All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 81 - Chapter 90

162 Chapters

3. 「異世界ほのぼの日記」㊾

-㊾独身女達の女子会- ハネムーンに出かけた新郎新婦を見送り、街の住民達は普段の生活へと戻っていった。 光はパン屋で有休を取得していたのでその日から週休含め3日間休みとなっていた。披露宴についてはエラノダの計らいで全住民出勤扱いとなり、1日分の給料が王宮から支払われる様になっていた。 ドーラに誘われカフェテラスでスイーツを食べながらお茶を楽しむ事になっていたのでギルド前に待ち合わせの為向かった。 カフェはギルドから数分歩いた所にあった為、2人はすぐに女子会を始めた。スイーツとハーブティーを注文し、ウェイターを待つ。 温かいお茶が提供されるまでの間は一先ず、冷水で喉を潤した。注文したケーキ「こだわり果実のカスタードタルト」が提供されウェイターの手によって切り分けられ、小皿に盛られた。サクサクと焼かれたタルト生地にカスタードクリームを敷き詰めその上に小さく切られた果実が散りばめられている。果実には1つ1つに蜂蜜が塗られ甘く味付けられている。 1口食べると果実の酸味とカスタードクリームや蜂蜜の甘みが織りなすハーモニーが口の中を満足で埋め尽くす。 そこに丁度運ばれてきた温かなハーブティーを流し込むと優雅な休日を楽しんでいるという実感が湧いて来た。 美味しいひと時を過ごしている時、ドーラが突然切り出した。ドーラ「ねぇ、どう思う?」光「えっ?あ、ごめん、聞いてなかった。何の話だっけ。」ドーラ「だからね、あたしらも結婚出来るのかな・・・って。」光「その前に相手がいなくちゃ。」 的を得ている答えを言ったつもりだった、結婚は1人で出来る事ではないし。互いを理解し合えた2人がする事だ。 ただ結婚したいと思うから出逢うのか、出逢ったが故に結婚したいと思う様になるのか、こりゃある意味哲学だなとこの世界に来てから初めて思った。 ただ光も他人の事を言えない身、これ以上ドーラに意見するのはどうかと自問自答してしまっていた。ドーラ「あんたはどうなの?相手というか良い人でもいる訳?」光「いると思う?この世界に来てからずっとただただ吞んだくれてただけだよ。」ドーラ「沢山の男と酒を交わして仲良くしている癖に、チャンスがあったんじゃないの?」 ドーラは一滴も酒を呑んでいないのに酔っぱらって絡み酒をしている様に見える。光「いないって言ってんじゃ・・・。」 そんな時
last updateLast Updated : 2025-02-19
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3. 「異世界ほのぼの日記」㊿

-㊿女子会後の約束-光「さっきはごめんなさい、呼び捨てにしちゃって。」ナル「いえ、だいじょうぶです。それより・・・、あの・・・、お口に合いましたでしょうか。」光「はい・・・、美味しっかたです。ナルさんは器用ですね、以前から料理が出来る事は知っていましたがデザートまで・・・。」 光は顔を赤らめながら語った、ナルの横を偶々通ったウェイトレスが軽く肩を叩いた。ウェイトレス「良かったじゃない、気に入って貰えて。これ、貴方のオリジナルでしょ?」 感動でナルが号泣している、こんなナルを見るのは初めてだ。 このタルトは光の為にナルがオリジナルで考案したスイーツで、普段はメニューに載っておらず、前日2人が来ることを知ったナルがオーナーに頭を下げ頼み込み、無理やり日替わりのメニューを変更して貰っていた。ナル(前日)「私は明日を境にクビになっても構いません。ただ吉村様・・・、いや光さんにお召し上がり頂きたいのです!」オーナー(前日)「こうなりゃナルは何言っても聞かないもんな・・・。明日の日替わりタルトは決まってるんだけどね・・・。まぁ、美味しいから良いか・・・。」 オーナーのその言葉に自信を持ち安心して翌日提供出来ると思っていたが、やはり味覚は十人十色なので光に気に入って貰えるか不安で厨房で1人震えていた。その日は全然眠れず、もしも口に合わなかったら・・・、不味いと言われたらどうしようと、光にどう顔向けすべきか分からないと枕を濡らしていた。そのお陰で瞼が少し腫れ、目の下には隈が出来ていた。 当日、誰よりも早くカフェの厨房に入り準備をして疲れ切っていたナルは、光の美味しかったという言葉でやっと笑みがこぼれた。ナル「そろそろ・・・、仕事に戻ります・・・。時給を貰って働いているバイトですから。」光「待って!」  厨房に向かおうと後ろを振り返ったナルを光は思わず呼び止めてしまった、どう声をかけるべきか思いついていないうちに。光「あ・・・、えっと・・・、また今度ナルさんのお料理が食べたいのですが。」ナル「ではまた連絡します・・・、今日は・・・、これで。」 ナルが奥の厨房に消えて行くと、光はテーブルに戻り着席した。ハーブティーが落ち着かせてくれる。タルトをもう一口食べ、光は思わず微笑んだ。 ナル「よっしゃ・・・。」 厨房の陰で小さくガッツポーズしたナルを
last updateLast Updated : 2025-02-19
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3. 「異世界ほのぼの日記」51

-51 女子会の夜- 2人はゲオルの店に寄り、缶ビールやワインと言ったアルコールに、そしてチーズにポテチなどの肴を買い込み光の家に向かった。後から自分達も参加したいとパン屋のミーシャとローレン、林田家のネスタから連絡を受けたので多めに買い込んだ。 皿に買い込んだ肴を並べ、冷蔵庫で酒と一緒に冷やしこみ、3人を待ちつつ風呂に入ってから先に2人だけで始める事にした。 汗を流した2人は缶ビールを同時に開け乾杯する、一気に口に流し込んだ。火照った体の五臓六腑にビールが染み渡る。 しばらくして色々と買い込んだ3人がやって来た、両手に沢山の買い物袋を抱えている。ネスタ「何だい、もう始めているのかい?連れないね。」ドーラ「何言ってんの、まだ始まったばかりだから問題ないって。」 ネスタ達が一緒にテーブルを囲み、改めて・・・。5人「乾杯!!」ミーシャ「パンを固めのカリカリに焼いて味付けしたら良い肴になっていいわね。」ローレン「このローストビーフ、ワインにぴったり。」5人「お酒が美味しい~。」 話題は光の恋愛についてとなった、先程のカフェにおけるナルとの様子を見て察したドーラが切り出した。 光はナルとの今までをゆっくりと語っていった。新聞の勧誘で偶々来た事や、無理言って料理を沢山作ってもらった事、家庭菜園を手伝って貰った事に昨日の事。余す事無く語る光の顔は少し赤くなっていたが生き生きとしていた。ローレン「過去の話はここまでとして・・・。」ミーシャ「ナルの事、どう思ってんのよ・・・。」光「だ、だから料理が上手くて、スイーツも上手くて、いざという時頼りになるし・・・。」ドーラ「もう、回りくどいわね。だから?一緒にいる時どうなのよ。」光「何かこう・・・、どきどきすると言うか、楽しくて離れるのが嫌になって、ずっと一緒にいれたら嬉しいと言うか・・・。」ネスタ「ナルが大好きで、愛しているんだろ?好きで好きで堪らないんじゃないのかい?」光「・・・はい、大好きです!出来る事なら今すぐにでも顔が見たい、手を繋ぎたい。横顔をずっと眺めていたい!ぎゅっと抱きしめたい!何もかもかなぐり捨ててでも良いから会いたい!」 涙を流し、大声で泣き叫んだ光をネスタがぎゅっっと抱きしめ、気持ちを確かめた。ネスタ「その気持ちに嘘は無いみたいだね・・・、そろそろ頃合いかね。」 ネス
last updateLast Updated : 2025-02-24
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3. 「異世界ほのぼの日記」52

-52 女子会の夜は更けて- ナルは語り続けた。ナル「あの日、新聞の配達係が風邪で欠員し、最後に勧誘を兼ねて訪れたのがここでしたね。玄関を開けて下さったのがその時まで見たことも無い様な綺麗な女性の光さんでした、それから大食いと聞いて無茶だと言える量の食事を作ってみましたがそれにも関わらず完食してしまった事には驚きました。私が作ったただの男料理を綺麗に食べてくれたので本当に嬉しかったです。それをきっかけに家庭菜園をお手伝いさせて頂いたり、一緒に料理したり遊んだり銭湯にいったりと本当に楽しくて幸せでした。会う度に私を幸せにして下さる貴女に一生かけて恩返しがしたい。 先程申し上げました通り、私はヴァンパイアです。貴女がこの国にやってくる数年前まで私は一族共々、吸血鬼が故に恐れられ忌み嫌われていました。元々暮らしていた村を追われ王国の山の隅に追いやられ、逃げる様に引っ越しを繰り返していました。誰も味方がおらず、食料を得る事も困難で生きる事で精一杯でした。 後に私の家族は全員、ヴァンパイアを忌み嫌う人の手により殺され1人逃げ出した私は天涯孤独の身となりました。 生きる為とは言え、人の血を吸っていたのは確かです。しかし、私自身好きで吸っていた訳ではありません。当時まだ子供だった頃から料理とトマトが大好きだった私を温かく家に招き入れ我が子の様に育てて下さった恩人であるリッチ、ゲオルさんのお陰で今はこの様に姿を変え人に混じり平然と暮らせていますが、正直まだ、家族を殺された事は悔しくてなりません。今でも家族を思い、一晩中1人悔し涙を流す日々です。 そんな中、改めて私に嬉し涙を流させて下さった貴女に心から伝えたい。くどくどと長くなりましたが吉村 光さん・・・、大好きです。私とお付き合いしてください!」 光は躊躇いながらも答えた。光「お気持ちにお答えする前に貴方にお伝えせねばならない事があります。私は元々この世界の人間ではありません、林田警部や車屋の珠洲田さんと同じく異世界から転生して来た者です。 最初は右も左も、言葉も全く分からないこの地でナルさんと同じくゲオルさんに助けて頂きネスタさんのご厚意で林田警部のお宅に数泊させて頂いた後、この世界に連れてきた神様に与えられた財産でこの家を買い、沢山の方々に支えて頂きながら生活を始めて行きました。 実は生まれる前に父親を
last updateLast Updated : 2025-02-24
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3. 「異世界ほのぼの日記」53

-53 翌朝を迎えて- 窓から差し込む柔らかな朝日と共に光は目が覚めた。昨夜は珍しく呑みすぎたのだろうか、少し頭痛がする。 正直自宅での女子会で呑み始め、玄関前でナルリスに告白され受け入れてキス・・・、キス?!光「嘘でしょ?!私ナルリスとキスしちゃったの?!・・・、ファーストキス奪われちゃった。」 それからの事を思い出そうとしていた、恥ずかしくなってヤケ酒して確か何度かリバースして・・・、そこから思い出せない。 周囲をチラリと見回すと自分とナルリスが脱ぎ散らかした・・・、ん?! いや、待て、落ち着こう。そんな訳がないじゃないか・・・。落ち着いて確認しよう。ほら、ベッドの上には衣服を何も着ていない自分とナルリスが寝転んで・・・、え?!光「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!」 とにかく急ぎ服を着て落ち着こう、それから深呼吸して確認。ベッドのシーツから濡れていてそこら辺から異臭がするし少し赤色っぽいけど大丈夫だろう・・・、ん?!光「確定じゃない・・・、酔った勢いって怖い・・・。ヴァンパイアと初キスに初夜・・・、何て滑稽なの・・・、ハハハ・・・。実はもっと血が出ててナルリスに吸い取られたって?はぁ~・・・。」 異世界にいるが故に出来る想像まで浮かび上がり始めた。そんな時、自室の出入口の扉越しにネスタとドーラがこちらを覗き込んでいる。ネスタ「どうぞ、続けて続けて。」ドーラ「いやぁ奥様、貴重な物が見えましたね、私この上なく感動してます。」光「覗いてたんですか?!心の準備も出来てないんだから見物してないで止めて下さいよ!!」ネスタ「良いもんだね、朝早くだけどこれを肴に呑めるさね。」ドーラ「私も呑んで良いですか?」光「本当に朝から缶ビール呑んでるし・・・、っていい加減にして下さいよ!!」 その時、林田警部と利通親子が立て看板を持ち勢いよく入って来た。林田親子「テッテレー!!ドッキリでした!!」ネスタ「ごめんねぇ。まさか昨日の夜、2人の初キスシーンまで見えると思わなかったからさ、悪戯したくなっちゃって。」ドーラ「魔法で睡眠状態を出来るだけ継続させている内にシーツ等をすりかえたりして事後をそれなりに再現してみました、テヘ。」光「え・・・?」ネスタ「ナルリスが仕掛け人をするのにノリ良い子で助かったよ。」
last updateLast Updated : 2025-02-24
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3. 「異世界ほのぼの日記」54

-54 国境を越えたビッグイベント- 今朝のリベンジを心に誓いながら光は自宅の家庭菜園でサラダに使うレタスやキュウリといったシャキシャキで瑞々しい野菜を収穫していた。 ドッキリのお詫びとしてネスタが朝ごはんを作ってくれるそうなので横に添えようと張り切って採っている時、ふといつも使っているゴマダレが切れている事を思い出した。 散歩がてらゲオルのお店に向かう、横には彼氏となったナルリス。光に歩幅を合わせて歩いてくれているので自然と笑みがこぼれた。その光景を陰から利通が眺めている。利通「羨ましいな・・・、恋人か・・・。」林田「心配しなくてもいずれは良い人が現れるさ、ただ俺みたいな失敗はするなよ。」ネスタ「誰が失敗だって?」林田「か・・・、母ちゃん、違うんだって。」 林田警部が奥さんから大き目の雷と拳骨を喰らわされている頃、付き合いたてのカップルは街の中に差し掛かろうとしていた。ただ、先程から違和感を感じる。 改めて道路が舗装しなおされ、平らにならされている。ゆっくり歩いていると数人のリッチが分担して道路を舗装し直していて、その中にゲオルもいた。ゲオル「ふう・・・、道幅も申し分ないはずなのでここはこんなもんで大丈夫ですかね。確か・・・、この辺りに地下のトンネルを掘るらしいのですが、そこは大工さん達の腕の見せ所ですかね。おや、光さんとナル君では無いですか、おはようございます。」光・ナルリス「おはようございます、ゲオルさん。」ゲオル「あら、お2人揃って昨日の今日で早速おデートですか?」光「あはははは・・・・まぁ、ね。」 リッチには何もかもお見通しらしい、今朝の事を話題にしないでくれたら助かるのだが。 ただ気になる事は、どうしてリッチが数人集まって道路の舗装を直していたのかという事だ。 何かを思い出し察したかの様にナルリスが声を掛けた。ナルリス「もしかして『アレ』の時期ですか?」ゲオル「そうなんですよ、この後別の人たちが街中に柵や観客席、あと関係者席などを設置する様になってるんです。」光「ナルリス、『アレ』って何?」ゲオル「おやおや、もうお互いを名前で呼ぶようになっているんですね。」光「それより何なんですか?」ゲオル「おっと失礼。毎年ネフェテルサ、ダンラルタ、そしてバルファイの3国を1つのコースとして繋いでのカーレースが行われるんです
last updateLast Updated : 2025-02-24
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3. 「異世界ほのぼの日記」55

-55 レース当日を迎え- レース当日を迎え、光達は南側の山にレース用に掘られているトンネルの前に特設された観客席で、ビール片手に選手たちがトンネルから出てくるのを今か今かと待っていた。 レースコースを挟み向かい側に魔術で作られたと思われる巨大なオーロラビジョンに映るレース模様を観客皆がドキドキしながら注目している。 ホームストレートに各国から常連として毎回出場しているチームが各国3チーム、新規の参加チームが3チーム、そして各国の王宮で選ばれた選手達が集まる選抜チームが3チームで、毎年通り合計21チームが出場する事になった。 前日に行われた予選の結果、今年からバルファイ王国代表で新たに出場する事になったブルーボアが1位のポールポジションを獲得し優勝候補として名乗りを上げている。 規定通り皆と同じ珠洲田のカフェラッテを使用していたがエンジンの開発に余念の無い研究を重ね加速と最高速度に特化した物が完成し、メンバー全員が意気揚々としている。 予選ではバルファイ王国の王都に設置された18kmものホームストレートを1番速く走り抜けたチームからポジションを取っていくルールなので全力で車を走らせた結果だった。 色とりどりのカフェラッテにゼッケンのプレートが貼り付けられ各々のポジションに付き準備万端で15分後のスタートを待っていた。 涼し気な気温、そして眩しい程の晴天によりドライとなった路面により絶好のレース日和となっている。 各国の各所に観客席が特設され、満員御礼となっていた。レースのスタートが近づく度に観客たちの熱気が高まって行く中、光は1人、ナルリスとゲオルの席を取り待っていた。光「2人とも遅いな・・・、どこ行っちゃったんだろ・・・、トイレかな?」 光に席の確保を頼んでから40分程戻って来ないので心配になって来た、一応確保した席は連絡したはずなのだがちゃんと伝わっているのだろうか。 心配する光の前をビールの売り子が横切ったので、熱気による暑さも手伝い欲しくなってしまい思わず手を挙げた。光「お姉さん、ビール!!大サイズで!!」売り子「400円でーす、毎度ー。」 渡されたビールを一気に煽り息を吐く、まるで1人公園で缶チューハイを呑むおっさんの様だ。ただ、周りにも同じ様にビールを呑む女性達が数人いたのですぐに意気投合していた。乾杯を交わし塩味のポテチ
last updateLast Updated : 2025-02-24
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3. 「異世界ほのぼの日記」56

-56 レース開始直前だが- 光は出走表の場所をナルリスに聞き車券を購入しに向かっていた、まるで国民の祝日の様に老若男女が右往左往していて大混雑している。 先程1杯呑んだビールの影響か光はトイレに行きたくなったので車券売り場への道中で探すことにした。 トイレは意外過ぎるほど早く見つかり全く混雑していなかったので光はすぐに駆け込み用を済ませた。 トイレを出て車券売り場を目指す、ぷらぷらと歩いているとふんわりと優しい香りがして来たので近くを通った時少し寄ってみるかと意気込んだ。 何軒か日本に似た食べ物屋の屋台が出ている様でその内の1軒を覗いてみる事にした。光「『龍(たつ)の鱗(うろこ)』ね・・・、こんな名前の店あったかな。」 ただ一際行列が目立っており、その上光を誘った香りがその屋台からだったので光は一切迷う事無く飛び込んだ。 店の中では皆が一心不乱に丼に入った麺を啜っている。店主「いらっしゃいませ、お一人様ですか?お好きなお席へどうぞ。」 どうやらここはラーメン屋さんの屋台のようだ。他のお客さんが食べているラーメンはスープが綺麗に透き通った金色のもので、細麺。トッピングはカイワレ大根と何かを揚げているチップスらしい。(※作者が大好きなラーメンの1つです、店名は変えてますが。) カウンターにお品書きがあったのでチラリと見てみると「鯛塩ラーメン」の文字がある。光「『魚介ベースのスープで鯛の皮のチップスをトッピングした美味しいラーメンです』・・・か。」店主「お決まりですか?」光「あっ、鯛塩ラーメンをお願いします。」店主「少々お待ちください。」 屋台の隅に探していた出走表をみつけた。光「出走表頂いてもいいですか?」店主「勿論どうぞ、ラーメンが出来るまでゆっくり予想していて下さいね。」光「助かります。」 光は店の隅に行き出走表を1枚取って席に戻った、①~㉑までの車番の横にチーム名やホームストレートで行われた予選の計測タイム、スタートポジション等が書かれていた。光「確かポールポジション取った⑰ブルーボアが1番人気で、18kmのホームストレートはダントツ、ただガソリンの積載量が比較的少ない気がするな・・・。」 ピットでの給油は認められているがピットストップの回数が多いとその分逆転を許してしまう可能性が大きくなる。光「コーナリングの図を
last updateLast Updated : 2025-03-04
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3. 「異世界ほのぼの日記」57

-57 誘われるがままに-店主「では、スープを残したまま少々お待ちください。」 屋台にて店主による誘惑の言葉に迷う事無く鯛塩飯を注文した光は、ゾクゾクしながら店主を待っていた。車券の事など頭の隅にもない様子だ。ただ大食いなのでここのラーメンだけで自分の腹が満たされるかどうかを心配し始めた。 大食いの人間特有の心配をする光をよそにニコニコしながら店主が茶碗1杯のご飯を手に近づいてきた。店主「お待たせ致しました、鯛塩飯です。残ったスープにぶっこんでお召し上がり下さい。」 光はご飯を1匙すくい、スープに入れて1口食べようとしたら店主が来て説明しなおした。店主「すみません、説明が足りませんでした。ご飯を全部入れっちゃって豪快に食べちゃって下さい、美味しいですよ。」光「全部ですか・・・?」店主「はい、お席が汚れても私は気にせず喜んでお掃除致しますので。」 光はご飯の入った茶碗をスープの入った丼の上でひっくり返し、ご飯をスープにどぽんと入れた。 ご飯の1粒1粒にスープが染み込みお茶漬けや雑炊の様にサラサラと食べれる状態に変身する。 そのご飯をカウンターやテーブルに蓮華代わりとして設置されたお玉でたっぷりとすくい1口・・・。光「嘘でしょ・・・、美味しい!!!」 サラサラと優しく口に流れ込むご飯がスープを引き連れて次々と胃に納まっていく、まるで飲み物の様に。(※食べ物ですのでちゃんと咀嚼しましょう。)光「ダメ・・・、無くなっちゃう。」 自分の意志に反して両手は食事を止めさせようとしない。気付いたときには既に丼の中身は無くなり、スープは1滴も残っていない。光「美味しかった・・・。」店主「フフフ・・・、ご満足頂けましたか?」光「はい・・・、お会計お願いします。」店主「それより、予想の方はお決まりになりましたか?確か⑮番車をお考えだったと思いますが・・・。」光「どうしてご存知なんで・・・。」 光が質問しようとしたら頭の中に声が直接流れ込んできた。声「光さん!!光さん!!どちらですか?!」光「へ?」店主「おや・・・、この声は・・・。」声「光さん、聞こえますか?ゲオルです!!念話の魔法で直接語り掛けています、返事をしてください!!どちらにいらっしゃいますか?!」 念話・・・?あ、そう言えばここ異世界だったわ・・・、と改めて感じた光。店主
last updateLast Updated : 2025-03-04
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3. 「異世界ほのぼの日記」58

-58 レース開始- とりあえず⑮番車に投票しようと決めた光は残りの2台、若しくは3台を歩きながら決める事にし、忘れないように出走表の⑮番車に「◎」印を付けた。 改めて出走表の全体を見回し、計測タイムが一際目立っていた⑰番車も考えていたがやはりネフェテルサ王国の市街地をコースとして使用するレースなのでバルファイ王国のストレートを過ぎてからの事を考慮し「×」印を付けて票は入れない事にした。 コーナリング重視でのチューニングである事を考え⑥番車は入れる、まぁ50週目になるまでだったら買い足しが可能だから大丈夫だろう、気楽に行こう。 とりあえず後1台か・・・、そう思いながら所々に設置されたモニターを見ていると他のチーム以上にピットスタッフとドライバーが入念に打ち合わせと練習を行い、連携が取れていそうなチームがあった。やはりピットがもたつくとコースに戻った時の順位に影響する。光「このチームは⑨番車ドッグファイトね・・・、これ入れてみようかな。このチーム初出場か・・・。来たら大きいかもね。じゃあ⑥⑨⑮のボックスにしよう。」 偶々空いていた券売機が目の前にあったので思ったよりすんなりとマークシートを記入して車券を購入できた。光「結構遠くまで来ちゃったから『瞬間移動』で良いかな。」 『作成』したばかりの『念話』でゲオルとナルリスの位置を確認する、どうやら光がすぐ戻ると言ってからずっと客席で待ってくれていた様だ。他の観客達を驚かせる訳にはいかないと思い近くのトイレの隅に『瞬間移動』した、そして客席に戻り近くの売り子からビールを3杯購入して待っていてくれていた2人に渡した。光「すみません・・・、あまりにもパルライさんのラーメンが美味しかったので。これで許して下さい。」ゲオル「いえいえ、それにしてもまさか私の弟子がラーメン屋をしているとは思いませんでしたよ、ずっと連絡をよこさなかったので何をしているのか心配していたんです。屋台だったんですって?」光「中は比較的広々とした屋台でしたよ、ただそこからの香りが凄くて。」ナルリス「俺も今度食べに行きたいな・・・、今度連れてってよ。」光「ごめん・・・、普段何処でお店をしているか聞いてなくて。」ゲオル「念話で今聞いてみては?」光「えっと・・・、こうでしたかね・・・。(念話)パルライさーん、聞こえますか?先程はありがと
last updateLast Updated : 2025-03-04
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