私は和真を見つめた。そして、その瞬間、はっきりと感じた。かつて彼に抱いていた、かすかな恋心や執着が。音を立てるように、急速に冷めていくのを。それなのに、不思議と胸は痛まなかった。何かを惜しむ気持ちすら湧いてこなかった。「桃歌、聞いてる?」和真は眉をひそめた。だが、視線はずっと私から離れなかった。「だから?」「部屋に戻って、着替えてこい」和真はそっと私の腕を握り、人気の少ない隅へと引き寄せると、声を落として言った。「桃歌、君は理子より二つ年上だろ。譲ってやれよ」私は彼の手を振り払い、笑った。「もし嫌だって言ったら?」和真は一瞬驚いた様子だったが、すぐに鼻で笑った。「君にそんなことを言う資格があるのか?」「それでも、嫌なの」「嫌なら、別れるだけだ」和真の端正な顔には、徐々に怒りと軽蔑が滲んできた。まるで、私が怖気づいて別れを拒むとでも思っているようだった。「ならそうしよう」私は彼の手を振り払い、淡々と言った。「望みどおりにするわ」和真は突然、冷たい笑みを浮かべた。その笑みには、嘲りが混じっていた。「いい気になってるんじゃねえよ。消えろ」私は何も言わず、そのままドアを開け、大股で部屋を出ていった。
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