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第2話

私はビデオの最後に、さらに詳しい調査や、水酸化ナトリウムとプラスチックがどのように偽の鶏卵黄になるのかの報告があると思った。しかし、結局、美咲がカメラに向かって激しく訴えるだけだった。

「悪徳業者が年寄りを装って耳が遠いふりをする、その腹黒い餅がどれだけの人に危害を与えたのか?

食品の安全は私たち一人一人に関わる大事な問題だ。美咲は皆に、問題を見つけたらすぐに通報することを呼びかける。お前の一つの電話が、多くの無実の市民を救うかもしれない!」

私はビデオを何度も見直したが、これは実証的な証拠がない、ただ口先だけで嘘をつく「ニュース」に過ぎないと気づいた。

しかし、彼女のコメント欄では、誰もこの点に触れていなかった。

「外で餡入りのものを買うなんて、絶対に怖くてできないよ。何が入ってるかわからないもの!」

「死んだふりする婆さんは本当に演技上手だね。報われて子孫がいなくなることを恐れてないのか?」

「その場所知ってるよ、西市鉱山路の市場だ。あの婆さんはいつもそこで餅を売ってる。去年、可哀想だと思って一袋買ったこともある!」

「通報電話したけど、彼女の餅は問題ないって?問題ないなら誰かが暴露するわけないだろ?」

「誰もしつけないなら、私たちがしつけるよ!チーム組もう……」

「私も参加する!」

「私も!」

「……」

冷たい文字が、正義の士たちの祭りとなっていた。

私はその「正義の士たち」の行動を見た。十数人が一斉に駆け寄り、ばあちゃんの小さな露店を取り囲んだ。

体格の良い男の人が、ステンレス製のボウルをひっくり返し、餅と水が地面に飛び散った。

その後ろから来た人たちが、まるでゲームのように踏みつぶしていった。

彼らは笑いながら、罵倒しながら、ばあちゃんの鼻先を指さして言った。

「年寄りのくせに、今日は殴らないでおこう。これから商売をするなら良心を持ちなさい!」

「また餅を売ったら、見つけるたびに叩き潰すぞ!」

誰もばあちゃんの泣き叫ぶ声には耳を貸さず、誰も踏みつぶされた餅の中に一つの鶏卵黄もないことに気づかなかった。

彼らはただ天の代わりに正義を成そうとしていただけで、ばあちゃんが本当に罪人かどうかなど気にかけていなかった。

「ドンドンドン」

軽いノックの音が私の思考を中断した。私は我に返り、顔の涙を拭ってドアに向かった。

「高橋竹香、私だよ、山本先生だ。家にいるか?」

玄関の外から担任の先生の声が聞こえた。

私は急いでドアを開け、自分が休むことを許可していなかったことを思い出して謝った。

「山本先生、ごめん、授業を抜けてきたつもりはない……」

ばあちゃんの露店がトラブルになったことを知ったのは、昼休みに隣の席の友達がそのビデオを見つけて教えてくれたからだ。

一瞬で教室を飛び出し、休むことの許可を求めることを完全に忘れていた。

山本先生は私を抱きしめ、背中を優しく撫でながら言った。

「大丈夫、大丈夫、先生は理解してるから」

彼女の抱擁はとても温かく、ばあちゃんのようだった。

私は我慢できずに涙が溢れた。

「山本先生……ばあちゃんは偽の鶏卵黄入りの餅を作っていないんだ……あの人は嘘をついてるんだ!」

他人の非難を気にしないことはできるが、身近な人の意見を気にしないことはできない。

「先生は知ってるよ。うちの家はばあちゃんの餅を十数年食べてるけど、ばあちゃんは一度も鶏卵黄入りの餅を売ったことはないんだ」

山本先生は私の涙を拭きながら言った。「先生は他の教師たちにも話したよ。お前のばあちゃんの餅を食べた先生たちは、みんなお前の味方になって証言してくれる。安心しな、先生たちがいるから」

「今は何も考えないように。来月には共通テストがあるんだから、これを機に気持ちを乱さないようにね」

山本先生は心配そうな表情で私を見つめ、このことで最終的な追い込みに影響が出ることを恐れていた。

私は涙を拭い、歯を食いしばって言った。

「先生、勉強には支障をさせない……でも、この不実の言葉を放置することはできない!」

山本先生は言った。

「主任はすでに他の教師たちに、その記者のビデオのコメント欄で真相を説明するように指示してる。学校にはたくさんの教師がいるから、声を大きくして必ず真相を伝えることができるはずだよ!」

しかし、次の瞬間、山本先生の携帯電話が鳴った。教務処の佐藤主任からの電話だった。

「何?全部削除されてブロックされたって?」

言葉を言うのは簡単だ。一歳の子供でもママと呼べる。

しかし、言葉を言うのは難しい。他人が簡単に手を動かすだけで、お前の声を枯渇させるほど大声で叫んでも、それが消されてしまうことがある。

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