いきなり手首を掴まれたメイドは、ギョッとした。今迄何を言われても言い返しもせず俯いて通り過ぎていた相手だけに、受けた衝撃は計り知れないものだった。「な、何をするのですか、オリビア様! 離して下さい!」「それは、こちらの台詞よ。今、あなた達はここの使用人にも関わらず私の悪口を言ったのよ? 一体どういうつもりなの!?」強い口調でオリビアは2人のメイドを交互に睨みつける。「ど、どういうつもりって……」 「それは……」メイド達は口を閉ざす。どういうつもりだと言われても答えようが無い。単にオリビアに嫌がらせしたいだけなのだから。「……もしかして、シャロンから私に嫌がらせをするように命令されているのかしら?」「いいえ!」 「それだけは違います!」オリビアの言葉に必死に首を振る2人のメイド。シャロンはオリビアに嫌がらせをするようにメイド達に指示したことは無い。そのことを知っていたオリビアはあえて、シャロンの名前を口にしたのだ。「そう。なら私に対する暴言は自分たちの意思だったということなのね?」「そ、そう……です……」 「私達の意思です……」観念したかのように俯くメイド。オリビアは未だにメイドの手首を掴んだまま、続ける。「使用人の立場でありながら、貴族である私にそんな態度を取っていいと思っているの? 確かこの屋敷で働いているメイド達は全員、協会からの紹介状を貰って雇用されているわよね。そこに訴えてもいいのよ? 雇い主の家人に暴言を吐いているって。フォード家の名を出せば、あなた達の立場はどうなると思う?」「ええ!? そ、そんな!」 「どうか、それだけはお許しください!」増々メイド達は青ざめる。「そう。どうしても許して欲しいのなら今すぐ私に謝って、二度と罵詈雑言を吐かないと約束してもらおうかしら?」オリビアは掴んでいたメイドの手首を放した。「大変、申し訳ございませんでした!」 「もう二度とこのような真似は致しません! どうかお許しください!」震えながら、頭を垂れる2人のメイド。「本当に反省しているのね? 絶対に二度と言わないと誓える?」「はい! 反省しています!」 「二度と言わないと誓います! だ、だからどうかお許しを……」協会に目をつけられてしまえば、二度と彼女たちはメイドとして雇用して貰えない可能性がある。
最終更新日 : 2025-01-06 続きを読む