二人の友人は皆、雨宮凛が入江海斗を深く愛していることを知っている。彼のために自分の生活やプライベートをすべて犠牲にして、24時間彼のために尽くしているような状態だった。たとえ何度別れても、三日も経たずに必ず凛は戻ってきて、復縁を求めていた。誰もが「別れ」の言葉を簡単に口にできるが、彼女だけはそれを絶対にしなかった。海斗が新しい恋人を連れて部屋に入ってきた時、個室は一瞬、5秒ほど不気味な沈黙に包まれた。みかんをむく凛の手が一瞬止まった。「何でみんな黙ってるの?私なんか変かな?」「凛ちゃん……」友人が心配そうな目で見つめてきた。 海斗は何事もなかったかのように女性を抱きしめ、ソファに腰を下ろした。「誕生日おめでとう、悟」誰の目も気にせず、あからさまで堂々とした態度だった。凛は立ち上がった。今日は悟の誕生日だから、騒ぎを起こしたくなかった。「ちょっとトイレに行ってくるね」ドアを閉めると、部屋の中での会話が聞こえてきた。「海斗さん、凛さんがいるって伝えたんすよねどうして彼女を連れてきたんすか」「まったくだよ。海斗、今回はさすがにやりすぎだ」「気にするなよ」海斗は女性の腰を離し、タバコに火をつけた。立ち上る白い霧の中、彼は微笑みを浮かべる。その姿は、世間を遊び歩く放浪者のようだった。ドアが閉まり、残りの言葉は凛には聞こえなかった。凛は平静にトイレを済ませると、化粧を直しながら鏡に映る自分を見つめ、唇を引きつらせた。「本当に情けないわね」そう、自分の生き方が情けない。凛は深く息を吸い、心の中でひそかに決意を固めた。しかし、部屋に戻りドアを開けて目に飛び込んできた光景に、彼女はドアノブを握り締めながら、心の防壁が崩れるのを感じた。海斗は女性の唇に近づき、二人の間に挟まれたティッシュが唾液で濡れていた。みんなは大笑いし、囃し立てていた。「やるな!海斗は本当に遊び上手だ」「くっついた!くっついた!」「ここまで盛り上がったんだ、みんなにキスシーン見せてくれよ」凛は震える手でドアノブを握り締めた。これが彼女が6年間も愛してきた男だ。その瞬間、ただひたすら皮肉を感じた。「おい、もうやめろよ……」誰かが小声で注意し、入口を指さした。みんなの視線が一斉に凛に向けられた。
Last Updated : 2024-10-22 Read more