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Lahat ng Kabanata ng クラックコア: Kabanata 21 - Kabanata 30

124 Kabanata

第010-1話 アジト

自宅。 ディミトリは自宅のパソコンに、スマートフォンから送られてくるGPS情報を打ち込んでいた。 スマートフォン上にも地図付きで表示できるが、軌跡が消えてしまうので不便なのだ。 得られた緯度経度情報から、地図上の位置と照らし合わせる為だ。 彼らの行動を考察する必要もある。それは今後の作戦に役に立つのだ。(こういう事は自動化しないとやってられないな……) そんな事を考えながら黙々と情報を打ち込んでいた。 ディミトリはプログラムを組めるわけでは無いが、簡単なスクリプト程度なら作れる。 その内、自動化してしまおうなどと考えていた。(もう少し勉強しておくんだったな……) 学生時代は成績は下の方だった。勉強より運動の方が面白かったせいもある。 それに学校特有の狭い人間関係も嫌だった。地域から集めるので雑多な境遇のものが集まってくる。 金持ちの子供や貧乏が染み付いているような子供まで色々だ。自然と階級が出来てディミトリは最下層だった。 どんなに羨んでも自分はそう成れないと確認させられる毎日は苦痛だった。 そして何よりも机の前にジッと座ってるのが苦手だったのだ。(でも、兵隊になると自分で掘った穴の中でジッとしてる事が多かったけどな……) 兵隊は銃の手入れをしているか、哨戒の為に塹壕などで前方をみている事が多い。 だが、それだけだ。何かを羨ましく思ったり妬んだり蔑まされたりが無かった。 後は、上司の嫌味を聞き流していれば良かったので楽だったのだ。「!」 ボーッと子供時代のことを思い出していたら車が停止したようだ。 国道沿いに変化していた位置情報は、隣市のマンションで停止したのだ。(くそっ、電話からは何も聞こえてこない……) 移動している間に何度か会話を聞こうと試みたが、紙袋にしまい直されたのか盗聴は成功しなかった。(会話から何かしらの情報が欲しかったんだがなあ……)「タダヤスー、夕飯よー」 階下から祖母の呼ぶ声が聞こえる。「はーーい」 悪巧みをしているディミトリの顔から、中学生のタダヤスの顔に戻して返事をする。 良い子ちゃんを演じきるのは中々大変だとディミトリは思った。 夕食を掻き込むように済ませたディミトリは、自分の部屋に戻ってGPS情報の確認に戻った。 だが、夕食後になっても移動をしていなかった。このマンションが連
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第010-2話 揺れるカーテン

 何日か観察してみないと駄目かなと思っていたが、翌日には簡単に特定出来てしまった。特定できたのは三階の角部屋だ。 金を受け取りに来ていた奴が出入りしているのだ。てっきり役割分担されているので、アジトは違うのだと思いこんでいた。(分業化が徹底していないのか…… やはりアマチュア集団だな) ディミトリは襲撃手順を考えるためにマンションの外側を見て回った。 すると、窓のカーテンが揺れているのを見逃さなかった。窓から侵入出来そうだ。(この構造なら雨樋を伝って登れるな……) これはベテランの空き巣が使う手口だ。 普通マンションなどにはベランダや屋根の排水に使う雨樋が付けられている。それを足がかりにして登る事が出来るのだ。 二階以上の住人は何故か窓から侵入されにくいと思い込むらしい。そして窓の施錠を行わずに就寝してしまう。 空き巣は窓から侵入し、物色した後に窓から帰っていく。玄関は施錠されたままなので、住人は侵入された事に気が付かない。 後で気が付いても、いつされたのか分からないのだ。 もっとも、普通の雨樋は大人の体重を支え切れる程頑丈な作りではない。 だが、今のディミトリの体重であれば大丈夫だろうと推測していた。朝晩のランニングや柔道などの習い事で、筋肉は付けてきている。ディミトリの感覚ではまだまだ軽い方のはずだ。(やっぱり明け方にやるか?) ディミトリは監視カメラの映像を見ながら考えていた。部屋には四人居るようだ。(四人か…… 殺って良いのなら二分もあれば足りるんだが……) 元々、傭兵を生業として生きて来た。命のやり取りに躊躇する事は無い。 寧ろ空気がヒリ付くような接近戦闘は好みの方だ。 だが、未だに勝手のわからない国に居るのに、面倒事に巻き込まれるのはゴメンだとも考えていた。 万が一、警察にバレても殴られただけなら、仲間内の傷害事件で片付けられる可能性が高い。しかし、殺人事件となると捜査する本気度が違ってしまう。 そうなればディミトリの所までたどり着かれてしまう可能性が出てくるのだ。 そういう事態は避けなければならない。それはディミトリの見かけの年齢はタダヤスの十四歳であるからだ。 少なくとも、後四年ほどは平穏無事に過ごさなければならない。 そうしないと一人で外国に行かせて貰えない。あの祖母の性格からしてある程度の年齢は取ら
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第011-1話 不健康な生活

ランニングの最中。 最近は身体が馴れてきたのか、十キロ程度のランニングならこなせるようになっていた。 体力が付き始めているのだ。筋肉強化も合わせてやっているのですこぶる体の調子は良い。 習い始めた柔道もどんどん勘を取り戻していく。師範から経験があるのかと尋ねられたぐらいだ。(鍛えがいがありそうだな……) スポンジが水を吸い込むように力を蓄えていく、この若い身体がディミトリは嬉しくなっていた。 ディミトリだった時には二日酔いの頭を醒ますのに苦労したものだ。だが、アルコールを摂取する習慣が無いタダヤスには二日酔いは無縁だった。(酒に頼らない睡眠とは、随分と快適なものだったんだな……) 今更な事を考えながら不健康な生活をしていたものだと一人反省していた。 事実、夜中に作戦行動がない時には、アルコールが汗になって滲み出るのではないかというぐらい呑みまくっていたのだ。(元の身体に戻っても続けるべきだな) そんな事を考えながらシャワーを浴び終えると、学校に行くために着替えた。(さて、元の身体に戻る手段を考えないとな……) 勿論、体力作りの他に詐欺グループへの襲撃計画を考えるのも怠っていない。(やはりスマートフォンを改造して盗聴器を作成するか……) 外部から操作するので液晶表示は必要ない。そうすればかなり小型化出来るはずだ。電源は二十四時間持てば良いだろう。 カメラ機能も有効にしておけば不明の面子を解明するのも重要な項目だ。 後は腕時計型のカメラだ。これならすれ違いざまに撮影が出来るはずだ。 それとスリングショット。相手を倒す事は出来ないが足止めぐらいには使える。音が小さいのも良い。 こういった小道具を作成しておく必要を感じていたのだ。 小道具を調達するのには元手が必要だ。 そこで祖母に小遣いを頼んでみた。すると、お年玉通帳という謎の銀行口座を教えられた。 そこには十万に満たない金額が入っているのだそうだ。 この国には年の初めにお小遣いを渡す謎の風習があるらしい。しかも、本人が使えるのでは無く、母親が銀行に預けてしまうという行事だ。中には母親に没収されてしまうという、理不尽な目に遭う奴もいるらしい。(意味がわからん……) それでも、自分の自由に出来る金が有るのは有り難い。有効に活用させて貰う事にした。 格安SIMカードと中古の
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第011-2話 不審車

 ある日、夕方に詐欺グループのアジトを見張りに行った。見張りと言ってもアジトが移転していないか確かめるためだ。 外からチラリと見た印象では、移転はしていないようだ。カーテンというか白い紙のような物が張られたままだ。(今日も変化無し…… と……) 監視カメラを回収して新しいのを設置しようとしていた。「ん?」 ディミトリは一台の車に気がついた。真っ黒な塗装のレクサスだ。(前にも見た記憶があるぞ……) レクサスは高級車だということはネットで見て知っている。特徴的なフォルムをしていたので覚えていたのだ。 ディミトリはハンビー(米軍の兵員輸送車両)のようなゴツゴツとした武骨な車が好きだった。 高級車はお高く止まっている印象が好きになれない。(……) 何処で見たのかを思い出そうとしていた。 基本的に家の周りをランニングするか、柔道場に通う為に街なかに自転車で出かけるぐらいだ。 後は、大型スーパーだろうかと考えていたら、何処で見かけたかを思い出した。(そうか、ランニングの時に道端に停まっていた事があったな……) 高そうな車という印象だけだったので、その時には大して気に留めていなかった。 もちろん、中に誰が乗っているのかは覚えていない。(見張りかな……) 中には男が二人乗っているようだ。 以前に監視カメラを仕掛けた時には居なかったはずだ。見かけていれば今回と同じで気がつくはずだ。(ひょっとして俺が対象なのか?) 監視カメラには触れずに素通りした。彼らの意図も素性も分からないからだ。 わざわざ、此方の手の内を知らせる必要は無いと考えたのだ。 まず、監視をしている対象が何なのかを調べることにした。 ディミトリは楽器店のショーウィンドウを見る振りをして観察してみる。 この手の追いかけっこは少年時代に経験済みだ。二週間ぐらい見張られていたことがあるのだ。 何の罪状なのかは不明だったが、思い当たることだらけだったので大人しくしていた。 そして、何日かすると知り合いを見かける事が無くなった。きっと彼の『仕事』関連で疑いがかかったのだと思った。(麻薬・売春・窃盗・強盗…… 何でもアリのヤバイ奴だったからな……) そんな事を考えながらディミトリがショーウィンドウに映る車を見ている。 彼らの車はジッとして動かない。(あの時に、俺を見張っ
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第012-1話 盗聴器

自宅。 ディミトリは考えた末、監視のやり方を変えることにした。監視と言っても、常時張り付いている必要は無い。 詐欺で受け取った金がどうなっているのか知りたいだけだ。 その為にも彼らの日常行動を知る必要がある。 だが、警察と思わしき車両がいる以上は迂闊な行動は控えた方が良いと考えた。 流石のディミトリも、警察の目の前で悪さは出来ないものだ。 何しろ相手は隙だらけの連中だ。いつでも大丈夫だとは思ってはいるが、慎重にやろうと考えているのだ。 自分が見張られているので、監視カメラの回収が困難な事をどうにかしないといけない。(盗聴器を仕掛けるか……) そこで盗聴器を深夜に設置することにした。 携帯を改造したやつなので、一時間毎にデータ送信で回収すれば良いからだ。 必要な機能以外は、全て停止しているので一週間程度は持つはずだ。 深夜、自宅の裏からコッソリと抜け出した。警官の巡回に出くわさないように、慎重に自転車でアジトの裏まで来た。 濃い灰色のスウェット上下なので怪しまれないだろうと考えていた。 いざと成ったらトレーニングの為に公園に向かうのだと言い訳するつもりだった。 何しろ童顔の十四歳なので通じるだろう。(さてと……) 周囲を見回して監視されていないのを確認してから徐に壁に取り付いた。 取り付いた壁の雨樋を伝って登っていく。 目標は三階のベランダ。二分もあれば登りきれる。 ディミトリは手慣れた調子で登っていく。自己の技術と体力で岩を登るフリークライミングは兵士には必要な技術だ。 訓練を行っていないタダヤスの身体で大丈夫なのか、懸念はあったが大丈夫なようだ。(よしよし…… 優秀な兵隊に成れるぞ……) そんな事を考えながら目的のベランダに取り付いた。 ディミトリは直ぐにベランダに入ることはせずに部屋の中の様子を窺う。 人が移動する気配が無い事を見届けると手早くベランダ内に侵入した。(寝てるのかな?) ディミトリは盗聴器を取り出し取り付けの準備を始めた。 マイクは透明なチューブで先端に付けてある。太さが一ミリ程度なのでパッと見は何の部品なのか不明なはずだ。 それをクーラーの室外機から伸びるパイプ配管の穴の中に挿入させた。 こうすれば、室内の音が直接拾えるし、盗聴器の存在に気が付かないはずだ。(よしっ、完了した……)
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第012-2話 消えた信号

(ひょっとしたら偶然だったのか?) 偶々同じ車種が居ただけなのかもしれない。或いは二十四時間監視の対象に成っていないのかもしれない。(いや、二回同じ車両を見かけたのは偶然ではない……) ディミトリは慎重な方だ。慎重だったから幾多の戦場を生き残って来たと言える。 臆病なのと慎重なのは違う。失敗から原因を推測して、次の行動のための糧にするのだ。 それが出来ないやつは全て死んでしまった。(俺はまだ死ぬ予定じゃないからな……) 盗聴器を仕掛け終わったディミトリは、次の懸案事項に対する方策を考え始めた。 誰に見張られているのかを確認しなければならないからだ。 その為には問題の車が警察なのかを確認しなければならない。  朝になって普段どおりのランニングに出かけた。そして、以前に黒い不審車を見かけた地点に差し掛かると、前に見たのと同じ場所に停車しているのが見えた。(夜はお休みなのか……) 昨夜、見かけなかったので夜中は監視してないらしいとは思った。 もっとも、見つかっていたら彼らも判断に悩んだに違いない。(ではでは、ちょっと誰なのか調べさせてもらいますよー) 後ろからそっと近づき、後輪タイヤハウスの裏側に携帯電話を貼り付けた。ここが見つかりづらいのは経験済みだ。 ディミトリは警察関係の車であろうと目星を付けていた。 警察署は二キロほど走ったところにある。あそことの往復であれば、後日回収できるだろうと考えていた。(若い男と中年の男…… きっと同じふたり組だな……) 以前にアジトの近辺で見かけたのと同じ二人組だ。ディミトリのランニングコースを見ている。 あの時は遠目で見るしか無かったが今度はしっかりと顔を覚えた。 その後、ディミトリはいつの通りの道筋でランニングを終え帰宅した。帰りにも問題の車は見かけた。 もちろん、気が付かない振りをするのは怠らなかった。こっちの手の内を見せてやる必要はないからだ。 帰宅してから二階の窓から双眼鏡で周りを見ると、二ブロック先の交差点に問題の車は停車していた。 そして、ディミトリが帰宅後三十分ぐらいで車を発進させていた。帰るのであろう。「よしよし、車に携帯が仕掛けられたのは気が付いていないな……」 パソコンに映る携帯の位置情報はディミトリの期待通りの結果を表していた。 携帯が発する電波はディミト
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第013-1話 統計上の数字

 翌日に信号が消えた場所に行ってみた。ディミトリの想像した通りにスマートフォンはバラバラになっていた。(向かっているのは東京都内か……) 高速道路に上がる手前に部品はあった。想像した通りにタイヤハウスから落下してしまったようだ。 粘着力が足りなかったようだ。直ぐに外す事を考えていたので控えめにしたのが仇となった。(警察の可能性もあるし、在外諜報機関の可能性もある)(結局、わからないままか……) 釈然としないままディミトリは自宅に戻った。 不審車にいつまでも掛り切りになっている場合では無いからだ。 部屋に戻った彼は詐欺グループのアジトの監視カメラをチェックし始めた。 盗聴器を仕掛けた時に回収しておいたのだ。 不審車の事があったので、毎日の交換作業はやらないほうが良いだろうと考えたのだ。(……)(俺がタダヤスでは無くディミトリに成り代わっているのを、知っている人物が居るという事だよな……)(……) そんな事を考えながら漠然と監視カメラをチェックしていた時に有るものを見つけた。 交通事故の様子が録画されていたのだ。「ああ、こういう事もあるのか……」 運転していたのは女性。見た感じは若そうだ。 女性は事故に気が付き一度車を降りてきたが、被害者の様子を一瞥すると去っていった。「轢き逃げじゃねぇか……」 これはディミトリの監視カメラに偶然撮られていた轢き逃げ動画だったのだ。「フフッ…… 悪い奴だ……」 普通なら慌てて警察に通報するのだろうが、そうすると監視カメラのことを説明しなければならない。 それはそれで面倒だ。第一、ディミトリは警察が嫌いだった。 少年だった頃も大人になってからも疎んじられて来たからだ。 きっと、警察に嫌われるフェロモンでも出しているのだと考えている。 車が去った後も動画は続いていた。男は倒れたままの姿がずっと写されている。 轢かれた男はピクリとも動かない。恐らくは駄目だろう。「フッ…… こっちは運の悪い奴だ……」 ディミトリは無感情のまま画面を見ながら呟いた。 これまでも、巡り合わせが悪くて死ぬやつは散々見てきた。 シリアの市街地で戦闘になった時のことだ。十メートル程度の近距離でお互いに撃ち合った。 その銃撃音に驚いて飛び出してきた住人が、敵兵に薙ぎ払われるのを良く見た。 ああいった地域で
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第013-2話 目撃者の掟

 動画は時間切れで終わっていた。容量がいっぱいになったようだ。 元々、日中の監視をしたいだけだったので、十二時間程度しか想定してなかったのだ。「とにかく、面倒事はまっぴらゴメンだな……」 彼は黙殺することに決めたようだ。 ディミトリは自分に関わりの無い事には興味が無い。 ハッキリ言って他人がどうなろうと知ったことではないのだ。 犯罪を見たら通報するのが正義だとされている。関わりを持たないのも正義だ。 正義の有り様は人それぞれだ。 それを強制される筋合いは無いものだとディミトリは考えている。(力の無い奴に限って安全な所に居て吠えてやがる……) ここ何ヶ月か日本に居て思ったことだ。 何処の国へ行こうと支配する側と支配される側の二面性を思い知らされるのだ。 地位を持たないもの、声が小さいものは搾取される側なのだ。 かつての自分も同じように搾取される側の人間だった。 だが、兵隊となって運命は自分でコントロール出来ると理解できるようになった。 その代償に良心を削り取ることになったのだ。 運に恵まれない奴らを見ながら自分はこう考える。『・・・ オレモオナジダッタ ・・・』 今はどうか? 傭兵になった時に、大人になったと錯覚することが出来ていた。自分の運命は自分の引き金で切り開く決断ができるからだ。 信頼出来る仲間に囲まれて、上官の愚痴を言いながら惰眠を貪り、良い女を口説く為に酒場に日参する。 そんな毎日でも気に入っていた。 だが、気がつけば東洋の見知らぬ国で、誰とも分からない小僧の身体に押し込まれている。 自分のケツが拭ける程度にはデカくなっているが、女ひとり口説くのにすら難儀している体たらくだ。(また、やり直しかよ……) ディミトリは自分の両手をジッと見つめていた。恐らくは人を殺めたことの無いまっさらな手だ。 タダヤスもディミトリに身体を乗っ取られなければ、普通の人生を歩んでいただろう。 ひょっとしたら違う人生を歩めるかもしれないと一瞬考えたのだ。(俺の場合は、相手も同じ兵隊だったけどな……) 『お互い様だろ?』そう自分を誤魔化しながら任務を遂行していた。何十人も手にかけてきたのを覚えている。(誰かのために働く人生がベストなのか?)(目的も無く漠然と時間が過ぎていくのを眺めるだけの毎日……)(たかが小銭を稼ぐた
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第014-1話 落ち着かない目玉

自宅。 ディミトリも普段は平凡な中学生『ワカモリタダヤス』を演じなければならない。 平日の昼間は学校に行かなければならないのだ。(また、クソッたれな場所に通う事になるとは思わなかったぜ……) 退屈極まる時間をジッとしているのは苦痛だった。 知識が無いので授業の内容が理解出来ないからだ。 彼は教室では口をきかなかった。この国の中学生の常識が皆無なので話がつまらない。 それと面倒臭い事になるのを避ける為だ。 事故の事は予め全員に知らせているようなので、クラスメートもディミトリには積極的に話しかけては来なかった。 後遺症があるという事にしてあるが、時々はサボって保健室で寝てたりした。 そうすると先生たちに依怙贔屓されていると勘違いするのも当然のように居るものだ。 トイレに行って用をたし、教室に戻ろうとすると同じクラスの大串が立ちはだかっていた。 何故か目玉をギョロギョロ動かしてる。 大串の子分たち二人も来ていて、トイレの出入り口を塞いでいた。(何かを探しているのだろうか……) ディミトリは無視して通り過ぎようとすると再び立ちはだかった。 やっぱり、目玉をギョロギョロと下から上へと動かしている。 いつだったか、病院抜け出した時に絡まれた金髪にも、似たような事していたのを思い出した。(ああ、威嚇してるつもりなのか……) ディミトリが育った街では威嚇などしないで拳で語ることが多かった。次がナイフだ。最後は拳銃で撃ち合った。 ところがこの国では違うらしい。目玉をギョロギョロ動かすのが相手への威嚇になるらしい。 中々、滑稽な風習なのだなと思った。「何の用だ?」「あっ?」 面倒くさいが一応話は聞いてあげようかと声をかけてみた。 やっぱり、目玉をギョロギョロ動かしている。「何の用だと聞いている……」「誰に向かって聞いてるんだっ! あっ!」 まるで話が噛み合わない。頭の悪そうな相手にディミトリは目眩がしてきた。 それと同時に時間を無駄に使わされるに腹が立ってきはじめた。「調子こいてるんじゃねぇーよっ!」 まだ、目玉をギョロギョロ動かしている。 ディミトリは吹き出しそうになるのを堪えていた。「おめぇの目つきが気に入らないんだよっ!」 ディミトリがニヤついたのをバカにされたと勘違いした大串が大声を出しはじめた。 そのまま
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第014-2話 酩酊隙間

 何も反応が無い。顔を掴んだまま頭を床に叩きつけた。「分かったな?」 再びゴンッと鈍い音と共に大串の目に涙がたまり始めた。指が少し深く入ったのでろう。「……」 大串が頷くような動作をしている。もっとも、頭をディミトリが抑えているのでうまく出来ない。「むぅ…… むぅ……」 そこまで言うと手を離してやった。 大串の目から涙が溢れ出ている。どうやら目玉は無事らしい。「……」 立ち上がったディミトリは子分たちの方を睨みつけた。 いきなりの逆転劇に大串の子分たちは立ちすくんでいた。 相手の予想外の強さに驚き、どうしたらいいのか戸惑っているのだ。「ん? 次はお前か??」 子分たちは首を盛んに振って道を譲った。 ディミトリが大串に構ってる時に、襲うという発想が彼らに無かったのは幸いだった。 一度に三人相手に喧嘩は出来ない。手加減する暇が無くて相手を殺してしまう可能性があったのだ。(これで終われば楽だがな……) ディミトリはため息を付きながら教室に戻っていった。 彼らが素直に諦めるとは思えない。弱いやつ程キャンキャン吠えるのを知っているからだ。 自宅に帰ってきたディミトリは、詐欺グループのアジトに仕掛けてきた盗聴器を聞いていた。(思っていた以上に鮮明に聞こえるな……) リビングに面した部屋以外の音も拾えるのは意外であった。音がくぐもって大して聞こえないと考えていたからだ。 もっとも、それらはロシア製や中国製の怪しげな盗聴器だったせいもある。(実は日本の民生品ってのは凄いんじゃねぇのか?) そんな事を考えながら聞こえてくる音に集中していた。 床を歩く音や玄関の開閉の音も聞こえていたので人数を数えるのが楽になりそうだった。 何日か観察した結果で彼らの行動パターンのような物が判明してきた。 午前中は詐欺の鴨を見つけるための電話セールス攻勢。午後は金を引っ張るための外出がパターンのようだ。 肝心の金は事務所に戻ってきてから分けているようだ。どういった割合で分けているかは不明だ。 そして金は各々自分で管理しているらしい。時々個人で外出しているので、その時に銀行に預けているのだろう。 時々、街中に繰り出して酒を浴びるように飲むらしい。(酒を飲むと言ってもたかがしれている……) 正体不明の不審車の事も有り、金を手に入れておくのは早
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