寝室での情事は、2時間後にようやく終わりを迎えた。シャワールームから水音が聞こえ、藤堂なつみ(とうどう なつみ)は数分休憩した後、ようやくベッドから這い上がり、震える足で床に散らばった服を拾い上げた。今日、男の行為は少し乱暴だった。そのせいで、まだ頭がぼんやりしていて、パジャマのボタンを留めようと何度も試みたが、なかなかうまくいかなかった。やがて、男がシャワールームから出てきた。彼は長身でスタイルが良く、男らしさと美しさを併せ持つ端正な顔立ちをしていた。シャワーを浴びたばかりで、腰にはバスタオル一枚を巻いただけの姿。乾ききっていない水滴が腹筋を伝い、下へと流れていく。なつみがまだその場にいるのに気づくと、彼は眉をわずかに寄せた。なつみも彼を見ることはせず、視線を落としてボタンとの格闘を続けていた。「明日、真央が退院する」男が彼女の横を通り過ぎる時、突然口を開いた。「病院に迎えに行け。前の母親との約束で、真央をしばらくここで住まわせることにした」なつみの手がピタリと止まった。そして、彼女は振り返って背後の男を見た。それは、結婚してもう2年になる夫、速水グループの後継者、速水陽一(はやみ よういち)だった。そして彼が口にした真央とは、なつみの異父異母の妹、藤堂真央(とうどう まお)のことだ。なつみが5歳の時、遊園地で迷子になり、藤堂家に再び見つけ出されるまでの11年間を田舎で過ごしていた。16歳になりようやく家族のもとに戻ってきたものの、すでに藤堂家には「もう一人の長女」がいた。それが藤堂真央だった。父親の話によれば、なつみが行方不明になったばかりの頃、母親がずっと精神的に不安定だったため、やむを得ず児童養護施設から一人の女の子を養子に迎えることになったという。今、なつみがようやく見つかり、一家は団欒を果たした。しかし、再会後の日々は想像していたほど楽しくはなかった。10年間を田舎で過ごしたなつみは、洗練されていなかった。一方、真央は藤堂家の手厚い教育を受け、ダンス、絵画、ピアノなどあらゆる場面で輝きを放っていた。さらに重要なのは、藤堂家の娘は速水家と婚約関係があった。つまり、なつみが戻るまでは、速水陽一の婚約者はずっと真央だった。そう、二人は幼馴染だったのだ。しかし、この関係は
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