるんだよな。神族に連れられて来たのは白い巨塔だった。灯台のような形をしているが大きさ

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ③

    世界樹は神族にとっても重要な意味を持つ。世界が生まれた時からあるといわれている大樹だ。神族にとっても人間にとっても祈りを捧げる存在。そんな世界樹の元に連れて行ってくれというアレンさんのお願いに神族はみんな表情が凍りつく。「貴様……アレン、といったな。世界樹に何を求める」「ボク、ではないけどね。そこの彼さ」そう言いながらアレンさんは僕へと目配せしてきた。ここからは僕の出番だ。「城ヶ崎彼方と申します。僕が求めるのは元の世界の平和です」「平和を求める……か。綺麗事は誰だって言える。そうか、貴様が別世界の人間か」必然的に僕が別の世界から来たことを言う必要があった。神族のリーダーは僕を上から下へとじっくり見ると口を開く。「別世界から来た理由はなんだ」「ええっとそれは……」僕はアレンさんを見た。頷いたのを見て僕は今までの話をし始めた。話を聞き終わると神族は何とも言えない表情を浮かべていた。同情してくれてるのだろうか。「そうか……何とも言葉にし難いが……それで元の世界の平和を望むと」「はい。あの日に……あの平和だった日に戻れるのなら僕はどんな代償だって払います」「ふむ……それは私で決めるものではない。これ以上の話は一度席を設けた方がよかろう。全員着いてこい」神族のリーダーは武器を仕舞い翼を広げた。え、まさか飛んでいくのか?僕らが人間だというのを忘れているんじゃないだろうな。「何をしている。浮遊魔法くらいつかえるだろう」「浮遊魔法はそんなに簡単じゃないんだけどなぁ。まあいいか。クロウリー頼むよ」「そうだと思うたわい。フェザーフライ」クロウリーさんが腕を一振りすると僕らの身体は突如重さを失い宙へと浮いた。不思議な感覚

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ②

    別世界というワードが気になったのか神族達は顔を見合わせポソポソと何やら言葉を交わしている。まずは第一段階クリアだ。ここで興味すら持って貰えなければ交渉は意味を成さなかっただろう。「別世界……だと?」「そう、別世界。この世界とは別の世界から来た人間がいるんだけど、話を聞いてみたくないかい?」僕らに襲い掛かってきた神族達のリーダーと思わしき男性が槍の矛先を下ろし訝しげにアレンさんを見る。口からでまかせを言っているだけではないか、そんな風に思っているであろう表情でジッと見つめている。「全員武器を下ろせ」「よろしいのですか?奴らはこの神域に無断で立ち入った不届き者。ここで成敗しておいた方がよいのでは?」「構わん。私がいいと言っているのだ。さっさと武器を下ろせ」リーダーの発言力はかなり強いらしく、他の神族も渋々ながら従っていた。リーダーが地面に降り立つと白い翼は器用に折り畳まれた。本当にイメージ通りの天使の姿だ。「貴様……私を謀っているのではないだろうな?」「そんな事はしないさ。神族にそんな事をするなんて罰当たりにも程があるしね」「そういう割にはいきなり魔法をぶっ放してきたが?」「まあまあまあ。それで、別世界の話なんだけど……」アレンさん露骨に話を逸らしたな。神族は敬われる種族らしいがアレンさんからすればただ別の種族ってだけの認識のようだ。「それよりもまずお前達は何者だ」「おっと、自己紹介が遅れていたね。ボクはアレン、そっちの爺さんがクロウリーさ」「聞いたことがある。人間の中では特筆して秀でた力を持つ者だと」「そうそうそう。話が早いねぇ。それから仲間のフェリス、アカリ、カナタだ」「そっちは知らん」まあ当然である。僕らの事まで知っていたら情報通にも程があるし。「ワタクシはエリュシオン帝国第一皇女ソフィア・エリュシオンと申します。お見知り

  • もしもあの日に戻れたのなら   神域へ①

    天使さんを置いて神域へと入った僕らが最初に目にしたのは、遠くからでも分かる巨大な樹だった。きのこ雲のように傘が広がり、大きさはちょっとした街くらいはあるのではないだろうか。「あれが世界樹じゃ。あの麓まで行かねばならん」「ここからでも見えるくらい大きいですが、距離は相当ありそうですね」馬車もない、全て徒歩で移動となれば一か月はゆうに掛かるのではないだろうかと思える距離だ。大きいから近く見えるが恐らく相当な距離があるだろう。「思っている以上に大きいのね」「凄い……まさか死ぬまでに世界樹を見られるなんて」フェリスさんは驚きより感動が勝っているようだ。というよりこんな悠長にしていて大丈夫なのだろうか。他の神族が襲い掛かってきたりとかしないのかな。「そろそろじゃな……アレン」「まあそうだろうねぇ。フェリスは右、アカリは左ね。ソフィアはカナタの傍から絶対離れちゃだめだよ」急にアレンさんが真面目な顔で指示を出し始めた。やっぱり来るのか神族。僕もライフルを構えているがあんな天使さんみたいに猛スピードで突進してきたら当たらないだろうな。「来たわね」ソフィアさんが眺める方向を見ると数人の神族が槍片手にこちらへと飛んできていた。明らかにこちらの数より優っている。本当に大丈夫なのか心配になる数だった。「まずは平和に行こう。あー神族のみなさん、ボク達は――」「侵入者に死を!!」無理だわこれ。滅茶苦茶神族が切れてらっしゃるようだ。アレンさんの言葉なんて被せられていたし。「仕方あるまい、アレンやってしまえ」「うーん、ボクだけ悪者になってしまうけど……まあいいか。ブラストファイア」業火に包まれた神族はみんなバリアを張っているようで、白い球体で守られていた。つまり大したダメージにはなっていない。「手加減しす

  • もしもあの日に戻れたのなら   長い旅路⑨

    「さて、ついたぞい」クロウリーさんに促され全員が馬車を降りると何の変哲もないただの山道だった。ここに神域の結界があると言われても信じられない。「ここかい?」「うむ。アレン、そこから先には進むでないぞ」アレンさんも把握できていないようで、クロウリーさんに忠告され足を止めていた。「さて、やるぞ!全員準備はよいか?」アレンさんも臨戦態勢を取り、フェリスさんもアカリも各々武器を手に構えた。ソフィアさんも剣を抜くと僕も守るように前に立つ。僕も念の為ライフルを構えておいた。「さて、ではやるぞ。開け異界の扉よ!アザ―ワールド!」クロウリーさんが両手を広げると紫色の魔力の渦が集まり始め空間に亀裂が入った。何もない空間に亀裂が入るのは目を疑いたくなる光景だ。亀裂は徐々に広がっていき、やがて人一人入れる程度の隙間ができた。「ここからは強引にいくぞ!」クロウリーさんは開いた亀裂に両手を突っ込み一気に外側へと広げていく。二人が並んで入れるくらいの大きさまで広がると、神域と思われる光景が視界に飛び込んできた。カラフルな蝶が飛び交い、のどかな草原が広がる美しい光景だった。白い樹が各所で生えていて、見た事もない光景に僕らはアッと驚く。「凄い……これが神域なのね」フェリスさんも構えた剣を下ろすと目の前の光景に意識を奪われていた。「なんて美しいのかしら」ソフィアさんも視界いっぱいに広がる見た事もない光景に言葉を失っていた。かくいう僕も美しい景色に目を奪われていたが、クロウリーさんの一声で意識を取り戻した。「来るぞ!全員構えよ!」草原の遥か向こうから猛スピードでこちらへと迫りくる白い翼の人間。あれが神族なのだと気づくのにそう時間はかからなかった。手には背丈を超える程の長い槍を持っている。殺意が凄そうだ。「頼んだぞアレン!」「任せておいてよ、クリエイトゴーレム!」

  • もしもあの日に戻れたのなら   長い旅路⑧

    長旅も九日が経つと流石に慣れてきた。今更ながら思ったが、女性連中の風呂はどうしているのだろう。アレンさんやクロウリーさん、そして僕らは男だからまあ我慢すればいい。といっても毎日寝る前に濡れた布で身体くらいは拭いているが、女性はそれだけで満足はできないはずだ。「アカリ、風呂ってどうしてんの?」「?お風呂なんてどこにもないけど」「いや、それは分かってるけど。もしかして僕らと同じで濡れた布で身体を拭くだけ?」「そうだけど」驚いた。こっちの世界の女性は案外その辺り気にしないらしい。清潔感という面だけ見ればやはり日本の圧勝のようだ。「身体を拭いただけでさっぱりできる?」「うん」冒険者だからだろうか。しかしソフィアさんはそういうわけにはいかないだろう。そこで僕は彼女に聞いてみる事にした。「ソフィアさん、この旅の間はお風呂に入れていないと思いますけど大丈夫ですか?」「何の事かしら?それは当然でしょう。ああ、もしかして気にしないのかという事?」「そうです。皇女様なのにその辺り大丈夫なのかなと思いまして」「気にしないわね。どうせ外にいれば汚れるのだからいちいちお風呂で身体を清めても意味がないわ」まあそれはそうかもしれないが皇女様であろうお方がそれでいいのかと思ってしまう。姫様って綺麗好きなイメージがあったのに。「流石に臭いには気を付けているわよ、ほら」ソフィアさんが手を広げバタバタすると、ふんわりと花の香りが漂ってきた。香水かな、なんとも心が洗われる匂いだ。「香水は乙女の嗜みね。これがあるから多少身体が汚れていてもきにならないのよ。貴方の世界では違ったのかしら?」「そうですね……人によると思いますが、一日に二度お風呂に入らないと気が済まない女性もいましたよ」僕の姉である。綺麗好きがいきすぎて毎日朝と夜にお風呂に入っていた。僕がその話をするとソフィアさんは顔を顰める。

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