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忍び寄る悪意⑩

Penulis: プリン伯爵
last update Terakhir Diperbarui: 2025-02-01 18:00:05

「全力で防御して」

は?待て待て、こっちはまだ習いたての魔法しかないんだぞ。

全力で防御しても紙切れのような脆さしかない結界になんの意味があるのか。

それでも一応アカリの言葉に従い、自身の周りに半径30センチ程度の防御結界を作った。

「魔族が来る」

刹那、突風が吹き荒れ辺りは嵐の中に入ったかのような暴風雨に包まれる。

防御を推奨したのはこのためか。

とにかくずぶ濡れになることだけは避けられたようだ。

「チッ、もう追手が来たのかよ」

聞くに堪えない酒ヤケしたかのようなガラガラ声。

これは魔族の声か。

「神速絶技、抜刀」

アカリの呟きが耳に入ったときには、周囲に晴れ間が広がっていた。

「私の動きが速すぎて歩くだけでこんな程度の風、散らせる」

アカリから説明が入ったが、今はそれどころではない。

雨が上がり突風が止んだせいで、直線20m程離れた所に異形が立っているのが見えてしまった。

魔族とはこういうものだ、と言わんばかりの見た目。

赤黒い身体に岩肌のような手足。

顔をトカゲと人間を混ぜたかのような、目を伏せたくなる醜さだ。

「やるじゃねぇかネーチャン」

異形から発せられた言葉はアカリに向けられているようで、僕のことは眼中にない素振りだ。

「ああ、自己紹介してやるよ」

そう言って構えを解いた異形が名乗る。

「オレの名前はグリード。破壊の王とはオレのことだ」

レイさんから教えてもらった四天王の名前、確かグリードって奴も居た気がする。

てことは、アカリには荷が重いんじゃないか?

「安心してカナタ。私は既に四天王の一体を討伐している」

僕にはアカリの戦闘能力すら化け物に感じた。

あの異形と僕と同じくらいの身長の女の子が同等?

なんて馬鹿げた世界なんだ、異世界ってやつは。

それより問わないといけない事がある。

「紫音姉さんはどこだ!」

あまり声を荒げる事がない僕だが、今日くらいはいいだろう。

早く姉さんの無事を確認しないと、いつまで経っても気が
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    「さて、ついたぞい」クロウリーさんに促され全員が馬車を降りると何の変哲もないただの山道だった。ここに神域の結界があると言われても信じられない。「ここかい?」「うむ。アレン、そこから先には進むでないぞ」アレンさんも把握できていないようで、クロウリーさんに忠告され足を止めていた。「さて、やるぞ!全員準備はよいか?」アレンさんも臨戦態勢を取り、フェリスさんもアカリも各々武器を手に構えた。ソフィアさんも剣を抜くと僕も守るように前に立つ。僕も念の為ライフルを構えておいた。「さて、ではやるぞ。開け異界の扉よ!アザ―ワールド!」クロウリーさんが両手を広げると紫色の魔力の渦が集まり始め空間に亀裂が入った。何もない空間に亀裂が入るのは目を疑いたくなる光景だ。亀裂は徐々に広がっていき、やがて人一人入れる程度の隙間ができた。「ここからは強引にいくぞ!」クロウリーさんは開いた亀裂に両手を突っ込み一気に外側へと広げていく。二人が並んで入れるくらいの大きさまで広がると、神域と思われる光景が視界に飛び込んできた。カラフルな蝶が飛び交い、のどかな草原が広がる美しい光景だった。白い樹が各所で生えていて、見た事もない光景に僕らはアッと驚く。「凄い……これが神域なのね」フェリスさんも構えた剣を下ろすと目の前の光景に意識を奪われていた。「なんて美しいのかしら」ソフィアさんも視界いっぱいに広がる見た事もない光景に言葉を失っていた。かくいう僕も美しい景色に目を奪われていたが、クロウリーさんの一声で意識を取り戻した。「来るぞ!全員構えよ!」草原の遥か向こうから猛スピードでこちらへと迫りくる白い翼の人間。あれが神族なのだと気づくのにそう時間はかからなかった。手には背丈を超える程の長い槍を持っている。殺意が凄そうだ。「頼んだぞアレン!」「任せておいてよ、クリエイトゴーレム!」

  • もしもあの日に戻れたのなら   長い旅路⑧

    長旅も九日が経つと流石に慣れてきた。今更ながら思ったが、女性連中の風呂はどうしているのだろう。アレンさんやクロウリーさん、そして僕らは男だからまあ我慢すればいい。といっても毎日寝る前に濡れた布で身体くらいは拭いているが、女性はそれだけで満足はできないはずだ。「アカリ、風呂ってどうしてんの?」「?お風呂なんてどこにもないけど」「いや、それは分かってるけど。もしかして僕らと同じで濡れた布で身体を拭くだけ?」「そうだけど」驚いた。こっちの世界の女性は案外その辺り気にしないらしい。清潔感という面だけ見ればやはり日本の圧勝のようだ。「身体を拭いただけでさっぱりできる?」「うん」冒険者だからだろうか。しかしソフィアさんはそういうわけにはいかないだろう。そこで僕は彼女に聞いてみる事にした。「ソフィアさん、この旅の間はお風呂に入れていないと思いますけど大丈夫ですか?」「何の事かしら?それは当然でしょう。ああ、もしかして気にしないのかという事?」「そうです。皇女様なのにその辺り大丈夫なのかなと思いまして」「気にしないわね。どうせ外にいれば汚れるのだからいちいちお風呂で身体を清めても意味がないわ」まあそれはそうかもしれないが皇女様であろうお方がそれでいいのかと思ってしまう。姫様って綺麗好きなイメージがあったのに。「流石に臭いには気を付けているわよ、ほら」ソフィアさんが手を広げバタバタすると、ふんわりと花の香りが漂ってきた。香水かな、なんとも心が洗われる匂いだ。「香水は乙女の嗜みね。これがあるから多少身体が汚れていてもきにならないのよ。貴方の世界では違ったのかしら?」「そうですね……人によると思いますが、一日に二度お風呂に入らないと気が済まない女性もいましたよ」僕の姉である。綺麗好きがいきすぎて毎日朝と夜にお風呂に入っていた。僕がその話をするとソフィアさんは顔を顰める。

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