昼休み、親友の美香が会社に来た。「夕子、仕事の話があるんだけど」といって、表情を引き締めて座ってる。察して、すぐにスマホを取り出した。「いくらいる?」美香は心理学専攻。就職できなくて起業した。私にはお金の余裕があるし、起業の大変さも分かる。できるだけ助けてあげたい。結局、唯一の友達だしね。美香の顔が赤くなった。「違うの、お金借りたいんじゃなくて」ちょっと驚いた。「じゃあ、何?」仕事の接点なんてないのに、お金以外に何の用があるっていうの?美香は深呼吸して、覚悟を決めたみたいに言った。「夕子、私が浮気撲滅屋をやってるの知ってるでしょ。この前、依頼が来たの。それが...あなたを追い出すって」頭が真っ白になった。自分の耳を疑った。私と啓介って、高校からずっと一緒で、結婚式まで歩んできたのよ。両家の親も友達も皆知ってる仲だし。私が浮気相手なんてありえない。どうして私を追い出す依頼なんてあるの?「ちょっと待って、何かの間違いじゃない?啓介と結婚して3年も経ってるのに、私が浮気相手?」美香はじっと見つめて、急に事務的な口調になった。「河野夕子さん。確かにあなたは佐藤啓介さんの正式な妻です。でも今、啓介さんには明らかに別の人がいる。なぜ手放さないの?」信じられずに聞き返した。「じゃあ、啓介の浮気相手から依頼を受けて、私という正妻を追い出そうってこと?」浮気撲滅屋っていうのは、文字通り浮気相手を追い出すはずでしょ。それなのに浮気相手の依頼を受けて正妻の私を追い出す?初めて美香の人間性を疑った。美香は平然とした顔で頷いて、正義感たっぷりに言った。「夕子、誤解しないで。普通なら浮気相手から正妻を追い出す依頼なんて受けないわ。でもあなたは私の友達だから、黙ってられなかったの」頭の中がぐちゃぐちゃになって、スマホに手を伸ばした。「啓介に聞いてみる」啓介があの鈍感な男で浮気なんてするわけない。うちの研究所で働いてて、仕事か家にいるだけ。浮気する暇なんてないはず。でも美香が急いでスマホを押さえた。「夕子、男が浮気を認めると思う?聞いたって無駄よ」眉をひそめた。「じゃあ、どうすればいいっていうの?」「離婚するしかないでしょ!」美香は断言した。「こんな浮気男と話し合う余地なんてないわ!」
Last Updated : 2024-10-10 Read more