All Chapters of 冷酷社長の逆襲:財閥の前妻は高嶺の花: Chapter 421 - Chapter 430

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第421話

「一生の黒歴史だな......」 隼人は苦い笑みを浮かべながら、心の中でつぶやいた。 その時、内線電話が鳴り響いた。隼人はスピーカーモードに切り替えて答えた。 「どうした?」 「隼人社長、KS WORLDホテルの桜子様の秘書がいらっしゃっています。ご予約はないようですが、お帰りいただきますか?」 井上は「翔太が来た」と聞いた途端、まるで猫を見た犬のようにムスっとした表情で眉をしかめた。 「中に通せ」 隼人は冷静な声で命じた。 「えっ、本当に通すんですか?」 井上は信じられないという顔をしたが、隼人はそのまま口を閉ざし、視線を電話から外さなかった。 宮沢グループの社長と会うのは簡単なことではない。だが、翔太が桜子の部下であることを考慮し、隼人は特別に「その扉」を開いた。 数分後、翔太は冷たい表情でオフィスに足を踏み入れた。 「隼人社長、桜子様のご指示で、これをお届けに参りました」 そう言いながら、彼は白い箱を隼人の机にそっと置いた。 「中身は何だ?」隼人は箱をじっと見つめながら、顔を上げなかった。 「爆弾です」翔太は何の感情も込めずに答えた。 隼人は無言で視線を箱から移し、眉をわずかにひそめた。 「......」 「おい、それが面白いと思ってるのか?」 井上は翔太の発言にカチンときて、口調を荒げた。 「爆弾なんて本気で持って来れるわけないだろう!宮沢グループのセキュリティが甘いとでも思ってるのか?」 翔太は軽く笑みを浮かべた。 「だからこそ、隼人社長がこれを聞く必要はないんですよ。危険物でないのは当然です。桜子様がお送りしたものなのだから、黙って受け取ればいいだけの話です」 井上は悔しさに拳を握りしめながら心の中で叫んだ。 なんて嫌味なヤツだ!見た目だけはまともそうだが、口が本当に悪い! 隼人は疑問を抱きながらも箱を開けた。 中には、危険物など何も入っていなかった。ただの、犬の顔を模したかわいらしいクリームケーキが一つ――両方の要素を持ち合わせた「ブサカワ」なケーキだった。 その瞬間、隼人の口元がほんの少しだけ緩んだ。 「これ、桜子が手作りしたのか?」 隼人は平静を装いながらも、期待を滲ませた声で
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第422話

翌晩、ある高級ホテルのスイートルーム。 湿った汗と重なり合う体、熱気が部屋中に漂っていた。 「お兄ちゃん......すごい」 優花は日向社長の上で、声を震わせながら体を動かしていた。 「ベイビー......俺はこう呼ばれるのがたまらないんだ......もっと『お兄ちゃん』って呼んでくれよ......」 日向社長は下品な言葉を連ねながら、彼女の動きに応えるように腰を揺らしていた。 一方、優花の心は冷え切っており、頭の中ではただ「早く終わってくれ」と繰り返していた。 ニュース部の部長になるためなら、体を捧げることなど惜しくない。彼女はそう自分に言い聞かせていた。 二人が最高潮に達しようとしていたその時―― バタン! 突然、部屋のドアが勢いよく開いた! 「きゃあっ!」 優花は驚いて叫び、慌てて日向社長の体から飛び降り、ベッドの毛布にくるまった。 日向社長も慌てて床に落ちていた下着を拾い、急いで身につけた。そして、顔を上げると―― 「お、お、お前?」 日向社長の顔から血の気が引いた。 「そうよ、私よ。これがあんたが外で飼ってる『おもちゃ』?」 そこに立っていたのは、日向夫人だった。 彼女は身長175センチを超える体格で、筋肉質な腕はまるでプロレスラーのようだった。 日向夫人はコートを脱ぎ捨て、冷たい目で優花を上から下までじっくりと見下ろした。 「ふん、どんな美人かと思えば、これ?こんな『しなびた白菜』みたいなのを抱いて、あんた、頭おかしいんじゃないの?」 その口調には軽蔑がにじみ出ていた。 「ビッチなんて呼ぶ価値もないわ。ただの『トイレ』ね」 その言葉が終わるか終わらないうちに、日向夫人は優花の髪をがしっと掴み、ベッドから引きずり下ろした。そして、何も言わずに平手打ちを三発――その勢いで優花の口から血が滲み出た。 「痛いっ!助けて......日向社長、助けてください!」 優花は泣き叫びながら助けを求めた。 だが、日向社長はただ震えながら、まるで子犬のように小さく縮こまっているだけだった。 その時、日向夫人のアシスタントが屈強なボディーガードを連れて部屋に入ってきた。 「さあ、皆さん注目してください!こちらが噂
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第423話

優花が音声を再生した瞬間、幸吉の告白が耳に入ってきた。 「どれほど彼女にそそのかされ、KSホテルの企画案を盗むに至ったのか」――その一部始終が録音されていた。 ガシャーン! スマートフォンが床に落ち、乾いた音が響く。 優花の足から力が抜け、膝をついたままその場に崩れ落ちた。 心の中で「終わった」と冷たく囁く声が聞こえた。 深夜、白露の部屋では―― 白露はバスタブでの泡風呂を楽しんだ後、ドレッサーの前に座り、念入りにスキンケアをしていた。 あの日、優希が初露のために自分に最後通告をしてから、胸にはずっと重くのしかかる不安があった。 それ以来、どれだけ眠っても心が安らぐことはなかった。 「あんな馬鹿女のどこがいいのよ!」 鏡を見ながら、白露は口紅を手に取り、鏡に「初露」と書き殴った。 その上から大きな「×」印を描き、悔しそうに歯を食いしばった。 「今は手が離せないけど......この私が宮沢ホテルの社長になったら――」 その時、スマフォンが鳴った。 画面を見ると、昭子からの電話だった。 白露は一瞬眉をひそめたが、すぐに表情を作り直し、電話に出た。 「昭子ちゃん、こんな時間にどうしたの?」 「大変なことになったわよ!」 昭子の声は緊張感に満ちていた。 「さっき入った情報なんだけど、桜子が企画チームの内通者を捕まえて、警察に突き出したらしいの」 「はあっ?」 白露は驚きのあまり椅子から立ち上がった。 「それで、優花はどうなったの?」 「知らないの?優花が日向社長とホテルで浮気してるところを奥さんに現場で抑えられて、しかもその様子がライブ配信されちゃったのよ!服も着る暇がなくて、全世界に赤裸々に晒されたの!」 白露の頭の中で何かが弾けたような音がした。 ほんの一晩で、全てが変わってしまうなんて―― 「昭子、助言ありがとう!すぐに優花とのチャット履歴を全部消すわ!」 その時、もう一本の電話がかかってきた。 画面を見ると、白露の秘書からだった。 「ちょっと待ってね、昭子。電話が来たから一旦切るわ」 白露は昭子との通話を保留にし、秘書の電話を取った。 「どう?優花の状況は?」 「白露お嬢
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第424話

「翔太、このラフィをデキャンタージュしてきて」 桜子は眉を少し寄せながら、スマホを伏せた。 翔太は一瞬表情を曇らせた。 お嬢様が、自分に場を外すよう促していることが明らかだったからだ。 「翔太、何を考えているのか、だいたい分かるわ」 桜子は微笑みながら彼の肩に軽く手を置いた。 「私は隼人との結婚生活に失敗して、彼を嫌っているのは確かよ。でも、だからといって一生関わらないわけにもいかないの」 「これから盛京で足場を固めて、KSをさらに広げていくためには、彼と接触する機会も避けられない。来るものには応じ、去るものには送るだけよ」 「でも......桜子様......」 翔太の声には深い憂いが滲んでいた。 「何を怖がっているの?彼が私に何かするって?」 桜子は冷たく笑った。 「もし彼が私に手を出すようなことがあれば、兄が動くまでもなく、檎兄が音もなく彼を盛京から消してくれるわ」 違うんです...... 翔太は心の中で叫びたかった。 私はあなたを深く愛しています。あなたのためなら命を捧げても惜しくない。でも、私は......隼人に再びあなたの心が傾くのが怖いんです...... 翔太は深いため息をつき、渋々ワインボトルを手にして部屋を出た。 桜子は鳴り止まないスマホをしばらくじっと見つめていたが、やがて受話ボタンを押した。 その声には冷たさが滲んでいた。 「宮沢社長、一体何のご用件?」 「ケーキ、ありがとう。とても美味しかった」 隼人の低く、深みのある声が夜の静けさに溶け込んだ。 その声に桜子は少しだけ呼吸を整えた。 深夜の静寂の中、彼の声はまるで遠い記憶を呼び覚ますかのようだった。 かつての桜子は、隼人の声を聞きたくて、何度も電話をかけたものだ。 彼が冷たく対応するだけでも、彼女にとっては幸せだった。 だが今、桜子の心には波風一つ立たなかった。 彼女の自制心は強い。たとえ「恋の中毒」でも、きっぱり断ち切れるほどだ。 「どういたしまして」 桜子は冷たく言った。 「そのケーキを食べたことを忘れずに。次に余計なことをする前に、あの『いぬのかしらケーキ』が何を意味しているのか、思い出すことね」 「余
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第425話

桜子は眉間をきゅっと寄せた。 その言葉はまるで「納豆にアイスクリームをトッピングしたような」感じで、味わい深いというよりは、不可思議としか言いようがなかった。 空気が、一瞬にして静まり返る。 お互い、特に話すこともないようで、無言の時間が流れた。 しばらくして、隼人が小さく咳払いをして切り出した。 「......特に用事はない。ただ、それだけだ。おやすみ」 「ちょっと!隼人......」 桜子が返事をする間もなく、通話は切れてしまった。 「何なのよ、さっきのは......酔ってるの?何杯飲んだの?」 暗くなったスマホの画面を見つめ、桜子は首をかしげた。 一方その頃、通話を終えた隼人は、掌にびっしょり汗をかいていることに気づいた。 喉はカラカラで、心拍は乱れっぱなし。 目を閉じて深呼吸しながら、ぽつりと呟いた。 「我を去る者、昨日の日を留めず......我を乱す者、今日の日に悩み多し......」 優花は交通事故で意識不明の重体に陥った。 担当医によれば、植物状態のようなもので、回復の見込みはほぼゼロに近いという話だった。 「神様も私の味方をしてくれてるみたいね!」 白露はその報告を聞き、大げさなくらい安堵の表情を浮かべた。 もし、優花が意識を取り戻していたら...... 彼女が買収されて、KS WORLDの契約内容を漏洩した事実が自分にまで及ぶ可能性があったのだ。 だが、彼女という厄介事が片付いたからといって、自分の現状が好転するわけではない。 先日のAdaとの会談で、彼女は明確にこう言った。 「隼人が直接動かない限り、契約は結ばない」 その上、噂ではAdaのチームがすでに他のホテルと交渉を進めているという話まで耳にした。 「高城家や宮沢家でなくてもいい」と言わんばかりの態度だ。 その日の午後、白露は再び本田家を訪れた。 彼女がイライラとせわしなく動き回るのとは対照的に、昭子は優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいた。 「で、Adaの件はどうするの?」 「前に言ったでしょ?あの女、変な条件を突きつけてきたのよ。KSと宮沢家に『最高級のジュエリーを調達しろ』って。私の兄さんも何とかAlexaを引っ張り出そ
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第426話

桜子はここ数日、昼間は仕事をこなし、夜になると部屋にこもって手作りの誕生日プレゼントを準備していた。 それは、愛子への誕生日プレゼントである18K金、天然アクアマリン、ダイヤモンドを使ったリングだった。 その工芸技術は、トップジュエリーデザイナーである彼女にとって決して難しいものではなかったが、特にこのアクアマリンの品質が素晴らしかった。 サイズが大きく、純度も非常に高い。それはまさに世界中で一つだけと言っても過言ではないコレクション級の宝石で、市場で名の通った宝石に劣らないほどの価値を持つものだった。 家族へのプレゼントに関して、桜子は決して手を抜かない。いつも心を込めて選び、そして作る。 かつて、彼女が隼人に贈ったプレゼントも同様だった。 ただ、隼人という男は一度も彼女の気持ちを真剣に受け取ったことがなかっただけだ。 そのとき、机の上に置いていたスマートフォンにビデオ通話の通知が入った。画面に映し出されたのは、彼女が経営するジュエリー工房の責任者であるSlivaからだった。 「こんな時間にかけてくるなんて、何か報告があるんでしょう?」 桜子は宝石を丁寧に研磨しながら、視線を画面に移さずに聞いた。 「Alexa、Tylerを覚えてる?」とSlivaが切り出す。 「もちろん覚えてるわ。私の下で3年間徒弟をしてたけど、その後独立して自分の道を歩み始めた子でしょ?才能があるし、手先も器用だったわね。それがどうかした?」 「2日前にね、誰かが彼に接触して、あなたのジュエリーを模倣してほしいと頼んできたのよ。これ、怒らないほうが無理じゃない?」 Slivaは声を荒げて続けた。「あなたがまだ表舞台に戻らないと、このままだと市場にはAlexaの偽物が溢れ返ることになるわ!」 桜子は手を止めることなく、肩をすくめながら微笑む。 「別に怒ることなんてないわよ。私がすごすぎるから手に入れられない人が、偽物でちょっとした虚栄心を満たしたいだけでしょ?」 「Tylerはあなたに直接連絡がつかなくて、私に相談してきたの。彼、絶対にこの依頼は受けたくないって。それに、師匠の作品を偽造するなんて、まさに『畏敬の念を抱いてない』ようなことだからね!」 その言葉に、桜子はついクスッと笑った。長年一
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第427話

その夜、宮沢家は久々に全員集合し、毎月恒例の月見浜での食事会が開かれた。 一見すると和やかな雰囲気で、白露までが珍しく初露に飲み物を注いだり、料理を取り分けたりして、まるで仲の良い姉妹のように見えた。 初露は隼人の隣に座り、終始黙々と食べ続けた。余計なことを言って怒られるのが怖かったのだ。 しかし、彼女は引っ込み思案ながらも芯の強い性格をしていた。 白露が注いでくれた飲み物には一切口をつけず、取り分けられた料理も箸で端に寄せただけで、まったく食べなかった。 「父さん、今日は秦と相談した重要なことを話しに来ました」 光景は箸を置いて正座し、まるで貴族のような見事な食卓マナーを披露した。 「お前たち夫婦で決めたことなら、わざわざ私に言う必要はないだろう?」 裕也は目を伏せ、角煮を一口大に切っては頬張りながら言った。「秦がいれば何でも片付くだろう?これまでもそうやってやってきたんだ」 宮沢秦はぎこちない笑顔を浮かべ、目に一瞬、怨恨の光が宿った。 毎月、彼女にとって最も苦痛な時間がこの家族の食事会だった。裕也の嫌味に耐えなければならず、この場に臨む前日はいつも眠れなくなるほどだった。 この老いぼれ、早くあの世に行けばいいのに! 彼女は心の中で毒づいた。 光景は眉をしかめ、小さく咳払いをすると、宮沢秦の手をそっと握り締めた。 「父さん、白露も結婚適齢期ですし、そろそろ彼女の結婚について話を進める時期ではないかと思いまして」 白露は恥ずかしそうに唇を引き結び、頬をうっすら赤らめた。 「結婚だと?」 裕也は箸を止め、太い眉をひそめた。「白露はまだ二十五だぞ。こんなに若いのに、私はまだ孫娘たちを手元に置いておきたいんだ。お前は何をそんなに急いでいるんだ?」 光景:「......」 「それに、宮沢家の娘が嫁ぎ先に困ることなんてない。二十五だろうと五十二だろうと、うちの娘は花のように美しいんだ。欲しがる男はいくらでもいるさ!」 突然、裕也は光景を疑わしげに睨みつけた。「......まさか、グループの経営に何か問題があって、商業結婚で立て直そうとしてるんじゃないだろうな?」 「父さん、誤解です。グループは順調そのものですよ」 宮沢秦が笑顔を作り、夫をフォロー
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第428話

「初露、おじいちゃんと食事をしている時に、どうして箸を落とすの?本当に行儀が悪いわね!」 秦は冷たい表情で初露を叱りつけた。 「まあまあ、ただの箸くらいで子供を怒鳴らなくてもいいだろう?」 裕也が当然のように秦を咎めた。この孫娘のことを、彼は心の底から可愛がっているのだ。 秦はテーブルの下で拳を強く握りしめた。この老いぼれの前では、彼女は何をしても間違いと言われるのだ。息をするだけでも罪のように感じる。 「おじいちゃん、お父さん、お母さん......私、もう食べ終わりました」 初露は頬を真っ赤にし、俯きながら小さな声で言うと、慌てて席を立った。 隼人は妹の儚げな後ろ姿をじっと見つめ、目を細めながら何かを思案していた。 一方、白露の胸には勝利の喜びがあふれていた。 初露、あんたが家で静かにしていれば、こんな恥ずかしい思いをしなくて済んだのにね。 でも残念ね。私の男に手を出そうとするなんて、そんなの許すわけがないでしょ。 だから教えてあげるわ。本当のところ、誰が両親に愛される娘で、誰が本田家の優希にふさわしいかってことをね! 「でも、どうして優希なのか?」 裕也が目を細めて、少し不思議そうに言った。「優希は小春が好きなんじゃないのか?」 その瞬間、光景、秦、そして白露の顔色が一斉に青ざめた。 「............」 まるで部屋の中をカラスの群れが飛び去ったような沈黙が広がった。 ちょうど隼人がお茶を飲んでいる時だった。おじいちゃんの一言が胸に突き刺さり、隼人は思わずむせた。 彼は茶盞をぎゅっと握りしめ、その整った顔立ちはカラスよりも暗い表情になっていた。 「おじいちゃん、本田家の優希がどうして桜子なんかを好きになるんですか?」 白露は怒りで胸を膨らませながら言った。顔は真っ赤で、今にも爆発しそうだった。 「いやいや、優希は小春が好きだろう?おじいちゃんは年寄りだが、まだ目も耳もはっきりしてるぞ。前の誕生日の時、優希が来たのを覚えているが、小春にとても親切だったのを見たぞ」 「小春から目を離さず、まるで彼女のそばにいるのが当たり前のようだったな。あの二人が結婚すれば、きっと優希は小春を大切にして幸せな生活を送るんじゃないかと思ったくらい
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第429話

「へえ、そんなことがあったのか?」 裕也は顎を撫でながら、興味深そうに問いかけた。 「もちろんです、お父さん」 秦もすかさず口を挟む。「本田家の旦那様である優希さんが、どれほど立派な名家の御曹司かはご存じですよね?そんな方がわざわざ家を訪ねるなんて、普通ありえませんよ。彼が白露を訪ねたのは、心の中に白露がいる証拠です。時が経てば、人の気持ちは変わるものですし」 秦はさらに話を続ける。「それに、お父さんが桜子さんと優希さんをくっつけようとしているのはお分かりですが、私が聞いたところでは、桜子さんには新しい恋人がいるらしいですよ」 隼人はその言葉に目を細め、冷たく鋭い視線を秦に向けた。その瞳には抑えきれない怒りが宿っていた。 唇をぎゅっと引き結び、喉仏が上下に動く。彼はまるで込み上げる感情を無理に抑え込んでいるかのようだった。 「小春が恋人を作ったのか?一体誰だ?」 裕也は驚きのあまり声を上げた。 「それが、白石ループの会長である白石達也さんの末っ子、四男の隆一さんらしいです」 宮沢秦は即座に答えた。この情報は以前、柔から得たものだ。 後になって白露から桜子と隆一が何度か会っていると聞いたが、そんなことはどうでもいい。とにかく、裕也が桜子と優希を結びつけようとする考えを断ち切るのが目的だった。 「桜子と隆一が付き合っているなんてあり得ない」 隼人はついに堪忍袋の緒が切れたように、茶碗をテーブルに置き、低い声で言い放った。 「でも、二人が何度も会っているという話は聞きましたよ。バラ園に行ったり、コンサートに行ったり......」 「俺がないと言ったら、ない」 隼人の漆黒の瞳には怒りが渦巻き、その冷たい視線が秦に突き刺さるようだった。 「秦さん、今後は事実を確認せずに軽々しく口にしないでください。桜子さんは一人の女性です。それに、今や高城家のお嬢様で、KSホテルの部長を務める立場です。そんな根拠のない噂を流すことは、彼女の名誉を傷つけます」 秦は隼人の冷徹な指摘に言い返すことができず、唇を引きつらせて黙り込んだ。 「隼人!その口の利き方は何だ!目上の人に対して......」 光景が叱責を始めたが、隼人は冷たい空気を纏ったまま立ち上がった。 「もう食事
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第430話

白露が昭子から手に入れた偽物のAlexaジュエリーのネックレスが、思わぬ効果を発揮した!彼女がそのネックレスをAdaにこっそり渡した時、内心はドキドキで、不安でいっぱいだった。もしその場で偽物だとバレたら、社交界で大恥をかくかもしれないと恐れていたのだ。もっとも、バレた場合の言い訳も用意していた。「知り合いに騙されただけ」「ジュエリーには詳しくない」といった適当な嘘でごまかすつもりだった。だが、Alexaの弟子の技術があまりにも優れていたのか、Adaは偽物に全く気づくことなく、その場で嬉しそうにネックレスを首にかけ、「これ、素敵ね!」と大喜びで離そうとしなかった。その結果、Adaは白露と正式に契約を結んだ。それだけではなく、宮沢秦が夫である光景に娘を褒めちぎり、耳元で甘い言葉を吹き込んだおかげで、白露は破格の待遇で理事に抜擢されたのだ!これにより、彼女は宮沢グループの経営会議に正式に出席できるようになった。その夜、秦と白露はバルコニーでお祝いのシャンパンを開け、先に勝利の美酒を味わっていた。「白露、Adaの結婚式が無事に終われば、お父さんはホテルの運営を正式にあなたに任せるだろう。最初の一歩をしっかりと踏み出せば、そのうち取締役会にも入れるようになる。そうすれば、私たちはあの隼人を追い出せるわ」秦は娘をしっかりと抱きしめながら、目を輝かせた。まるで、自分が人生の新たな希望を抱きしめているかのようだった。「あなたの妹には期待できないからね。これからの私の人生は全部あなたにかかっているのよ!」「お母さん、安心して!私がしっかりと地位を築き、隼人の影響力を少しずつ削っていきます。最終的には、宮沢グループは私たちのものになります!」白露は目に輝く野心を宿し、笑顔で秦とグラスを合わせた。その時、外から高木の声が聞こえてきた。「奥様、白露お嬢様、先ほどどなたかが招待状を届けにいらっしゃいました」母娘は顔を見合わせ、バルコニーを後にした。「誰が持ってきたの?」白露が尋ねる。「KSWORLDホテルの部長秘書、翔太様です」KS?桜子が送ってきたの!「分かったわ。あなたはもう下がって」秦は招待状を受け取ると、ドアを閉めた。封筒を開けると、中には慈善ジュエリーオークションの招待状が二枚入っていた。秦は真っ赤な唇を
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