その後、弥生はトイレに寄って、気まずい空気を和らげようとした。 出て来ると、外の廊下で思いがけない人に出会った。 弥生は足を止めて、前に立っている悲しそうな少女を見つめた。実際にはよく知っている人ではなく、先週病院で一度会っただけだ。 それは麻由子の娘の古奈だ。 先週中絶に行った時、麻由子に出会った。もし娘さんのことでなければ、麻由子は自分のことが世間にバレていたかもしれない。 この女の子を見ると、弥生はあの日に病院で、彼女が麻由子に「彼が好きだ」と断固として言ったことを思い出した。 彼女は一人ではない。前に背が高くて痩せていて、格好いい男が立っている。 男は彼女の肩を掴んで、悲しそうに何かを懇願している。 「古奈、お願い、子供をおろしてくれない?まだ若いし、今学校を休んで子供を生むわけにはいかないよね?それに僕はまだ父親になる準備もできていないから、もう少し時間をくれない?子供は後で考えていい?」 近くに寄ってから、弥生は彼らの会話をはっきり聞くことができた。 古奈はその男を無言で見つめていた。 しかし、二人は自分のことに没頭していて、周りの人には気づく余裕がなかった 「でも前はそう言ってなかったじゃない。もしできたら結婚するって言ったんじゃなかったの?私のことが好きじゃないの?早く父親になるのもいいじゃない?」 「古奈のことは好きだけど、古奈のお父さんとお母さんは僕のこと好きじゃないだろう。だからまだ時間が必要なんだ。考えてみて、もし本当にこの子を生んだら、親は僕のことがもっと嫌いになるだろう。そしたら一緒にいることすらできないんじゃない?」 ここまで聞いて、古奈は動揺し、言葉に詰まったようだ。 あの痩せた男は彼女が動揺したのを見て、さらに力を入れて言った。「ほら、僕たちはまだ若いし、今後子供が欲しいならいつでもできるじゃない?前に僕のためなら何でもできるって言ってたじゃない?今回のことは僕のせいだけど、今回だけ、僕のために、いい?」 弥生は唇を噛んだ。 この男がこんなにクズだとは思わなかった。 彼のために何でもするというのは何?本当に厚かましい。 しかし、これはあくまでも他人事で、介入したくない。 自分のことは自分で解決しなければならない。 弥生は静かに二人のそばを通り過ぎて、
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