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伊桜らな
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Novels by 伊桜らな

国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。

国宝級イケメンの華道家は、最愛妻への情愛が抑えられない。

 日本舞踊家の家に生まれ、自身も師範を持つ百合乃は日本舞踊家として指導をしたりして充実した毎日を送っていた。ある日、父からお見合い話をされ顔合わせすることになる。顔合わせ当日、やってきたのは亡くなった姉と婚約者だったイケメン華道家・月森流家元の月森郁斗だった。  
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Chapter: 10.偶然の再会
ドラマ監修の仕事を受けると決めてから一週間。今日は、テレビ局のドラマ制作部の方々と打ち合わせだ。 「郁斗さん、ごめんね。送ってもらっちゃって」 「俺も仕事が同じ方面だし、ついでだよ。可愛い奥さんを送るためなら車くらい何回でも出すよ……百合ちゃんはいいんだよ。なんで、蒼央はちゃっかり寛いでるかな。もっと乗せてもらうんだからなんかあるでしょ」 「いいじゃん。俺らの仲でしょ、義弟(おとうと)よ」 郁斗さんが近くにある出版社で取材があるらしく、一緒に行こうってなった。本当は私一人でもいいんだけど、兄がテレビ局行きたい〜と言ったためなぜか同行している。 それなのにこんな態度取って……もう。 「はぁ、本当に変わらないな。仕方ない、シートベルトはしっかりすること!」 「はーい」 兄は普段は立派に次期家元としてやっているけど、郁斗さんといる時は昔から子どもみたいだ……外面はいいからなぁ 「打ち合わせは何時までなの?」 「十時半から一時間前後って言われたよ」 「それじゃあ、お昼一緒に食べよう。近くにオムライスが美味しいお店があるんだ」 「わかりました。終わったら連絡しますね」 そんな会話をしているうちにテレビ局に到着して郁斗さんと別れた。 正面玄関から入って受付で約束があると伝えると、入館許可証を渡される。 「あちらのエレベーターから上がっていただき、八階で降りてください。降りてすぐ【コンテンツ制作局】という看板がありますのでそこの窓口にお声をおかけください」 「ありがとうございます」 兄と一緒にエレベーターに乗って八階のボタンを押した。するとすぐに到着して【コンテンツ制作局】という看板を見つけその横に窓口があった。 「このインターホン押せばいいのかな」 「そうだと思うが、誰もいないし」 コソコソ話をしてインターホンを押せば声が聞こえてきて名前を言う。すると、綺麗な女性が出てきた。 「お待ちしておりました、ではこちらへどうぞ」 女性に案内されるがままついていき、奥にある会議室と書かれた部屋に到着する。 「担当の者をお呼びしますのでお待ちください。では失礼します」 会議室は広くて二人だととても広い。オフィスって感じだ。 「なんか緊張するな、こんな畏まった場所初めてだ」 「そうね。私も、緊張する……」 絶対心
Last Updated: 2025-04-21
Chapter: 9.新しいお仕事
「んー? 本当にこれでいいのか……」 私は今、レシピノートと鍋に入っているじゃがいもとお肉を睨めっこをしている。 「これを煮込むと、本当にできるんだろうか……肉じゃが。蓋をしたほうがいいのかな?」 レシピ本を見てこれなら料理初心者でもできるのではないかと思った私は、今日は午前中のみの仕事だったのでスーパーで材料を買ってきていた。 野菜たちを学校の家庭科で習ったのを思い出しながら切っていき、糸蒟蒻も茹でてみる。 下準備は万端にして現在夕方。この『サッと炒める』ってどういう意味だろう?これ、じゃがいもに火が通っているのか、どうなっているのか全くわからない。 「……どうしたんだ?」 「ちょっとよくわからなくて――って、え!? ふ、郁斗さん! いつ、お帰りに……っ」「もう十分くらい前かな。一生懸命作っている様子だったし、声を掛けなかったんだけど困ってるようだったからさ」 「全く気づきませんでした。ごめんなさい、少しはお役に立ちたくて夕食を作ろうとしたんですけど全然で」 郁斗さんが帰ってきたことも気づかなかったなんて、ダメダメじゃないか。 「それは肉じゃが、かな。うん、ちょっと任せてもらってもいい?」 「え、はい。大丈夫です」 私はポジションを変わると、郁斗さんは慣れた手つきで鍋に入れていたじゃがいもとにんじんに玉ねぎを違うお皿に分けて一つ一つ取り出した。そして、順番に電子レンジに入れてスタートを押す。 「まだ、出汁とか入れてない?」 「はい。まだ調味料も入れてないです」 「わかった。まず、野菜このまま煮ると柔らかくなるまでに時間がかかるから電子レンジである程度熱通しておいたほうがいい。大体、二分か多くて三分」「そうなんですね……」「あとで煮込むから、じゃがいもは煮崩れしない程度で竹串が少し入る方がいい」 慣れた手つきで、電子レンジと同時進行でまだ加熱していなかった牛肉をさっきの鍋で炒めると違うお皿に移す。 そのまま、鍋にお酒とだし汁を入れて火が通った野菜たちを鍋に入れた。 「とても慣れてるんですね、料理……プロみたい」 「まぁ、一人暮らしも長かったからね。ツアー中は外食じゃなくて小さなキッチンがついた部屋で作ったりしていたから。何度か作れば出来るようになるし、料理は好きなんだ」 「そうなんで
Last Updated: 2025-04-18
Chapter: 8.決意と挨拶
新居から走ること三十分ほどの所に月森家の本家がある。 月森家のお屋敷は、何回か改築されているが築132年ほどで明治十年ごろに建てられた日本家屋だ。本邸と別邸が存在しており、お稽古したりする和室や初生け式などの行事を行う大広間があるのが本邸で、別邸が家元一族が暮らしている家だ。今から向かうのは、別邸である。 「さぁ、百合ちゃん。行こうか」 郁斗さんにエスコートされながら、私は結婚して初めて月森家の門を潜った。玄関を彼が開けると、見覚えのある家政婦さんが出迎えてくださった。 「おかえりなさいませ。郁斗様、百合乃様」 「ただいま帰りました」 確か、名前はアキさんだ。 「アキさん、ありがとうございます。これから末長くよろしくお願いします」 「名前覚えていてくださったんですね、光栄です。これからは、一家政婦としてよろしくお願いします。大奥様方は居間でお待ちしています」 玄関で履き物を脱ぐと、玄関を上がりリビングのような場所に案内される。 ずっとこのお屋敷には出入りしていたがこの居間には、初めて入るのでなんだか緊張する。 「緊張しなくても大丈夫だよ。百合ちゃんは元から両親とも祖母とも仲がいいんだから」 「そうなんですけど……違うというか」 アキさんに案内され、居間の襖を開けるとそこは和室と洋室がいい感じに合わさったお部屋だった。 「いらっしゃい、百合乃さん。結婚式ぶりだね」 「はい。サクラお祖母様、式ではありがとうございました」 入ってすぐ近くにサクラお祖母様がいたので挨拶をすると、奥からひょこっとお義母様とお義父様、義弟の(綾斗《あやと)さんがいた。 「いらっしゃい、百合乃さん。式にはいけなくてごめんね」 綾斗さんは月森家の次男だけれど、華道はしていない。小さい頃はお稽古もやっていたらしいが、自分は仕事にできそうにないとバッサリと大学生の頃にやめた彼は今は普通に会社員をしていると聞いている。 「いえ、お祝いの品もくださって嬉しかったです」 「良かった。たってないで座って。兄さんもこっちに座ってよ」 「ありがとう、百合ちゃんも座ろうか」 綾斗さんと郁斗さんに促されて皆が座る場所に一緒に座れば、アキさんがお茶と和菓子を出してくださった。 「ありがとうございます、アキさん」 「……いえ。ごゆっくり
Last Updated: 2025-04-17
Chapter: 7.挨拶
朝、温かい朝の空気を感じ目が覚める。ふと時計を見ると、もう九時だった。いつもより一時間以上遅い朝だ。 「あ、百合ちゃん。おはよう、起こしちゃった?」 「いえ、そんなことはないです。起きるの遅くてすみません」 郁斗さんは、もう服を着ていて朝から完璧に出来上がっていた。だから私も準備をしなくてはと思い、起き上がろうとすると少し身体がだるさを感じる。 「百合ちゃん、体は大丈夫?」 「は、はい……少しだるいですけど、大丈夫です」 彼と目線を合わせるのが恥ずかしくて目を逸らす。昨夜のことを思い出してしまいそうで、顔が熱くなる。 「モーニングはルームサービスを頼んでいるんだけど、いつがいいかな?」 「私はいつでも大丈夫です。あ、でも着替えはしたいです」 「じゃあ、十時くらいがいいかな。俺は朝食を頼むから、百合ちゃんは着替えておいで」 私は頷いて彼がここから離れるのを見送り、ベッドの近くに置いてある下着の回収をするために足を床に付けて立ちあがろうとした時、ふらっとバランスを崩しそうになる。すると爽やかなフローラルで甘い上品な香りに包まれる。これは……ネロリの香りかな。 「……っと、大丈夫?」 「ありがとうございますっ、ご迷惑を」 体力はある方だと思っていたのに、こんな腰が抜けちゃうみたいになるなんて。世の夫婦ってすごい。 「昨日は少し浮かれてやりすぎてしまったと反省してるんだ……着替えはカバンにあるんじゃないかと思ってもってきたよ」 「えっ、ありがとうございます。すみません」 私はお礼を言い、カバンを受け取ると鞄の中の上の方に入れていたワンピースを取り出した。 下着を付けてワンピースを着た。パッと着られるワンピースにしておいてよかったと心の底から思いながら着替えをした。 「百合ちゃん、ルームサービスは頼んだからそれまでゆっくりしよう」 そう言って郁斗さんがテレビの電源をつけると、そこに映っていたのはまさかの私たちだ。 昨日の会見と共に私たちの紹介がされている。 こんなに詳しくやらなくても……と思うが、有名な郁斗さんが結婚だもの特集するよね。相手が私で世間が私に対してがっかりしてないといいんだけど。 「どこもかしこも俺たちだね、今日は日曜日だから特集組まれる覚悟はしていたけど」 そう、今日は
Last Updated: 2025-04-16
Chapter: 6. 郁斗side
すやすやと寝息を立てて眠っている彼女はいつもの綺麗で凛々しい表情ではなく、可愛らしい寝顔をしている。思わず髪に触れて撫でてみると、くすぐったかったのか体を歪ませた。その姿が小動物のようで可愛らしい。 ――やっとだ。やっと、彼女が俺の手の中に出来た。 彼女と出会ったのは、俺が高校生で彼女は中学生の頃。 場所は、月森(うち)の家元が使うことが許される稽古室だった。俺は、いつもの日課のように当時の家元である祖母と稽古をしていた。 「郁斗、今日はね千曲家のお嬢様方が来るわよ」 「……千曲家? お祖母様のお友達の?」 「そうよ。妃菜ちゃんと百合ちゃんって言ってね、ずっと頼(らい)の元で稽古していたのだけど私のとこでお稽古してもらうことになったのよ」 頼というのは、お祖母様が1番信頼している師範だ。なのに頼から祖母に来るなんてよっぽど優秀なんだろう。それに、その二人のどちらかと婚約するんだろうと軽く思っていた。 「初めまして。千曲妃菜乃です」 「……はじめまして、千曲百合乃です。よろしくお願いします」 二人はとても似ており、とても瓜二つ。まるで双子のような顔をしていたが、性格は正反対だった。 妃菜乃ちゃんは、俺と同い年で明るく年相応の女の子。昔からかっこいいと持て囃されていたこの顔を見てうっとりとしてその辺の女のような反応を見せた。だが、百合乃ちゃんは大人しくお淑やかな箱入り娘という感じでとても可愛らしかった。 この日はあまり話せずに終わってしまったのだが、その後も稽古で一緒になることがあったが話は出来ずにいた。そんなある時、祖母に誘われて千曲流日本舞踊発表会へと見にいくことになった。 日本舞踊をみるのは初めてだったけど、あの姉妹が出るのだと聞いてとてもワクワクしていた。 二人は家元の娘ということで演目の最後の方だった。  最初に出てきたのは姉の妃菜乃ちゃんの方だ。歌とかはよく分からないのだが、彼女はとても完璧だった。周りの観客もさすがだとか家元の娘だものねだとか言っていて完璧の踊りなのだと理解する。 妃菜乃ちゃんが踊り終われば、舞台は真っ暗になりアナウンスがかかり唄が聞こえだす。そして、一気に舞台が明るくなった。 そこには、美しい天女がいた。 確か妃菜乃と同じ演目だったはずなのに全く違う。全ての動きが洗礼されていて、覚
Last Updated: 2025-04-16
Chapter: 5.初めての夜
 エレベーターで上に上がり、宿泊する部屋に到着する。さっきは気付かなかったけど、よく見たらとても豪華な部屋だった……というか、フロア貸切ってお金どれだけ使ってるんだろう。「百合ちゃん、座っていてお茶淹れるから」「え、それなら私がします」 この部屋は小さなキッチンがあってお湯が普通に沸かせる。「いいから、座ってて。あ、コーヒーとあるみたい。煎茶と紅茶とコーヒー何がいい?」「そうですね、郁斗さんは何飲みますか?」「俺は今日はコーヒーにしようかなって。少し暑いしアイスを作ろうかなって」「じゃあ、私もコーヒーがいいです」 郁斗さんは「了解」と言ってお湯を沸かし始めた。チラッとそちらを見ればインスタントだと思ったが、ドリッパーにフィルターをセットしていた。「郁斗さん、本格的ですね」「うん。コーヒーがあるの知ってて、ホテル側にドリッパーを準備してもらっていたんだよ」「え、そうなんですか?」 話をしているとお湯が沸いていて、それを止めると彼はドリップポットにお湯を注いだ。「いつもコーヒーはこうやって淹れてるんですか?」「いや、仕事が休みの時だけかな。あとは朝に余裕があれば」「そうなんですね」 コーヒーのドリップが終わり、マグカップにコーヒーが注がれる。それをソファのあるテーブルへと運んでくれた。「……ありがとうございます、いただきます」 「どうぞ、召し上がれ」 湯気が立つマグカップに口をつけ一口飲む。コーヒーの香りと共にフルーティーで爽やかな味が口いっぱいに広がる。「……美味しい、郁斗さん、美味しいです」「良かった。誰かに淹れるのは初めてだったから喜んでもらえてよかったよ」「こんなに美味しいのに……なんだか特別って感じがして嬉しいです」「俺の奥さんなんだから特別だよ」 郁斗さんはそう言いながらコーヒーを飲んでそろそろディナーの予約時間が迫っているからと私に告げる。 私もコーヒーを飲み終わると、ディナーに行くために彼が用意していたレースのバックリボンが可愛いらしい背中開きのワンピースに着替えをした。 準備が終わった郁斗さんと一緒に部屋を出ると、エスコートをされながら最上階の都内が見渡せる夜景の綺麗なレストランへ向かった。ウェイターさんに案内されて個室に入った。  個室は二人の空間になっており、ラグジュアリーな雰囲気もあり緊張し
Last Updated: 2025-04-16
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