All Chapters of 悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました: Chapter 51 - Chapter 54

54 Chapters

51話 婚約破棄宣言 1

「勝ったー! アデリーナ様の勝ちだ!」「やった! 暴君が負けたぞ!」「キャーッ! アデリーナ様ー!」「愛していますっ!」ディートリッヒが首を垂れた途端、拍手喝さいが沸き上がった。歓喜に包まれる中、アデリーナはディートリッヒを見下ろす。「ではディートリッヒ様。約束通り、私から婚約破棄させて頂きます。婚約破棄の理由はズバリ、貴方の不貞ということで国王陛下に報告させて頂きますから」その言葉にディートリッヒは青ざめる。「不貞だって!? 冗談じゃないっ! 婚約破棄は受け入れるが、理由を不貞にするのはやめてくれ! 頼む!」ついにプライドを捨てたディートリッヒは地べたに頭を擦りつけた。「今更何をおっしゃているのですか? 決闘に負けたのはディートリッヒ様ですよ? それに私という婚約者がありながら、サンドラさんという方と不貞を働いたではありませんか? 今はこの場にいないようですけど」辺りを見渡すアデリーナ。アデリーナは知らないが、サンドラはあまりにも事が大きくなり過ぎたことが怖くなり、逃げてしまったのだ。「お、おいっ!? 不貞と言うな! 俺と彼女はお前が考えているような関係じゃないぞ! それにこんな大観衆の前で、妙な話をするんじゃない!」「ディートリッヒ様がいくらサンドラさんと男女の関係は無かったと言っても、四六時中、彼女を傍に侍らせていたのは事実! ここにいる皆さんが証人です!」アデリーナは見物している学生たちを見渡した。「そうだ! 俺達が証人だ!」「浮気なんて最低よ!」「言い訳するなっ!」「尻軽男め!」学生たちの間から、ディートリッヒに関するヤジが飛び始める。もはや彼が侯爵家の者だろうが、お構いなしだ。「くっ……! 周りを巻き込むなんて卑怯だぞ!! そ、それに剣術ができるなんて、俺は聞いていない! 騙しやがって!」「別に騙してなどおりません。ディートリッヒ様が知らなかっただけではありませか。まぁ、それも無理ありませんよね? 貴方は少しも私に興味を持っていなかったのですから」アデリーナの冷たい声はディートリッヒの背筋を寒くさせた。「ア、アデリーナ……お、お前……一体……」「そんなことより、まだ婚約破棄の理由にケチをつけるつもりですか? それとも私にとどめを刺されたいのでしょうか?」握りしめていた剣の先を喉元に向ける。「ひぃっ!
last updateLast Updated : 2025-02-03
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52話 婚約破棄宣言 2

「え!? 婚約破棄だって!? まさかあのギスランとか!?」マックスは余程驚いたのか、追いかけてきた。「ええ、あのギスランよ。彼以外に他にギスランはいないわ」「成程。オリビアもアデリーナ令嬢に触発されて、婚約破棄することを決意したのか」マックスはどこか嬉しそうに笑顔になる。「マックス……随分、嬉しそうね?」「それはそうさ。オリビアは知らないだろうけど、あいつはよくクラスの連中に話していたんだぜ? 俺の婚約者は可愛げが無いが、妹はとても愛らしいって。彼女が婚約者だったらどんなにか良かったのになって……え? 何故そこで笑うんだ? 普通は怒るところだろう?」オリビアが口元に笑みをうかべている様子にマックスは戸惑う。「それはおかしいに決まっているわよ。私はギスランと婚約破棄したい、そして彼はそれを望んでいる。もっとおかしいのは妹が本当は彼を嫌っているのだから」「何だって!? それは楽し……いや、大変な話だな。だけど妙だな……何故君の妹はギスランのことが大嫌いなのに、愛嬌を振りまいていたんだ?」「そんなのは簡単なことよ。私と妹は血の繋がりは無いの。そして義母は私を嫌っている。つまり私に嫌がらせする為に、わざとギスランに近付いたってわけよ」「うわ、何だよそれ。随分な話だな」マックスが眉をひそめる。「でもそのお陰で、私はギスランと婚約破棄しやすくなったわ。それに面白いことになりそうじゃない? ギスランは妹に好かれていると思っていたのに、実際は嫌われていることをまだ知らないのよ? きっとそろそろ家で騒ぎが起きる頃だと思うの。どさくさに紛れて婚約破棄してやるわ。勿論妹との不貞の罪でね」「そうか……それは楽しみだな。あいつに婚約破棄を突き付けてやれ!」「ええ。任せて頂戴! それじゃ、私急ぐから!」オリビアは元気良く手を振ると、馬繋場へ向かって駆けて行った。「頑張れよ、オリビア」マックスは小さくなっていくオリビアの背中に告げた——****「遅くなってごめんなさい!」馬繋場へ行くと、御者のテッドが待っていた。「いいえ、そんなこと気にしないで下さい。仕事ですから」「そう? ならここで御者として、貴方の腕前をみせてくれるかしら?」「え? 何のことでしょう?」首を傾げるテッド。「事故に気を付けて、スピードを出してなるべく早く屋敷に連れ帰って頂戴
last updateLast Updated : 2025-02-04
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53話 姉と妹、そして彼

 馬車がフォード家に到着し、扉が開かれた。「オリビア様、到着いたしましたよ。どうです? 所要時間10分の短縮に成功しました……ええっ!? どうなさったのです!?」オリビアの様子は酷い有様だった。髪は乱れ、疲れ切った様子で椅子に座っている姿に驚くテッド。「オリビア様! 大丈夫ですか!?」「無事に着いたのね……よ、良かったわ……」青ざめた顔でオリビアは返事をすると、テッドはぺこぺこと頭を下げて必死に謝罪する。「申し訳ございません! つい、調子に乗ってスピードを出し過ぎてしまいました。本当に何とお詫びすれば良いか……!」「い、いいのよ。元々スピードを上げてと言ったのは私の方だから……」けれどオリビアの脳裏に先程の恐怖の時間が蘇る。まるで舌を噛むのではないかと思われる勢いでガタガタと走る馬車。途中、何度も椅子から身体がフワリと浮き上がり、ドスンと落ちて身体に振動が響く。揺れが激し過ぎて身体が左右に揺さぶられ、何度か壁に頭を打ち付けてまったときもある。「誠に申し訳ございません……」テッドはすっかり落ち込んでいる。「本当に私のことなら気にしないで大丈夫よ。だってあなたのおかげでギスランよりも早く屋敷に帰って来ることが出来たのだから」「あ、そういえば来る途中に。 馬車を1台抜かしていきました。御者の男はギョッとした様子でこちらを見ていましたっけ。きっとあの馬車がそうだったのですよ! 恐らく俺の馬車テクニックに恐れおののいたのでしょうねぇ」得意げに胸をそらせるテッド。しかし、彼は知らない。御者が驚いたのは確かだが、馬車テクニックではなくテッドの発する奇声に恐れおののいていたと言う事実を。「何はともあれギスランより早く着いたことはお礼を言うわ。ありがとう、テッド」「お褒め頂き、ありがとうございます。ではまた同じような速度で今後も馬車を走らせても良いでしょうか?」テッドはあの風を切って走る爽快感が病みつきになっていたのだ。「それは却下よ!」「はい……そうですよね」シュンとするテッド。「そういうことは、誰も乗せない馬車でやって頂戴ね」「はい、オリビア様!」オリビアは馬車を降りると、テッドに見守られながら屋敷の中へ入っていった。**「はぁ~……それにしても怖かったわ。今も生きているのが不思議なくらいね」馬車の中で足を踏ん張り、手すりに
last updateLast Updated : 2025-02-05
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54話 婚約破棄宣言と修羅場

「な、何ですって……ギスランが来た……?」フットマンの言葉に青ざめるシャロン。「ふ~ん……ギスラン、やっと来たのね」「ちょっと! オリビアッ! まさかあんたがギスランを呼んだの!?」シャロンはオリビアを指さしてきた。「は? まさか。何故私がギスランをわざわざ家に呼ぶのよ。大体いつも彼は貴女に会う為だけに来ていたでしょう? でも折角来たのだから、応接室にでも案内してあげれば?」「はぁ!? ふざけないで! さっさと追い返しなさいよ!」ヒステリックな声を上げるシャロンに、フットマンはオロオロした様子で返事をする。「そ、それがあの……もう、いつものようにギスラン様を応接室にお通ししてしまったのですが……」「何ですって! どうしてそんな勝手な真似をするのよ!」「そんな……勝手なマネだなんて……」半泣きのフットマン。シャロンはもう使用人の前でも自分の本性を隠そうとはしない。そこでオリビアは助け舟を出した。「シャロン、責めるのはおよしなさいよ。元々彼は自分の仕事を忠実にこなしただけでしょう?」「オリビア様……」感動した様子でフットマンがオリビアを見つめる。「それでギスランは何と言って、訪ねてきたのかしら?」シャロンを無視し、フットマンに尋ねた。「ちょ、ちょっとオリビアッ! 余計な口挟まないでよ!」「はい。ギスラン様はたいそうシャロン様のことを心配なされておいでで、会えるまでは何があっても帰らないと仰っております」「あら、そうなの? 本当にギスランはシャロンのことを愛しているのねぇ。良かったじゃない?」オリビアは笑顔をシャロンに向ける。「嫌味なことを言うんじゃないわよ! 大体ねぇ、あんたは私があの男に興味が無いのは、もう知っているでしょう! 冗談じゃないわよ! あんな男、もういらない。あんたに返してあげるわよ!」「シャロン! 今の話は本当なのか!?」その直後。突如として廊下にギスランの声が響き渡った。「あら、ギスラン。いらっしゃい」何食わぬ顔でオリビアはギスランに声をかける。「あ、ああ‥‥‥お邪魔しているが……シャロン。今俺に興味が無いって言葉が聞こえてきたんだが……」ギスランは青ざめた顔で訴えるような目でシャロンを見る。「ええ、そうよ! この際だからはっきり言ってあげる。私はねぇ、一度たりともあんたに好意を抱いたことは
last updateLast Updated : 2025-02-06
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