大阪はすでに冬に入っていて、今回のハネムーンは温暖な場所に決めた。年末にはまだ少し時間があるため、こちらは観光シーズンではなかった。河崎来依が海辺に着いた時、あまり人はいなかった。それでも、彼女は楽しく遊ぶことに一切支障はなかった。せっかく来たのだから、目的が何であれ、美しい景色と美味しい食べ物は無駄にできない。「来依姉さん、先に着替えてて、僕は冷たいココナッツウォーターを買ってくるね」「うん」河崎来依は頷き、更衣室に向かった。着替えが終わった頃、誰かが入ってきたが、彼女は急いで衣類を整えていたので、誰が入ってきたのかはよく見ていなかった。しかし、その人が近づいてきた時、ほのかにジャスミンの香りがした。その香りは、菊池海人が近くに来るときにも感じたことがある。ただし、菊池海人の場合、そこには木の香りも混じっているが、目の前の香りはとても純粋だった。ジッパーを上げて、彼女はそのまま部屋を出て行った。誰にも一瞥をあげなかった。しかし、その人は彼女の前に立ちふさがった。「菊池家の背景は深いから、何の背景もない人が簡単に入れるわけじゃない。海人は今、あなたに興味があるだけで、ただの遊びに過ぎない。同じ女性だからこそ、あなたに忠告しに来た。今のうちに足を引っ込めた方がいい。それに、海人に対して、別の男性を使って欲しがらせるやり方は賢くないわよ」一楽晴美は終始穏やかに微笑んでいて、言葉も柔らかく、まるで何の攻撃力も感じさせなかった。まるで、本当に親切な人がわざわざ彼女を助けようとしているように見えた。だが、河崎来依は今まで生きてきて、何もかも自分の力で乗り越えてきた。これまで、たくさんの悪党や陰謀を見てきた。一楽晴美は一見、心配しているように見えるが、実際は脅しのようなものだった。「わざわざ忠告してくれて、礼を言わせるつもり?」河崎来依は微笑みながら、皮肉っぽく言った。「でも、お前がそんな時間があるなら、どうやって自分の身分を活用して、菊池家に入り込むか考えた方がいいんじゃない?私が入れないからって、お前が入れるわけじゃないんだから」一楽晴美の瞳に一瞬、冷たい光が閃ったが、表情は変わらなかった。服部鷹は簡単には騙されない。河崎来依が清水南の親友だということもあって、忠告をしてあげ
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