放課後の旧校舎、僕はゆっくりと読書をしようと考えていた。 ななせが風邪をひいてしまって、軽音楽部の部活動はしばらく休みだと聞いていた。それに、上田の姿も見当たらない。鞄から読みかけの文庫を取り出して読書を開始する。昨晩読んでいて遭遇した密室について、僕なりの予想は立てている。さあ、答え合わせの時間だ。 ――と、思っていたのだが、文芸部の部室の前の古い板張りの廊下をギイギイと音を立てて歩いていく一行がある。軽音楽部のメンバーだ。 教室の窓をそっと開け、ベースの河本と目が合った。「あれ、部活、休みじゃなかったの?」「ああ、今日伏見さん休みでしょ。それで」「それで?」 意味がよくわからなかった僕に、ギターの天野が説明をしてくれる。「本当はみんな、ちゃんと練習はしたかったんだ。だけど、昨日は伏見が喉を傷めていたみたいだから、みんなで休むことにしたんだ。彼女、もし俺たちが練習していたなら、きっと無理してでも自分も参加しようとするだろ?」「ああ、なるほど」「まあ、そういうわけで、迷惑かける」 ――自分たちの練習が迷惑をかけているとわかっているのなら……いや、こんなことを言うのはやめておこうか。彼らだって、悪気があってやっているわけではない。 本を閉じて湯沸かしポットにスイッチを入れる。男四人が古い階段を上がり、真上の教室の中を歩き回る音がはっきりと聞こえる。 やがて、演奏が始まり、騒音の中でそんな足音さえも聞きとおせるような静寂はなくなり、僕は放課後の読書をあきらめた。 スマホをいじりながら、上田から連絡が来ないだろうかと考えている自分に気づく。最近すっかり放課後に読書ができなくなり、そんな持て余した時間をなんだかんだ言いながら上田が埋めてくれていたことに気づく。 上田は、今どこにいるのだろうか…… そんなことを考えている最中、ゴトンと大きな音が上のほうから聞こえた。おそらく真上の軽音楽部の部室よりもさらに上のほう。しかし、二階から階段を上って存在するのはこの旧校舎の止まってしまったままの時計台の機械室だけだ。そしてその機械室には常に鍵がかかっており、その鍵を管理しているのは僕。いつも財布と一緒に持ち歩いている。 その音を不審に思ったのは僕だけじゃないようだった。軽音楽部は演奏をやめ、何やら話し合っているようだった。 少しして、誰かがギイギイと音を立てて二階から階段を下り
Terakhir Diperbarui : 2025-04-09 Baca selengkapnya