Semua Bab クラックコア: Bab 101 - Bab 110

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第059-2話 秘密の区画

(出てきた……) 銃撃戦となったら、物を言うのは弾幕だ。サブマシンガンを持っていない以上は両手に持った拳銃で戦うしか無い。 先頭の一人は拳銃を持っているのが見えた。(はいはい、チャイカの仲間なのは決定……) ひょっとしたら無関係な船員もいるかもしれないと思っていたが安心して殺せそうだ。 ディミトリは満面の笑みを浮かべて両手の拳銃から弾丸を送り込んでやった。 気分良く撃っていると頬を何かが掠めた。銃弾だ。後ろにも回り込まれてしまったのだ。 ディミトリは右手は出口、左手ではデッキの後方を撃ち出した。 やがて、左手に持ったトカレフの銃弾が尽きた。マガジンを交換している空きは無い。ディミトリは迷うこと無く銃を捨てた。 そして、右手の銃を懐にしまうと、下のデッキに移ろうとして飛び降りたのだ。「うわっと!」 ところが、デッキの下のデッキの手すりを掴みそこねて更に落下してしまった。「おっと……」 舷窓の枠に捕まる事に成功した。そして、腰にぶら下げておいた吸盤を張り付けた。 指先だけで窓枠に捕まるより楽なのだ。 そのまま海の中に逃げても良かったが、自分が泳ぐ速度より陸上を移動される方が早いに決まっている。(もう少し時間を稼ぐ……) ディミトリは窓に向かって銃を撃った。しかし、期待したような割れ方をしなかった。 窓ガラスを銃で撃つが穴が空くだけだった。荒れ狂う波風に耐えることが出来るようにガラスが頑丈なのだ。「くそっ、なんて頑丈に出来てやがるんだ!」 穴の開いた窓を蹴飛ばしながら怒鳴った。 ディミトリは窓の鍵があると思われる部分に、銃弾を集中して浴びせ腕が入る隙間を作り出した。 その間にも、ビシッビシッと銃弾が降り注ぐ音が通り過ぎていく。停泊しているとはいえ、波による揺れは多少はある。 彼らでは薄暗い背景に溶け込むような衣装のディミトリを撃ち取れないようだった。(よしっ! 開いた) 窓の鍵を開けて室内に潜入するのに成功した。(小柄な身体が役に立ったぜ……) 室内に降り立ったディミトリは立ち上がって見渡した。上下二段のベッドが並んでいる。船員用の寝室のようだ。 すると、一つのベッドで誰かが起き上がって来た。 室内に居たのは船員だった。ベッドの上で両手を上げて固まっている。 窓が割れたかと思うと男が入ってきたのでビックリしたら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-10
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第060-1話 誘導する罠

 故障したボイラーを二重構造にして、薬の密輸をしていた組織を強襲した事を思い出したのだ。 あの時には中に人間も入っていてビックリしたものだ。『それならひとつ下の甲板にあるが……』『赤毛のロシア人が出入りしていたか?』『そこまでは分からない…… 彼らに近づかないようにしていたからな』『それは賢い判断だ。 ありがとう……』 部屋を出ていこうとして、ディミトリは振り返った。『静かになるまで外に出ない方が良いぞ』『ああ、慣れているさ』 ロナルドはそう言って片目を瞑った。 部屋を出て扉を閉めると、上のデッキで走り回る音が聞こえていた。ディミトリを探しているのであろう。 船員の話を聞いたディミトリは金の探索は諦めた。探す所が多すぎる。アオイがゴムボートで逃げる時間を稼いだら、さっさと逃げ出そうと決めたようだ。 ディミトリは廊下を走って階段に近づこうとした。すると階段を降りてくる音が聞こえて来た。(ちっ、機関室に隠れるか……) 階段を昇るのを諦めて下に降りていった。そして、廊下伝いに開いているドアを探し回った。隠れるためだ。 すると、突き当りのドアが開いていたので、滑り込むように中に入っていった。 その部屋には灯りが一つだけ点いていた。そして灯りの中央に椅子があり、元は男だったと思われる死体があった。 男の遺体は手足を椅子に縛られたまま放置されている。 裸体を見ると所々が削がれており、手足の指先には釘の様な物が差し込まれた跡が見える。激しい苦痛と恐怖と絶望を経験した後に死んだのは間違いないだろう。 その表情には死ぬことで開放される喜びを表していたのだ。(相変わらず拷問を楽しんでやがるな……) ディミトリは誰の仕業か直ぐに理解できた。チャイカだ。彼はGRU仕込みの拷問を行う事を得意としていた。 相手は誰だろうかと一瞬思ったが、人種が黄色い奴ぐらいしか分からなかった。梵字の入れ墨が有ったからだ。(まあ、得意というより興奮するんだろうな……) 中々いけ好かない性癖だが、戦場で人の死に接していると何かが外れてしまう事も知っている。 きっと自分もその一人なのだと、分かっているディミトリには彼の事を責める気にはなれない。 それに、普段の彼は愉快で明るい奴なのだ。(……まてよ……) そして、ディミトリはある事に気が付いた。 チャイカは
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-11
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第060-2話 中身がクズの傭兵

『何だ? 俺を見ると左目が疼くのか?』「……」 ディミトリの戦友であり本体が死ぬ原因になった男だ。 ユーリイ・チャイコーフスキイ。愛称がチャイカ。左手の指が全て拷問で切り取られている。 前の身体の時には、彼を助けるために左目を失うというハンデも負ってしまった。『まあ、あの時にお前が助けてくれなかったら、俺は死んでいたろうがな……』「……」 ディミトリは怒りに満ちた目で彼を睨みつけていた。だが、銃は構えたままだ。 撃てないのはチャイカの後ろの男たちが、カラシニコフを構えているのが見えるからだ。『昔話はこの辺で良いだろう……』「……」 ディミトリが何も言わずにいると、チャイカは少しだけ肩を竦めた。『お互いにベテランの傭兵だ。 ビジネスの話をしようじゃないか』 チャイカはベラベラと旧知の友人に話しかける感じで喋っている。 多分、コカインをキメているのであろう。彼は薬物依存でGRUを首になっている。『何。 話は簡単だ……』「ソイツは何の話をしているんだ?」 ディミトリがチャイカの話を遮って周りに話し掛けた。「誰か通訳してくれよ……」 銃はチャイカに照準したままだ。チャイカ以外の男たちは顔を見合わせていた。 確かに部屋の中央で日本人の少年が銃を構えているだけだ。 最初に聞いた話では、チャイカの元同僚のロシア人傭兵だったのだ。『コイツはロシア語が出来ないみたいですぜ?』 部下の一人と思われる男がチャイカに進言している。ディミトリは分からない振りを続けていた。 アオイの話では通訳をする男が居たと言っていた。コイツがそうなのであろう。『騙されるな…… コイツは間違いなくディミトリ・ゴヴァノフだ』「俺を逃してくれれば、船の底に隠してある麻薬の事は警察には言わないでおくよ」 切り札を使うのは気が引けるが、まだ駆け引きが出来るか試してみることにした。「十五分以内に船から脱出出来ない時には警察に通報するように女に頼んである……」 もちろん嘘だ。そんな打ち合わせをする暇は無かった。だが、ここに居る男たちは知らない事だ。 するとチャイカ以外の男たちの眼付が変わった。『耳を貸すんじゃない。 ソイツは俺と同じくらいの嘘付きだ』 チャイカ以外の男が思わず笑い出した。『俺には子供にしか見えないんですが……』『それは見かけだけだ…… 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
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第061-0話 何も映さない瞳

モロモフ号。 ディミトリは銃を構えたまま、男たちと睨み合っていた。チャイカの他にAK-47を構えたのが二人居た。 AK-47とは旧ソ連で開発された自動小銃。どんなに悪辣な環境であろうと弾が出る傑作品だ。唯一の問題点は、的に当たらないことぐらいだ。 世界中で模造品が製造されている。彼らが構えているの、その一つだろうとディミトリは思った。「……」 一方、脅された当事者であるチャイカは平気な顔をして泰然としている。何か秘策が有るのであろう。『船の底に隠した麻薬なんて無いよ』 そう言ってチャイカは笑った。どうやら麻薬取引は既に終了しているらしい。『お前がシリアマフィアから掻っ攫った金を返しな』「!」 瞬間。ディミトリの中で失われていた記憶が蘇る。ノートパソコンの画面が浮かんできたのだ。 そう。ディミトリは最後の瞬間まで金の転送作業をしていたのだ。金はもちろん麻薬取引の金だ。 それから、自分の口座の金額がモリモリ増えていくの眺めている記憶も思い出した。(それで狙われていたのか……) 中国人にしろロシア人にしろ、危険を侵してまで自分を追いかけ回す理由が分かった。 麻薬取引であれば結構な金額に成る筈だからだ。『あれは俺の物なんだよ』 そう言えば、事前に金に関する事を言ってきたのはチャイカだった。ノートパソコンへのアクセスの仕方と振込先の口座も彼が教えてくれた。 だが、ディミトリが振込先を勝手に変更したので計画が狂ったようだった。『折角、お膳立てしたのに、お前さんが全部パアにしやがった……』(やはり、あの爆発はお前が仕掛けた物だったのか……) ディミトリが覚えているのは、爆炎が迫ってくる光景の中で逃げようとする仲間たちだ。 自分を吹き飛ばした爆風が収まった時に、自分を見ろしている人物が居たのは覚えている。 それがチャイカだったのであろう。「なんだ…… 拷問でもするのか? 知らないものは答えようがないだろう?」 ディミトリがふてぶてしく答えた。 通訳が翻訳し終えると、チャイカは笑い声をだした。想定済みだったのであろう。『ははは、お前が拷問に慣れているのは知っている』 実際は、ちょっと痛い思いをすると気絶してしまうが、彼は知らないようだった。 最近はイメージトレーニングで凌げるようになったとは言え万能では無い。今の状況では拷問
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-13
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第062-1話 捨て台詞

モロモフ号。 船の底に近い階層からチャイカを追いかけてディミトリは飛び出そうとした。 しかし、彼の耳にコッキング音が聞こえた。後ろからだ。迷わず音のした方に自動小銃を向けての引き金を引いた。 一瞬のためらいは自分の安全を脅かす。兵隊時代には確認してから引き金を引けと言われた。だが、傭兵になった時には引き金を引いてから確認するようになった。そうしないと生き残れないからだ。(あの時だって俺は生き残りたかっただけだ……) ディミトリは戦闘で突入するビルに、窓から中に手榴弾を投げ込んだ。事前に安全を確保する為だ。 爆発した後に踏み込んでみると出鱈目な状態になった子供の死体があった。何で戦闘地域に子供がいるんだという思いと、彼らが腹に爆弾を巻かれている光景も合わさって鬱になってしまった。 それ以来、子供を見ると散らかった死体を思い出してしまうように成る。後にPTSDと診断されたのだ。苦い記憶だった。 そんな兵士として使い物にならなくなったディミトリを励ましてくれたのがチャイカだった。 引き金を引きながら思い出していると、弾幕の中で二人の男たちが倒れていくのが見えた。 しかし、AK-47の偽物とはいえ中の機構は本家と同じだ。フルオートで連射すると五秒も持たないで弾倉が空になってしまう。(しまった……) 久しく扱って無かったのでAK-47の感覚を忘れていたようだった。ディミトリは倒れていた男たちから弾倉を回収した。(引き金の加減を思い出さなと……) 戦線での弾切れは死刑宣告と同じだ。弾切れを気にしないで戦うのは米兵ぐらいなもんだ。(こっちの方角か……) 男たちが居たということは、チャイカはこちらに逃げて行ったであろう方角に目星を付けた。(大きめの船倉区画だったよな……) 貨物コンテナが入っている大きい船倉のはずだ。普通なら追撃を諦める場面だ。 敵の勢力も分からない状態はかなり拙いからだ。それでもディミトリは止めなかった。(俺がどういう手術を受けたのかを聞き出さないと……) それは自分の本体の所在が何処に有るのかと、元に戻れるのかを聞きたかったのだ。 ディミトリは命の危険は感じて居なかった。チャイカは彼が持っている金の在り処を知りたがっていたからだ。(俺から金の在り処を聞き出すまではアイツは諦めないさ) そう考えてフッと笑いだした。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-14
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第062-2話 好みのタイプ

 チャイカは右手に持った拳銃をディミトリに向けた。それは、元傭兵とは思えないお粗末な物だ。ディミトリなら銃を目の前に構えずに目算で撃ちまくる。一発でも当たれば御の字だからだ。 しかし、チャイカは手本取りに銃を構えようとした。ディミトリはすかさず拳銃を撃ち落とす。相手を撃つ時に銃を構える僅かな時間は命取りなのだ。床に転がる拳銃を呆気に取られて見つめるチャイカは、口の中で何かをゴニョゴニョ言っていた。『さてと、二人きりで話をしようじゃないか……』 ディミトリが流暢なロシア語で話し掛けた。チャイカは苦渋の表情を浮かべていた。『死ねよ、疫病神……』 しかし、チャイカは憎々しげに捨て台詞を言い放つと、手すりを乗り越えて海に飛び込んでいった。 チャイカは自分と同じくらいに、ディミトリは拷問が得意なのを知っているのだ。(え? お前は泳げなかったろう……) 唖然としたディミトリは直ぐにその事を思い出した。 直ぐに手すりの所に駆けつけたが、チャイカの姿はどこにも無かった。海面には波紋が広がっているだけだ。 チャイカは追い詰められて逃げていったのだ。『クソがっ!』 ディミトリは憮然としていた。後少しの所で獲物を逃してしまったのだ。悔しくて堪らないらしい。 彼はアカリに電話を掛けた。彼女は待っていたのか直ぐに出てくれた。『若森くん。 大丈夫?』「ああ、大丈夫……」『そう、良かった……』「お姉さんに変わってくれるかな?」『ええ』 電話をしながらもディミトリは海面から目を離さなかった。息継ぎしている所を狙いたかったのだ。 だが、チャイカは海面に出て来る様子は無い。彼も狙われていることを予期していたのであろう。 薄暗い海面ではこれ以上は無駄だと悟ったディミトリは引き上げることにした。「例のロシア人に逃げられてしまったよ……」『君のことを知っているようだったけど……』「誰かと間違えているんだろう」『……』 もちろん、ディミトリの嘘はアオイにはお見通しなのだろう。彼女は黙ってしまった。「俺の尻は白人のおっさんにとって好みのタイプなんだろうよ」『馬鹿……』 ディミトリは適当に茶化してみたが、余り効果はなかったようだ。却って怒らさせてしまった。 そこで、彼女に頼まれていた事を伝えた。「子供は一緒にいるから船の舷門まで車で迎えに来て欲しい」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-15
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第063-0話 後処理

 ディミトリは部屋の中を物色しはじめた。シンイェンが子供なので興味を無くしたのであろう。 それよりも手がかりを探すことを優先したのだ。『お前の名前は?』『ワカモリ・タダヤス』『そう、タダヤスね……』 この部屋には目ぼしい物が無い事を悟ると出ていこうとした。『ふね おりる』『分かった』 ディミトリが言うとシンイェンは大人しく付いてきた。もっとも、ディミトリのシャツの裾を掴んだままだ。 もっとも、彼女には他の選択肢が無い。ここでディミトリに逸れると、嫌な思いをしなければならないと悟ったのだ。 彼女の今後はアオイと相談して決める事にした。警察に頼めない以上は密出国させる事になるが手立てが不明だ。 ディミトリは道すがら倒れている男たちの身体を調べ回った。武器や身分証を持っている袋に入れる為だ。 後でコイツラの背景を調べるのに必要だ。チャイカが逃げた以上は小さな手がかりでも欲しかったのだ。 チャイカの話から中国系の連中がクラックコアを施術したのは分かった。後はどうやったのかと戻れるのかが知りたかった。 それと自分の身体の在り処だ。(金を掻っ攫ったのなら元の身体に戻らないと楽しめないしな……) 自分を狙う理由が分かって心のモヤが晴れた気分だ。 次は中国系の連中をとっちめる必要がある。その為の下準備を始めるつもりだった。 シンイェンを連れて食堂に行くと全員机の下に潜っていた。銃撃戦が始まったので跳弾を避けるためだろう。 外国ではよく見る反応だ。 銃撃戦の中でポケーと突っ立ているのは日本人ぐらいだ。生活の中に銃が存在しないので仕方が無い面もある。『この中に船長は居るか?』 ディミトリが英語で尋ねると、一人の男が立ち上がった。他の者たちはディミトリを注視していた。 拳銃を腰の位置で構えたまま彼に向ける。銃に気が付いた船長は小さく手を上げた。『俺がそうだ』『密輸をやってた連中の仲間か?』 ディミトリは少しホッとした。密輸の仲間なら全員を殺るつもりだったからだ。憂いを残すのは後々トラブルになる。 だが、全員を殺るには弾数が少ないのが心配だったのだ。『俺は違う。 航海士が連中とつるんでいたんだよ』『そうか、あの連中は全員始末した』 ディミトリの言葉に食堂の船員たちはザワついた。 シンイェンはディミトリと船員たちを見比べていた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-16
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第064-0話 思惑の行方

車の中。 モロモフ号を下船したディミトリとシンイェンはアカリが運転する車に乗り込んだ。 見知らぬ二人に怯えているのか、シンイェンはディミトリのシャツを掴んだままだった。『ふたり なかま』『……』 ディミトリがそう言うと、シンイェンは二人に軽く会釈をした。「え、若森くんは中国語が出来るんだ」 アカリがビックリした様子で話し掛けてきた。彼女はディミトリの事をヤンチャ坊主だと思っていたのであろう。「簡単な単語を並べることしか出来ないけどね……」「それでも凄いよ。 私はアカリ。 宜しくね!」「私はアオイよ……」『林欣妍(リン・シン イェン)よ。 どうぞ宜しくお願いします』「彼女は宜しくと言っている」 スマートフォンの翻訳アプリを使えば、ある程度の意思疎通は可能だ。 だが、自分で喋ることが出来るのとは違う話だ。『ふたり しまい おまえ くらす』 そう言うとシンイェンは頷いていた。彼女たちが姉妹で、これからシンイェンの面倒を見てくれると理解したようだ。「これから彼女の面倒を見てやってくれ……」「え?」 アオイが戸惑ったような表情を見せた。どうやら助け出した後でどうするのかを考えていなかったようだ。「え…… って、お前が助けろと言うから助け出したんだじゃないか……」 困惑するアオイにディミトリが憮然として言った。 元々、助ける気など無かったので、彼女を故国に返す手立てなど考えてもいなかったのだ。 このまま押し付けられても子供の面倒など見ていられない。「それに中学生の小僧にどうしろと言うんだよ」「……」 都合の良い時には小僧の振りが出来る。中々、便利な立ち場だとディミトリは思っていた。「分かった…… とりあえずは私の部屋に連れて行く……」 アオイはディミトリの言うことも尤もだと思い、自分の家に連れて行くことにしたようだ。 シンイェンの方をちらりと見て、服を買ってあげないようと考えた。粗末な薄汚れたワンピースのままなのだ。「ああ、彼女の親の事や、拉致された経緯などを聞き出せば良い」 その上で、今後どうするか考えれば良いはずだ。 シンイェンの親が警察を頼りたければそうするし、そうでなければ違う方法で帰す手段を考える。「え? 親が警察を頼らない事ってあるの?」「犯罪組織同士のイザコザで誘拐されたって線も有るんだよ……」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-17
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第065-0話 親の商売

アオイのマンション。 アオイは郊外のマンションを借りていたようだ。引っ越しを急に決めたので、不動産屋に選んでもらったらしい。 四人はひとまず部屋の中に入った。今後のことを話し合う為だ。「広くて明るい良い部屋だね」「ここしか開いていなかったのよ……」「3階建ての三階か……」 ベランダの窓から外を見ながらディミトリが呟いた。「ん? 部屋は良くないの?」「空き巣が一番狙いやすい部屋なんだよ」「そうなの?」「ああ、適度な高さだから住人が窓の鍵を掛けない事が多いせいなのさ」「君は何でも良く知っているのね……」「ネットで読んだだけで、全て知っているつもりのネット弁慶さ」 ディミトリはそう言いながら笑った。もちろん、押し込み強盗をした経験があるのは内緒だった。「んーーー、これが使えると思う……」 アカリが翻訳アプリを動作させてみた。携帯に向かって語りかけてアプリ側で翻訳して音声にしてくれるタイプのものだ。 港から帰ってくる間に、運転をアオイに替わって貰ってから探していたらしい。「こんにちわ」『你好(ニーハオ)』 流暢な中国語が携帯電話から返ってきた。話し合いが捗りそうな予感がしていた。「俺の片言中国語よりはマシだな……」 アプリの翻訳の様子を見たディミトリは、そう呟くと早速シンイェンに質問してみた。『これなら何とかいけるかもしれない……』『貴方の下手な中国語よりマシね』『それ酷い……』『冗談。 助けてくれてありがとう』『どう致しまして……』 シンイェンの表情が明るくなった。意思の疎通が出来るのが嬉しいのだろう。(すげぇ…… 便利な物だな……) ディミトリは技術の進歩には凄いものがあると感じてしまっていた。 所々、おかしい翻訳も有る気がするが、それでも何も出来ない寄りは遥かにマシだ。『貴方は日本の兵隊で特殊部隊か何かなの?』『いや、日本の中学生で帰宅部隊に所属している』『変なの…… クスクス』 シンイェンがケラケラと笑いだした。アオイやアカリも笑っていた。『シンイェンは何処に住んでいるの?』『香港』『親の商売は?』『マフィア』『え?』 ディミトリは思わず携帯を見返した。翻訳アプリが間違えているのではないかと思ったからだ。『マフィアだよ? 日本の盗品を中国で売っていると言っていた』 彼女自身は貿易商
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-18
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第066-1話 手荒い連中

『ところで何で日本にいるんだ?』 シンイェンは香港に住んで居たはずだ。ところが日本の港に停めてある船の中に居たのが解せなかったのだ。『日本の遊園地に遊びに来ていたのよ』『ああ、それでなのか……』 日本に来て気が緩んだ所を拐ったのだろう。 普通、この手の人質は大事にされる物だ。だが、彼女がぞんざいに扱われていたのを見ると、ロシア系の連中は誘拐とは無関係だったのだろう。 帰りの道中で他にも拐われた者は居ないと言っていた。シンイェンが予定外であったのだ。『君を親元に返したいんだが…… どうすれば良いの?』『電話を掛けさせて頂戴』『それは構わないが公衆電話を使ってくれ』『どうして?』『携帯電話は位置の特定が可能なんだよ』『……』『君のお父さんが警察に通報していると、俺達は面倒な立ち場になってしまうんだ』『……』『お兄さんもお姉さんも警察とは仲が悪いんだよ』『……』 シンイェンは部屋に居た三人を順番に見つめた。 香港でもそうだが、一般市民が銃を持っていることなど無い。しかも、彼らはこの手の事に手慣れているようだ。 彼女の拙い経験からも、普通の市民では無いことは明白だった。『分かった』 シンイェンは返事をした。彼らが敵では無いと理解できているだった。 何よりも先の見えない監禁生活から開放してくれた。彼女にとっては彼らは英雄なのだ。 アカリとアオイはシンイェンの服を調達しに出掛けていった。 ディミトリは彼女を連れて近くにあるコンビニやって来た。近所で公衆電話があるのはコンビニだけなのだ。 シンイェンに小銭を渡して国際電話の掛け方を教えてあげた。(公衆電話で国際電話が掛けられるとは知らなかったぜ……) 実を言うとアオイに聞くまで知らなかったのだ。百円単位なのでテレホンカードを用意しないといけないのが面倒だった。『済まないが録音させて貰うよ。 それから余り俺たちのことを詳しく話さないで欲しいんだ……』 電話する彼女の会話を録音する事にしていた。ヤバそうだったら逃げる為だ。 ディミトリは中国語が片言で分かると言っても無理がある。詳しい部分は後で翻訳ソフトで聞こうと考えていたのだ。『わかったわ……』 シンイェンは教えられた通りに電話を掛けた。相手は直ぐに出たようだ。ディミトリはそっぽを向いて聞かない振りをしていた。 電話
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-19
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