茜は手を伸ばし、それに気づいたホストが素早くタバコを差し出し、ライターで火をつけた。彼女は慣れた手つきでタバコを吸い、一息で煙を吐き出す。若子はその場の空気に圧倒され、居心地が悪そうにしていた。タバコと酒の匂いが充満しているのも耐えがたかったが、ここは茜たちが遊ぶ場所であり、自分が何かを言う立場ではないと思い、我慢することにした。「お酒もダメ、タバコもダメなら、どう?賭け事でもしてみない?チップなら私が出してあげるよ」茜はどこか飄々とした態度で言ったが、その仕草にはどこか迫力があった。「いえ、結構です」若子は断りながら、「賭け事もしません。ただ花に付き合ってきただけで、すぐに帰るつもりなんです」と付け加えた。その時、綺麗な女性が酒杯を片手にふらふらと近づいてきた。彼女は若子を見ると目を輝かせ、片手で若子を抱き寄せてきた。「ねえ、一人?初めて見たけど、可愛いじゃない」若子は慌てて体を引こうとしたが、「すみません、ちょっと......」と言いかけたところで、全身に衝撃が走った。「ちょ、何してるんですか!」「何って、見てわかるでしょ?」女性は挑発的な笑みを浮かべたまま言い返す。若子は怒りで顔が真っ赤になり、今にも声を荒げそうだったが、その時茜が声を上げた。「おいおい!」茜はその女性を指差しながら言った。「空気読めないにもほどがあるでしょ、どっか行って!」女性は唇を尖らせながら、不満げに「何よ、別にいいじゃない」とつぶやいて去っていった。若子は周囲を見渡しながら、また何かされるのではないかと怯えていた。茜は、真っ赤な顔をした若子をまるで子猫でも見るような目で眺め、楽しそうに笑った。「あの女のことは気にしないで。ただの酔っ払いの悪ふざけよ」若子はぎこちなく笑ってみせながら、「すみません、もう失礼します」と言った。この場所から一刻も早く立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。「そうしなさいよ」茜はあっけらかんと言った。「妊婦なんだからね。二次喫煙で何かあったら、私のせいにされても困るから」茜の態度には、何も気にしていないような無関心さが漂っていた。ただの投げやりでもなく、どこか達観したような雰囲気だ。若子は思った。茜は意外と悪い人ではない。ただ、豪快で遊び好きすぎるのだ。幼い頃から裕福な環境で育ち、何不自由
Last Updated : 2024-12-15 Read more