翌日の朝食後――「イレーネ様、お出掛けにはこちらのドレスがよろしいかと思います」本日の専属メイドがウキウキしながらイレーネにドレスをあてがう。そのドレスは落ち着いた色合いのブラウンのデイ・ドレスだった。勿論、このドレスもイレーネが自らマダム・ヴィクトリアの店で購入したドレスであある。「あら、あなたもこのドレスが気に入ったの? ブラウンだったからどうかと思ったけれど……私たち、気があいそうね」ニコニコと笑みを浮かべるイレーネ。「ほ、本当ですか? イレーネ様!」メイド……リズは、美しく逞しいイレーネに密かに憧れていた。その相手から気が合いそうと言われ、喜んだのは言うまでもない。「ええ。年も見たところ私と変わりなさそうだし……名前を教えて頂けるかしら?」「はい、私の名前はリズと申します。私がこのドレスを選んだのには理由があります。何故ならこのドレスはルシアン様の髪色と同じ色だからです。初デートとなれば、やはりこのドレスしかありません!」きっぱりと言い切るリズ。「え……? デート?」デートと言う言葉に首を傾げるイレーネ。「はい、そうです。だって、初めてでは無いですか。お二人だけで外出なんて」(私とルシアン様は単に現当主様に会う為の準備を整える為に買い物に出掛けるのだけど……?)しかし、目の前でキラキラと目を輝かせているリズを前に本当のことを言う必要も無いだろうとイレーネは判断した。「そうね、確かに初めてのデートだもの。気合をいれないといけないわね。それではルシアン様をお待たせするわけにはいかないので、準備をするわ」「お手伝いさせて下さい!」こうして、イレーネはリズの手を借りながら外出準備を始めた――****「ルシアン様」ルシアンのネクタイをしめながら、リカルドが声をかけた。「何だ?」「本日の外出の目的はイレーネさんのドレスを買いに行くのですよね?」「そうだ、何故今更そんなことを尋ねる?」「いえ、少し確認したいことがありますので」「何だ? 確認したいこととは」鏡の前でネクタイを確認しながら返事をするルシアン。「ドレスを購入された後はどうされるおつもりですか?」「どうするって……そのまま、真っすぐ帰宅するつもりだが?」「何ですって? そのまま帰られるおつもりだったのですか? デートだと言うのにですか? 他に何処にもよ
Last Updated : 2025-03-02 Read more