秋の訪れを告げる最初の雨が、バーの個室の窓を叩きつけていた。部屋の中では、立花絵理(たちばな えり)が男に両手を押さえつけられ、ソファに沈められたまま、容赦なく求められていた。相手の激しさに、最初の痛みと陶酔を通り越し、今ではただ痛みだけが彼女を支配していた。自分の体ではないような感覚だった。「んっ……やめて……もう……」途切れ途切れの哀願が唇から零れ落ちた。だが、こんな状況で彼女に拒む権利などあるはずがなかった。男はそんな声を一切無視した。その容赦ない力は少しも緩むことがなかった。男は止まる気配を見せず、彼の中の炎が波となって押し寄せるたび、絵理の意識は天へと昇り、そして急激に地へと叩き落とされた……「ブー……」不意に響いた携帯の振動音が、甘く湿った空気を引き裂いた。男は興が削がれたのか、動きをぴたりと止めた。「止めろ!」この男に逆らうことは絶対にできない。絵理が手を伸ばして携帯を取ろうとしたが、誤って床に落としてしまった。振動音はまだ止まらない。彼女が身を乗り出して拾おうとしたその瞬間、男は苛立ちを見せ、腰を掴んで彼女を引き戻した……しばらくして、激しい情事はあっけなく終わった。行為が終わると同時に、男は彼女を無造作に放し、絵理は支えを失いソファに崩れ落ちた。唇を噛みながら、慌ただしく体を起こし、スカートを引き直した。交わりの余韻を残した空気が徐々に薄れ、静寂が広がった。男は彼女に目を向けることなく、ティッシュを数枚取り、無造作に拭った。彼には完璧に近いほど整った顔立ちがあり、こんな仕草さえも目を奪われるほど絵になっていた。ズボンのジッパーを引き上げ、白いシャツに黒いスラックスという端正な装いは、どこか冷ややかでありながら、先ほどの行為から抜け出したばかりの色気を微かに漂わせていた。全身からは禁欲的な冷たさが滲み出ていた。彼は美しい大きな手で近くに置いてあった携帯を拾い上げ、骨ばった指先で画面を数回タップした。「ピン」絵理の携帯が通知音を発した。「出ていけ」男は携帯を置き、冷淡に追い払うように告げた。冷ややかな表情は人を寄せ付けないほどの距離を感じさせ、先ほどベッドで荒々しく彼女を抱いた人物とはまるで別人のようだった。絵理もこれ以上ここに留まる
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