向こうはそれ以上何も言わず、電話を切った。予想外だったのは、私が洗面を終えて部屋を出たとき、おばあさんが慌てて外に出ようとしていた。「おばあさん、どこへ行くの?」私は彼女を呼び止めて近づくと、彼女の顔色がとても悪いことに気づいた。心配になって尋ねた。「どうした?どこか具合が悪い?」「病院に行かなきゃ」おばあさんは急ぎながら答え、靴を履き替えるのも忘れてドアを開けて出て行った。私は急いで追いかけた。「おばあさん!」服部鷹は最近忙しく、さらに藤原家も、いろいろと問題が発生する可能性があった。そのため、彼はボディーガードを私のそばに残していた。「一緒に行くから、落ち着いてください」私はボディーガードを呼び、おばあさんを支えて一緒に車に乗り込んだ。おばあさんは言った。「市立第一病院へ」私は先ほど受けた電話を思い出した。「おばあさん、もしかして病院から電話があって、藤原文雄が交通事故に遭ったって?」おばあさんは頷いた。「手術同意書にサインする人がいないって言われたから、とりあえず救命処置をお願いした」話しながら、彼女は困惑した様子で口を開いた。「南......助けなかったら、命がなくなるんだ」おばあさんはもともと体調があまり良くなく、以前の毒の件もあって、毒は完全に除去されたものの、こんな年だから、刺激を避けるべきだ。藤原文雄は愚か者だが、おばあさんにとっては唯一の息子で、十か月の妊娠期間を経て心を込めて育て上げた子供だった。本来、藤原家の財産は彼に渡されるはずだった。しかし、おばあさんは佐久間珠美が何か企んでいると考えていた。そしてそれは事実だった。藤原文雄は主体性がなく、佐久間珠美の言うことをすべて聞き、藤原家の財産が外部の人間に渡るだけでなく、おばあさんの老後生活も脅かされる可能性があった。ただ、私は藤原文雄とそれほど深い関係がなかったので、冷静に考えることができた。しかも、藤原文雄と佐久間珠美夫婦は、藤原家の財産を手に入れるためには手段を選ばず、おばあさんに毒を盛るようなことも何度も行ってきた。おばあさんを止めることはできなかったが、万が一に備える必要があった。【藤原文雄が事故に遭ったかも。おばあさんと市立第一病院に向かってる。終わったら来て】途中、服部鷹にメッセージを
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