絵理は純也に連絡しなかった。さっき突っぱねたばかりの相手に助けを求めるなんて、彼女自身、口に出すのもためらわれた。夜、絵理が風呂から上がると、雑賀から翌日の会議資料が送られてきた。資料の量があまりにも多く、絵理は徹夜してようやく目を通し終えた。夜明けが近づく頃、ようやく横になり、ほんの少しだけまどろんだ。「絵理ちゃん、起きて!絵理ちゃん、早く!」ぼんやりとした意識の中、絵理は呼ばれて目を開けた。ベッドのそばに立つ音葉の顔には、明らかな心配の色が浮かんでいる。絵理は目を擦りながら呟いた。「音葉ちゃん、帰ってきたの?ん、今何時?」「もうすぐ8時よ、キミ熱があるわ!体がすごく熱い。早く服を着て、病院に行くわよ」音葉は昨夜、夜間の撮影があり、ちょうど仕事を終えて帰宅したところだった。ソファで眠る絵理を起こそうとしたら、彼女の体がひどく熱を持っているのに気づいた。「8時?」絵理の意識が一気に覚醒し、慌てて体を起こした。しかし、突然めまいが襲い、ソファから落ちそうになるのを音葉が慌てて支えた。「絵理ちゃん、大丈夫?」昨夜の徹夜のせいで、頭がひどく痛んだ。絵理は首を振った。「大丈夫。今日は会社で大事な会議があるの。もう遅れそうだから、急いで行かないと」「社長でもないのに、キミがいないと会議できないわけ?休んだら?」「ダメ。この会議は私にとって大事なの。休めない!」音葉はふと思いついたように表情を変えた。「まさか、あの最低社長、わざと嫌がらせしてるんじゃない?」絵理は小さく笑った。「考えすぎよ。彼は私に嫌がらせなんかしてない。ただ、チャンスをくれただけ」絵理は会社での状況を簡単に説明した。音葉もこれがチャンスであることは理解していたが、それでも不安そうに眉をひそめた。「なんかさ、あいつ、わざとキミに近づこうとしてない?」絵理は一瞬驚いたが、すぐに笑って首を横に振った。「まさか。ただの会議よ」音葉はまだ納得していない様子だった。「絵理ちゃん、もう少しの辛抱よ。あんたが書いた脚本、知り合いの助監督に見せたの。すごくいいって言ってたから、会社に持ち込むって。もし売れたら、仕事辞めて、あの最低社長から離れられるわよ」「本当に!?音葉ちゃん、ありがとう!」絵理の目がぱっと輝いた。小説を読むのが好きで、自分でも
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