永い愛の嘆き
「小林さん、こちらが献体のご同意書です。ご逝去後、ご遺体を当校に寄贈され、医学教育の『献体』としてご提供いただくということで、よろしいでしょうか?」
小林深雪(こばやし みゆき)は頷き、ためらうことなく書類に署名をした。
「はい。あと一ヶ月もすれば、私は死にます。その前に連絡しますので、遺体の処理をよろしくお願いします」
そう言い残すと、彼女は同意書を手に医学部を後にした。後ろでは、白衣を着た医師たちが目を赤く染め、深々と頭を下げている。
森崎家に戻ると、玄関を開けた途端、中から甘く絡み合う声が聞こえてきた。
「森崎さん……ここ、奥様との新婚のお家でしょう?私を連れてくるなんて、離婚させる気ですか?」
森崎宏(もりさき ひろ)はくつろいだ様子で笑った。「離婚?とんでもない。知らないのか?彼女は俺にとって理想の女性だ。死んでもいいほど愛している」
女はくすりと笑い、首に腕を絡める力を強めた。