私はオークション会場の入口に立ち、目の前に広がる豪華な装飾が施されたホールを見上げ、心の中で思わず微かな感慨が湧き上がった。かつて栄光に満ちていた頃、私はこの場の常連客だった。いつもここに来ると、座る前にウェイターが水や軽食を提供してくれる特別なお客様だった。今や行き変わり、お茶を出す側になってしまった。やりたくはなかったが、このオークションの時給は非常に高く、まるでお金が私を呼んでいるように感じた。利害を考慮し、私はこの仕事を引き受けた。木村沢男の治療には、毎週の心理カウンセリングが数千円かかり、月々も色々な薬をたくさん飲まなければならなかった。ざっと計算すると、この病気だけで月に六万から八万円はかかるが、高額な借金の返済は言うまでもなかった。もし昔の私だったら、このくらいの金額は、バッグやネックレス一つ買うのにも足りなかった。しかし、今は違った。彼とのすべての出費は、厳密に計算しなければならず、日常品をスーパーで買う時も割引の日を選ぶ必要があった。出発前、彼にメッセージを送った。「どう?少しは良くなった?」すぐに返事が来たが、その中には謝罪が詰まっていた。「相変わらずだ......ごめん、俺の巻き添えを食った」私は急いで彼を慰めるメッセージを打った。「大丈夫、時間はたっぷりあるから、ゆっくり行こう!」メッセージを送ってから、再び返信はなかった。私は今からウェイティングスタッフの仕事に行くことを彼に知らせる勇気はなかった。何せよ、大型のオークション会場には、多かれ少なかれ上流階級のやんちゃがいた。かつては、私の隣でお茶を出していた純真な女の子が、瞬時に権勢者の二代目たちに誘拐されるのを目撃したこともあった。木村沢男はプライドが高いので、私が彼の治療費を稼ぐためにこのようなバイトをしていることを知ったら、きっと烈火のごとく怒るだろう。彼の状態は本来良くないのだから、私がその感情を刺激することは避けたかった。仕事着に着替えると、会場にはすでに多くの人が座っていた。恐らく服を着替える時間が少し長かったため、ゲストはほぼ入場しており、マネージャーは不機嫌そうに私を会場内に配置した。階段状のオークションホールは広大で、最後の列に立つと、台の上に置かれた商品がほとんど見えなかった。その時、
最終更新日 : 2024-10-10 続きを読む