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親友の裏切りーー愛と友情の境界線
親友の裏切りーー愛と友情の境界線
著者: 歳村

第1話

昼休み、親友の美香が会社に来た。

「夕子、仕事の話があるんだけど」といって、表情を引き締めて座ってる。

察して、すぐにスマホを取り出した。「いくらいる?」

美香は心理学専攻。就職できなくて起業した。

私にはお金の余裕があるし、起業の大変さも分かる。できるだけ助けてあげたい。

結局、唯一の友達だしね。

美香の顔が赤くなった。「違うの、お金借りたいんじゃなくて」

ちょっと驚いた。「じゃあ、何?」

仕事の接点なんてないのに、お金以外に何の用があるっていうの?

美香は深呼吸して、覚悟を決めたみたいに言った。「夕子、私が浮気撲滅屋をやってるの知ってるでしょ。この前、依頼が来たの。それが...あなたを追い出すって」

頭が真っ白になった。自分の耳を疑った。

私と啓介って、高校からずっと一緒で、結婚式まで歩んできたのよ。両家の親も友達も皆知ってる仲だし。私が浮気相手なんてありえない。

どうして私を追い出す依頼なんてあるの?

「ちょっと待って、何かの間違いじゃない?啓介と結婚して3年も経ってるのに、私が浮気相手?」

美香はじっと見つめて、急に事務的な口調になった。

「河野夕子さん。確かにあなたは佐藤啓介さんの正式な妻です。でも今、啓介さんには明らかに別の人がいる。なぜ手放さないの?」

信じられずに聞き返した。「じゃあ、啓介の浮気相手から依頼を受けて、私という正妻を追い出そうってこと?」

浮気撲滅屋っていうのは、文字通り浮気相手を追い出すはずでしょ。

それなのに浮気相手の依頼を受けて正妻の私を追い出す?

初めて美香の人間性を疑った。

美香は平然とした顔で頷いて、正義感たっぷりに言った。

「夕子、誤解しないで。普通なら浮気相手から正妻を追い出す依頼なんて受けないわ。でもあなたは私の友達だから、黙ってられなかったの」

頭の中がぐちゃぐちゃになって、スマホに手を伸ばした。「啓介に聞いてみる」

啓介があの鈍感な男で浮気なんてするわけない。

うちの研究所で働いてて、仕事か家にいるだけ。浮気する暇なんてないはず。

でも美香が急いでスマホを押さえた。「夕子、男が浮気を認めると思う?聞いたって無駄よ」

眉をひそめた。「じゃあ、どうすればいいっていうの?」

「離婚するしかないでしょ!」美香は断言した。

「こんな浮気男と話し合う余地なんてないわ!」

焦る美香を見つめて、しばらく黙ってから言った。「じゃあ教えて。浮気相手は誰?」

美香はきっぱり断った。「ダメ。依頼人のプライバシーは守らないと」

腹が立って失笑しってしまった。「浮気相手が誰かも教えない、啓介に確認もさせない。いきなり離婚しろって?そんなの正常じゃないでしょ?」

美香は当然のように頷いた。「当たり前よ。私はあなたの唯一の友達でしょ。あなたを傷つけるわけないじゃない」

美香を見つめて、心が沈んだ。

今まで美香が「唯一の友達」って切り出せば、何でも聞いてきた。

でも、それを理由に離婚を強いるなんて。

少し間を置いて、首を振った。「ごめん、できない」

美香はじっと見つめて、目に脅しの色が浮かんだ。

「河野夕子、あなたを自ら離婚させる、いや財産も全部放棄させる方法はいくらでもあるのよ。でも友達だからそんな手は使いたくないの、分かる?」

美香のやり方は知ってる。

役者を雇って追い出したい相手を誘惑し、親密な写真や動画を撮って脅す。それで目的を達成する。

まさか、私にそんなことをしようとは。

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