危機で夫が私の指を切った
深直博仁
結婚3周年記念日、旦那が私をハネムーンに連れて行ってくれた。
ところが途中で土砂崩れが起きて、バスが横転して、私と旦那の理想の彼女が同時に下敷きになった。両手が座席に挟まれて動けなくなった。
誰か一人を助けるには、手を切り落とすしかなかった。
旦那は私の手を切ることに決めた。「お前には何でもある。だけど里紗は違う。彼女は身寄りもないし、夢はデザインコンペの大賞を取ることなんだ。手を失ったら、どうやって絵を描くんだ?」
私は泣きながらお願いした。「やめて……」
私も優秀なデザイナーで、デザインコンペの大賞を取ったばかり。手を失ったら、死ぬほうがましだ。
「里紗は初恋だけど、彼女は友達でもある。友達の絆は深い、俺は彼女を守らなくては!」
旦那はナイフを持って、低い声で囁いた。「大丈夫、ちょっと我慢してればすぐ終わる。手を一つ失うだけ、そんな大したことじゃない。これからは俺が養うから」
私の必死の懇願を無視して、彼は無理やり私の指を斬り落とした。
痛みで気を失ったけど、彼は一度も私を見なかった。理想の彼女を抱えて去っていった。
彼は知らない、私のバッグには妊娠検査の結果が入っていることを。
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