「じゃあ、聞いてみようか?」紗枝は冗談めかして言った。「ええ!もし雷七さんが一緒に配信してくれたら最高なのに!アカウント名も『景ちゃんの美人おばさま』に変えようと思ってるの」以前は身元を隠すために『景ちゃんママ』というアカウント名にしていたけど、もうその必要もない。景之のママである紗枝の素顔が明かされた今、次は自分の番だと唯は考えていた。景之も賛成していた。どうせこのアカウントは暇を持て余している唯おばさんのためのものなのだから。「雷七は絶対に断るわよ」紗枝は尋ねるまでもなく分かっていた。「そっか……」唯は少し肩を落とした。「ねぇ紗枝ちゃん、私たちが勝手にアカウント作っちゃって、怒ってない?」「もちろん怒ってないわ。でも、インフルエンサーとして活動するなら、安全面には気を付けてね。個人情報の開示は控えめにした方がいいわ」紗枝は子供たちや友人の成長の邪魔をしたくなかった。やりたいことがあるなら、むしろ応援したいと思っていた。「分かってるわ、安心して」唯は力強く頷いた。電話を切った後、紗枝は逸之の様子が気になり始めた。啓司が部屋に入って来た時、「逸ちゃんの幼稚園には保護者のLINEグループとかないの?」と尋ねた。「牧野に確認させよう」「ええ、お願い」啓司が電話をかけると、間もなく紗枝はグループに招待された。このクラスには、まだ正式な保護者会のグループは作られていないようだった。先生から逸之の幼稚園での様子を写真付きで報告してもらえることになり、紗枝は息子が予想以上に人気者になっていることを知った。「逸ちゃんのお母さん、ご心配なさらないでください。逸ちゃんは来た初日から、クラスの女の子たち全員と仲良くなってしまいましたよ」女の子たち、か……「男の子たちとは?」紗枝は少し心配になって尋ねた。「男の子たちも逸ちゃんのことが大好きですよ」紗枝は一安心したものの、監視カメラの映像をもう少し見てみると、先生の言う「男の子たちに好かれている」という意味が分かってきた。ある男の子が逸之と話をしている時の頬を染めた表情を見て、紗枝は妙な感覚に襲われた。突然、背後から啓司が顔を寄せてきた。「どうだ?」耳元に感じる熱い吐息に、紗枝はくすぐったさを覚えた。「先生は上手くやれてるって。監視カメ
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