若子はそっと西也の手の甲に触れながら、優しく言った。 「信じてくれる?大丈夫よ、私はちゃんとここにいる。どんなことがあっても、ずっとあなたのそばにいるわ。あなたは絶対に一人にならない。だから心配しないで。私のためにも、そうしてくれる?」 若子の温かい声は、西也の心の奥深くまで届き、彼を穏やかな気持ちにさせた。 西也は安心したように頷き、静かに言った。「分かった。信じるよ。俺、待つから」 若子は柔らかく微笑み、「西也、さあ、ご飯が冷める前に食べて」と言った。 西也は素直に頷き、その後、二人は夕食を食べ終えた。 若子がテーブルを片付けたあと、西也のそばで過ごすことにした。二人で映画を二本続けて観ながら笑い合い、心地よい時間を共有した。そんな和やかな空気の中、西也はあくびをした。 「西也、眠くなった?」 西也は小さく頷き、「うん。でも、まだ洗面もしてないんだ」 若子は立ち上がりながら言った。「じゃあ、浴室まで手伝うわね」 若子は西也のベッドのそばまで行き、彼を慎重に支えながらベッドから立たせた。ゆっくりと浴室まで彼を案内し、歯ブラシに歯磨き粉をつけて準備を整えた。 「西也、男の看護師さんが手伝ってくれるから、私は少し外に出てるわね」 西也が洗面や入浴をする間、若子ができることはすべて手伝うつもりだった。しかし、入浴中に関しては彼女自身で手を貸すのではなく、専門の男性看護師を手配することにした。もし西也が何か尋ねてきた場合は、「最近疲れているから」と理由をつけるつもりだった。 しかし、西也は彼女に何も聞かず、黙ったままだった。若子が彼の体を洗うのを手伝わなくても、彼は何も言わず、静かに男の看護師に任せていた。 それは、彼が若子を気遣い、無理をさせたくないと思っていたからだった。 その姿勢に若子は胸が温かくなるのを感じた。たとえ記憶を失っていても、西也の優しさと気遣いは変わらなかった。 西也が浴室での支度を終え、ベッドに戻ると、若子は毛布を丁寧に掛け直した。 「西也、もう寝ていいわよ」 「うん。お前も早く休めよ」 「分かってるわ。西也が眠ったら私も寝るから」 西也は安心したように頷き、目を閉じた。そして、間もなく穏やかな寝息を立て始めた。 だが、若子にはまだ眠気が訪れなかった。少し気分転換に外
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