All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 61 - Chapter 70

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3. 「異世界ほのぼの日記」㉙

-㉙会合の結果- 東側の出入口が開放されて数日、街中の人口密度が一時的に上昇しているこの状況に光がやっと慣れてきた今日この頃、街の掲示板に一際目立つ貼り紙が掲示されていた。『-ネフェテルサ国王・獣人族・鳥獣人族主催 ネフェテルサロックフェス 今年も開催-』 お堅い仕事に就きながらロックが好きな上に全人類平等を日々主張しているこの国の国王が街中に住む獣人族と鳥獣人族と協力して毎年開催しているフェスだそうだ。光の知り合いではパン屋のウェインと、マック・キェルダの双子の兄妹が新聞屋のナルとバンドを組み参加を表明していた。 そんな中、未だ東側の出入口からは上級魔獣や上級鳥魔獣がカードを提示して街に入って来ていた。どうやら今回のロックフェスは彼らの為のイベントらしく、各々に属する者たち同士の交流を主な理由としているものだった。 光がパン屋での仕事を終えると東側の出入口の手前でウェイン、マック、そしてキェルダが誰かを待っている様だった。光「ねぇ、ナルと待ち合わせ?」キェルダ「ああ、光ちゃんか。実はもうすぐあたいら3人の叔父さんが来ることになってんだよ。」光「えっ・・・、3人?!マックとキェルダが双子の兄妹なのは知ってるけど。」ウェイン「俺、こいつらの兄貴なの。そんで俺ら全員鳥獣人族だから。」光「なるほどね・・・、でも鳥獣人族だったら東側の出入口でなくても入れるんじゃない?」マック「俺らの叔父さんはコッカトリス、上級の鳥魔獣なんだ。」 すると、一際煌びやかな翼を羽ばたかせ1匹のコッカトリスが出入口の守衛にカードを提示しスーツ姿の男性に化けて街に入って来た。男性が兄妹に近づいて声を掛けた。男性「皆久しぶりだな、迎えに来てくれたか。」3人「デカルト叔父さん、待ってたよ。」ウェイン「今日はこの後予定あるの?」デカルト「もうそろそろ迎えが来ていると思ったんだが、そう言えばそちらの方は?」光「吉村 光です、3人とは同じパン屋でお仕事頂いております。」デカルト「光さんか、よろしくね。」 すると、街中に真っ黒で長いリムジンが入って来てまさかの国王が隣のバルファイ王国の国王と降りてきてデカルトの元にやって来た。国王「先輩、こちらにいらっしゃいましたか。」デカルト「おう、エラノダ。やっと来たか、早速行こうか。」隣国王「とりあえず早く会合を終わらせましょ
last updateLast Updated : 2025-02-04
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3. 「異世界ほのぼの日記」㉚

-㉚ロックフェスに向けて-エラノダ「いや、先輩私の台詞ですから。」 エラノダの弱めのツッコミでニュースが終わった瞬間に光の電話が鳴った、林田警部だ。林田(電話)「光さん、報告がありまして。」光「急ですね、唐突にどうされたんですか?」林田(電話)「私と利通、そして先日の板前のえっと・・・。」光「ヤンチさんですか?」林田「そうです、ヤンチ君です。私たち3人でバンドを組むことになりまして、今度のロックフェスを見に来て頂けませんか?」光「いいですけど、どうしてそんな組み合わせに?」林田(電話)「元々親子2人で出ようと話していたんですが、ヤンチ君が参加させてほしいと要望してきましてね、板長さんも推薦してきたんですよ。」光「でも3人共楽器なんて出来るんですか?」林田(電話)「まぁ、何とかなるでしょう。」 電話を切り冷蔵庫を開けて牛乳を1口飲んで学生の時自分もバンドを組んでた事を思い出していた、ただあの時のバンドメンバーとはよくある方向性の違いが理由で解散してしまったのだ。 一方その頃、王宮ではエラノダが他の国王達に相談を持ち掛けていた。自分達も出てみないかと。他の2人もノリ気になって早速練習しようとしていたが、物置に楽器やアンプ等を自分達で取りに行こうとしていた時に場内にいる王国軍の小隊長や大隊長、ましてや将軍クラスの者たちに全力で止められてしまった。将軍「国王様方、ご自分でお持ちになるとお怪我をなされる危険がございます、私共がお部屋までお持ち致しますからこちらに置いて下さいませ。そこのー、大隊長、手伝ってくれ!」 金の鎧の大隊長、そして銀の鎧の小隊長が集まって3人のバンド道具を搬入していった。実はこの3人、昔からバンドを組んで毎年フェスに出場していた。ただ場の空気が変わってしまう事を恐れ正体を隠して出場している。将軍「国王様・・・、あの・・・、恐れ入りますが少々よろしいでしょうか?」エラノダ「どうされました?」将軍「毎年疑問に思っていたですがドラムとベースはどうされているのですか?」エラノダ「今年もこの3人だけでやろうと思っていますが。」 毎年国王達のバンドはギターボーカルのみでベースやドラムが居ないので正直言うと他のバンドに比べたら迫力が無い、そこで将軍がある提案をした。将軍「実は先日より我々でメンバーを組んだのですが、皆音痴ばか
last updateLast Updated : 2025-02-04
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3. 「異世界ほのぼの日記」㉛

-㉛ロックフェス当日- 街の南側、銭湯のある山の麓に特設の野外ステージや音響システムなどがゲオルを中心とした街で働く魔法使いの者たちのよって設置され、街が興奮の渦に巻き込まれて行く中、光はいつも通りパン屋の仕事を夕方までこなしていた。街中の人がロックフェスを楽しめる様にエラノダが『フェスの日、街中の店は必ず夕方6時までに閉店する事』という決まりを作っているので野外ステージ以外の照明は消え、全ての店で『準備中』札がかけられていた。ただそれでも気分を盛り上げようと屋台を出している商人がいたりした、これに関してはエラノダも盛り上げ要因として容認していたので皆喜んでいた。 フェスなので競い合いをするものではないのだがバンド達の気合が故の熱気がムンムンとしていて体感温度が気温を大幅に上回っていた。 このフェスには決まりがあり各組オリジナル1曲、そしてカバー1曲の合計2曲を演奏する事になっていた。それを聞いてか焼き肉店の板長には心配事があった。 先日メンバーを組んだばかりの林田親子とヤンチのバンド、組んで間もないのにオリジナルで作詞作曲と練習を行い無事成功できるかが心配だったそうで光に相談を持ち掛けてきた。板長「私は音楽は全くなのですが、俺はヤンチの親みたいなもんなので楽器の経験があるのは勿論知っているのです、ただ作詞作曲の才があるかどうかは無知でして・・・。それに組んで間もないので練習も間に合ってないのでは・・・。」光「ヤンチさんは今まで沢山の苦悩を乗り越えた方ですよ、今回だって何とかなりますよ。」 板長の心配をよそにロックフェスが始まり、最初はパン屋の鳥獣人兄妹とナルのバンドがステージに出てきた。観客たちの興奮が最高潮に高まって来た所で1曲目の演奏が始まる。皆手に汗を握り涙が出てくる、声援が止まらない。そんな中王様3人と将軍達が変装したバンドがステージに立った。その瞬間大隊長と小隊長、そして将兵達が護衛の為フェス会場を囲もうとしていた、これではせっかくの変装の意味が無くなってしまう。そこでゲオルが全員を普段着の姿に変え一般客と何ら変わらないようにした。ステージ裏にいたエラノダは勿論知らなかったが王国軍は色々苦労したようだ、ただ共にバンドを組む3人の将軍達には伝えられたらしい。将軍「皆・・・、気を遣わせてすまない。」 そんな事もつゆ知らず、エラノダは1曲目
last updateLast Updated : 2025-02-09
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3. 「異世界ほのぼの日記」㉜

-㉜楽しみの最中- 光が5人に加わり、楽しく呑んでいると裏通りの暗がりからコンコンと石畳を杖で突く音が微かにしていた。段々と近づいてくる、音の正体は白い正装を身に纏った髪の長いエルフの女性だった。両足がガクガクと震えている。女性「ハァ・・・、ハァ・・・、すみ・・・、ません・・・。1杯で・・・、構いませんので・・・、水を・・・。」光「とにかく座ってもらおう。」ラリー「この方は・・・、まさか・・・、少々お待ちを!」 ラリー女性の正装を見て驚きグラスに並々と注いだ水を女性に飲ませた。この世界で布教されている『神教』で数人しかいないと言われる『アーク・ビショップ』と呼ばれるうちの1人、メイスだった。メイスは隣のバルファイ王国からこの国の王宮の横にある教会を目指して1人歩いていたのだが食料が底を尽き空腹で死にかけていたのだ。 水を飲んだメイスは正しく水を得た魚の様に復活し、1息ついて感謝を述べた。メイス「ふぅ・・・、助かりました。ここまで歩いて来る折、ある程度の食料は持っていたのですが少しずつ食べていたのにも関わらず無くなってしまった上に財布を隣国の教会に忘れてきたらしく、命からがらこちらまで歩いて来た次第でして。とても良い匂いがして来たので近づいてしまったのです・・・、哀れな私をお許し下さい。」ラリー「アーク・ビショップ様・・・、ただの呑み会なので大した物はございませんがこちらでご一緒にいかがですか?」メイス「宜しいのですか、何とお優しい・・・。皆様に神のご加護があらん事を。」 メイスは祈りを捧げ感謝するように差し出された焼き鳥やピザを食べ始めた。 因みにだが『神教』には個人の自由を尊重するという考えがあり、また『タダより高い物は無い、貰える物は全て貰え』を基本としているらしい。それが故に・・・。メイス「お願いですからぁ~、アーク・ビショップなんて堅い呼び方せずに気軽にメイスって呼んで下さいよぉ~。」 基本に忠実に行動した結果、勧められるがままに差し出された酒を呑みつくし泥酔してしまった。因みに食事の制限も無いので肉食も酒も大丈夫なのだ。 メイスと光はすぐに意気投合して互いに日本酒をお酌しあう仲にまで至っていた、どう見ても聖職者には見えない。メイス「何ぃ?違う世界で熱中症で死んで知らない間にこの世界に転生してきたってぇ?そんな話聞いた事ないわ
last updateLast Updated : 2025-02-09
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3. 「異世界ほのぼの日記」㉝

-㉝聖職者からの感謝と教会- メイスがへべれけの聖職者達と合流してから1時間程経過し、綺麗な月と星が夜空を彩る夜。酒と肴、そして出会った仲間のお陰で光の気分は好調だった。 メイスはグラスを置き、聖職者達を集め端の方でコソコソと話し合いを始めた。結論が出たのだろうか話し合いを終わらせ各々の席へと戻る、その時光に1本の電話が入った。林田達から合流しないかという連絡だ、光はパン屋のメンバーに確認を取り合流すると答えた。 数十分後、林田が団体を連れてパン屋の裏へとやって来た、ラリーは料理が足りるか心配してたがネスタが余ったものをタッパに詰めて持って来たので大丈夫だった。 改まったかのようにメイスが立ち上がり聖職者達に声を掛けた。メイス「そろそろいいかしらね・・・、あんたたちやるよ。」 聖職者達と他のメンバーを集めて街の中心部へと歩いて行った、暗闇と静寂が包み噴水の音だけが聞こえるその場所でメイス達が空に杖の先を向けた。 聖職者達が魔力の玉を空に飛ばすと玉が弾け花の様に綺麗に開いた。それを立て続けに行っていく、そう、花火のスターマインみたいに。メイス「貰ってばっかりじゃ悪いからね、私たちからのお礼だよ。少ないけど楽しんでおくれ。」光「これはビール吞みたくなるわ。」 そう言うとビールを1口呑んで口の周りに泡を付けていた、それを見て皆笑っていた。賑やかな夜が過ぎて行った。 朝、光は王宮の横にある教会へと向かいメイスの体調等を伺う事にした。扉を開けると数人の信者が祈りを捧げている、信者の前に綺麗な正装を着たメイスが出てきた。メイス「祈りなさい、さすれば神はあなた方を必ずお救い下さいます。」 呑んでた時とは全く違う印象のメイスが信者の全員に丁寧に語り掛けていた。信者が涙を流す中、メイスは光に気付くと優しく声を掛けた。メイス「あ、おはようございます、光さん。昨晩は良い時間でしたね。ありがとうございました。光さんに神のご加護があらん事を・・・、では失礼。」光「めっちゃ酒強い上にめっちゃ聖職者してるやん・・・。」 実はこの教会、王族の支援を受け孤児院も兼ねており親に捨てられたり死別した子供達を引き取り寝食を共にして育てていた。 メイスは孤児院の子供達から慕われ人気者となっていた、メイスを見つけると子供たちは声を揃えて言った。子供達「メイスおばちゃん、お
last updateLast Updated : 2025-02-09
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3. 「異世界ほのぼの日記」㉞

-㉞子供の教育と食事- 光はある人に電話をして午後に会う約束を取り付けた、メイスは横にいながらぽかんとしている。 午後になって、光はメイスを連れ教会を出た。15分程歩いただろうか、田園風景が広がる場所に着きそこで約束を取り付けた人、ガイに声を掛けた。光「お久しぶりです、ごめんなさい急にお願いして。」ガイ「光ちゃんの頼みなら聞かない訳には行かないや、俺でよければ何でも言ってよ。」メイス「あの・・・、これから何を?」光「もう分かっているのかと思ってましたが、まぁいいか。子供たちの食育も兼ねて農業体験でもと思ったんです、土に触れ遊びながら自分達で食べる食糧を自分達で作りありがたみや大変さを学びつつ教会の食費を浮かすという作せ・・・、いや提案です。」メイス「なるほど、良い提案ですね。早速教会に持ち帰って聖職者たちに話を持ち掛けてみます。」 光の作せ・・・、いや提案は教会でも絶賛され即採用となった。早速次の日から子供たちがガイの田んぼで米を育て始めた。川から水を引き稲を1本ずつ大切に植え小さな合鴨を離した、これで害虫などによる稲への被害は減るだろう。田んぼを眺めながらメイスは光にお礼を言った。メイス「ありがとう、これからは私もちょこちょこ見に来るわね。」光「私もそうするかな・・・。」 すると光はメイスに微笑みかけ、パン屋の仕事へと向かった。 光が『作成』で作った肥料により米は1週間ほどで実り、早くから収穫の日を迎えた。合鴨のお陰で害虫の被害は無く無事にすくすくと育ち穂を垂れている。 教会で面倒を見ている子供達が嬉しそうに田んぼへとやって来た、メイスも女の子に手を引かれほぼ無理くりの駆け足でやって来た。 光も鎌を手に収穫に参加する事にした、子供達に教えながら1束1束丁寧に刈っていったが人数が多い分短時間で収穫が終わった。肥料のお陰で乾燥もすぐに終わってしまった。光「これを脱穀と精米して炊いたら美味しいご飯の完成だね。」子供達「はーやーくー!」メイス「慌てない慌てない、炊けるまで皆で遊びましょう。」 稲を刈った後の田んぼは子供たちの格好の遊び場となった。「空腹は最高のスパイス」だ、おかずに悩まなくて済みそうだ。シンプルな塩むすびで存分に喜んでくれるだろう。後は白菜の浅漬けでも出してあげるか、あれは日本酒の肴にする用に漬けたものだが米にも合う、
last updateLast Updated : 2025-02-09
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3. 「異世界ほのぼの日記」㉟

-㉟小さく大きな建設計画- メイスは光にある相談を持ち掛けた、流石に美味しくても毎日白い飯と漬物だけでは飽きてくる。そこで光は自宅の家庭菜園へ招待する事にした。先日米作りの時に使った肥料のお陰か野菜が豊富に実っていた。 庭にテーブルを出し汚れない様にゲオルの店で買っておいたラップを巻き付け、その周りに子供達を集めた。先日、ガイにお裾分けしてもらった小麦粉を使い生地を作り、薄く丸く広げる。そこに自宅で採れたトマトで作ったソースを塗り、切ったベーコンとナル特製のモッツァレラチーズを散らす。子供達にちぎりながら散らしてもらうべくナルに頼んで作り方を教えて貰いながら一緒に作っておいた。 ベーコンは先日『作成』で作ったタンドールを利用した燻製器で作った自家製だ。豚バラのブロック肉を仕入れて燻製し今回用に半分、そして自分の晩酌用に半分と分けてある。 さて、もうお分かりのはずだが光は今回、子供達とピザ作りをする事にしていたのだ。ただやはり子供達が嫌う野菜の代表格と言えるピーマンを彩りの為乗せたい、そこで見た目が分からなくなるまで木端微塵に刻み市場で買ったトウモロコシやツナと一緒に散らす事にした。 子供達が遊び感覚で小さなピザを各々で作り、それをメイスや丁度休日だったゲオルの協力で高温に熱されたピザ窯(これもタンドールの窯を利用したもの)に入れて焼いていった。 数分後、子供たちのピザが焼けたので配り、食事会の始まりとなった。子供達が先日と同様に祈りを捧げ食事を始める、焼きたてのピザは熱々だったが味は好評で子供たちは知らないうちにピーマンを克服していった。 食事会が終わり、メイスの引率で子供達が教会に帰った頃、光は何故か不服な気持ちになっていた。何かが足りない・・・、ただ何故か思い出せない。そこで改めて自分が焼いたピザを一口齧り咀嚼していった。光「マッシュルーム・・・、茸(きのこ)食べたい!」 唐突にそう思った光は庭の空いている土地に鋼鉄で作ったハウスを『作成』で建設し、内側にビニールを張り巡らせた。川から引いた水を利用し、まず水車を利用した簡易式の水力発電装置を設置して、普段家で利用している蓄電池に接続した上でハウス内の電力を確保する。流水を利用したシャワー設備を構築して年中茸が育つ状態にした。 空調に関しては苦労した。エアコンや換気扇は無事に設置出来たが、こ
last updateLast Updated : 2025-02-09
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3. 「異世界ほのぼの日記」㊱

-㊱違和感の世界で・・・、え?- パン屋での仕事を終わらせた光は街中を少し散策して帰ることにした、いつもさり気なく通る道を改めてゆったりと歩いてみると何かしら発見がありそうでワクワクしてくる。 先日、呑み会を行ったパン屋の裏通りを少し歩いてみよう。テラス席が沢山ありカレーハンバーグが人気のコーヒー専門店や東京の浅草にありそうな風格のある老舗っぽいカレーが人気のメイド喫茶、そして元々賄いだった裏メニューのカレー茶漬けが密かな人気になっているインドカレー専門店など日本にあっても違和感ばかりの店が並んでいた。 川に座敷と半分に切った筒を設置して「流しカレールー」をやっている店もある、ただ利用してもなかなか掴めないので客足が遠のくばかりで次の策を考えている様だ。 いつ考えていつ作ったのだろうか、蛇口を捻ればオレンジジュースやカルピス、焼酎、生ビール、そして変わり種としてカレールーが出てくるお店も発見する。ただこのお店、お水が出てくる蛇口は無いらしい。光「か・・・、カレーばっかりじゃん・・・。」 様々なお店の前を通り少し引きながら散策して行った、店員さんがいたら確実に店に引きずり込まれる。しかし、今は何となくカレーの気分ではない。 行き止まりになったので来た道を戻り街の中心部へと戻ることにした、鬱陶しい位に嗅ぎ飽きたカレーの匂いに包まれゆっくりと歩く。 先程通った蛇口のお店で見覚えのある女の子がご飯片手にカレーの蛇口の前にへばりついていた、またカレー茶漬けばかりを沢山頼んで他の料理も食べて欲しい一心の店主を泣かせている見覚えのある男の子もいる。老舗っぽい店で両脇に種類の違うルーを持つメイド2人を従えひたすらカレーをがっつく見覚えのある女性、そしてスプーンの代わりに中華料理で使う蓮華で流れるカレールーをすくおうと必死になる見覚えのある男性。ただとろみがあり中々流れてこない上に流れてきても蓮華では全て取れない。因みに「大き目のおたま」はオプション料金らしい。 しかし今着目すべきはカレールーのとろみ加減やオプション料金のおたまではない、カレーを食べている人たちを先日どこかで見たことがあるという事だ。全員が私服なので違和感が勝り正直誰なのか思い出せない、光はカレールーを必死に取ろうとしている男性に見覚えのある服装を頭の中で着せてみた。光「えっと・・・、まさかね・
last updateLast Updated : 2025-02-11
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3. 「異世界ほのぼの日記」㊲

-㊲子供達のために?- 異世界に来てどれ位経っただろうか、光はコーヒーを片手にふと思った。神様には何もしなくていいと言われたが今まで色々ありすぎて自分で言うのも何だがそれなりに活躍してきたと胸を張って言える気がする。 しかしそれなりにこっちでの催しや遊びも楽しんできた、結構日本に近い物を感じていたが異世界なりの変化もあったのでそれはそれで良しとした。 1人の大人として楽しく過ごしてはいたが疑問に思う事がある。 この国に子供たちの為の遊び場ってあっただろうか、と。 大人たちは街の西側にあるレース場公園夜銭湯や呑み屋で楽しめるが、子供達が遊べる公園や遊園地などの遊び場は見当たらない。 たまに田畑の端を走り回る姿は見かけたがそれ以外は殆ど見ていない。 そこで、教会に行き、アーク・ビショップのメイスに相談を持ち掛けてみる事にした。メイス「確かにその通りかも知れませんね、隣国では公園や遊園地などで友達を得る子供達が多いですから。」 教会は孤児院を兼ねていて、子供達が勉学を学ぶ施設や少し狭めだが小学校の様に遊具のある運動場も併設している。 そこでメイスが国王のエラノダに相談を持ち掛ける事にした、アーク・ビショップには国王以上の権威や権利のある人間達もいてメイスもその内の1人だった。 翌日、メイスは王宮へエラノダに直接会いに行った。エラノダ「そうですか・・・、それは盲点でしたね・・・。」メイス「子供たちにはお友達やご家族の方々との楽しい交流の場が必要とされています、この機会にご検討をお願いいたします。」 エラノダは即決断し王国軍の将軍達を集め作業の指示を出した。初めの第1歩として光の家がある住宅地近くに公園を作った、決して大きくはないがブランコや滑り台、そしてジャングルジムなど子供達が楽しめる遊具が設置された公園だ。 次にインパクトのあるものをと考え、銭湯の向かいの駐車場の端に山の斜面を活かしたローラー滑り台を作ると一瞬にして子供たちの注目の場になった。 そして銭湯に引いている温泉を利用し年中通える温水プールを建設して親子連れでワイワイしながら楽しめる場所とした。 メイスはエラノダに直接相談を持ち掛けて正解だと思った、まさかこんなに早く解決するのは予想外だったがこれも王国軍の仕事の早さの賜物だ。 温水プールの利用客の為、街の洋品店が水着やプー
last updateLast Updated : 2025-02-11
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3. 「異世界ほのぼの日記」㊳

-㊳学びの場- 温水プールではっちゃけた数日後、街中のカフェテラスでネスタが尋ねた。ネスタ「そう言えば、あんたはどこの魔学校に通ってたんだい?」 ネスタは光と一緒で日本からこの世界に転生して来た林田警部の奥さんだ。 この世界では住民が魔法を使えて当然との事だがどこかで学んでいた等の話は全く聞いた事が無かった、ネスタには自分がどうやってこの世界にやって来たかを伝えてはいる。 光は一応、大卒の会社員だが勿論魔法なんて日本で学んだ事は無い。 この世界では小中学校、高等学校、専門学校、そして大学という概念が無く学校と言えば魔法を中心とした勉学を学ぶ「魔学校」のみだそうなのだ。そこでは種族関係なく子供達が6歳から15歳まで学ぶことになっている。 夫の林田警部が転生者でありどこで学んでいたか知りたかったのだろう。光「私の元の世界には魔法自体が無くて、魔学校というものも無かったです。」 因みにこの世界での魔学校は隣のバルファイ王国に1校だけある、そう言えば街を見回しても学校らしき施設は孤児院の施設以外見当たらなかった。 6歳から15歳と言えば日本では大体義務教育の期間となる、その時期になれば出生届と住民票を役場と共有するバルファイ王国魔学校から連絡が来て学校に行くようになるのだ。 ただ、全寮制でも無いらしいので毎日隣国まで通うのは大変だろうなと思っていたが、学生証を家の玄関のドアにかざして開けるとすぐ教室に到着するとの事だ。 光はこの世界に来てから神様の恩恵で使える様になった『作成』のおかげで色々出来る様になったが林田警部は魔法が使えない。きっと、『作成』などのスキルの存在に気付いていないか本人が使おうとしていないかだ。 そんな事を考えていたら、ネスタが確信をつく質問を投げかけた。ネスタ「じゃあ、誰に魔法を教わったんだい。」 きっと神様のお陰だと言っても信じてもらえないだろう、光の場合誰かに教わった訳では無く『作成』で自ら作ったものだったからだ。光「この世界に来て、ネスタさんの家で眠っていた時に気づいたら出来てました。」ネスタ「そう言えば、朝ごはんの後に突然倒れた事があったね。あれと関係があるのかい?」 この世界に来た初日、ネスタの家で違和感を覚えながら全体的に和の朝食を食べた後、精神だけ神様に呼び出された折に、現実世界では廊下で倒れていた事
last updateLast Updated : 2025-02-11
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