ホーム / 恋愛 / 会社を辞めてから始まる社長との恋 / チャプター 951 - チャプター 957

会社を辞めてから始まる社長との恋 のすべてのチャプター: チャプター 951 - チャプター 957

957 チャプター

第951話

「佑樹くん、お母さんだよ」ご飯を食べていた入江佑樹は、携帯がポケットの中で振動しているのに気づいた。彼は携帯を取り出し、見覚えのない電話番号からのメッセージを見て、疑問に思いながらも開いた。メッセージの内容を読んで、彼は持っていた箸をパタっとテーブルに落とした。「どうしたの、佑樹くん?」その音に気づいた森川念江は尋ねた。佑樹は少し離れたところにいるボディーガードを見て首を振った。「ううん、ただのスパムメールだ」ただのスパムメールだったら佑樹はあんな反応を取るはずはなかった。念江は疑った。しかし、佑樹がきっと濁して教えてくれないというのを分かっていたので、念江は敢えて聞かなかった。「お母さんは……どうしてるの?」佑樹は小さな手を震わせながら母に返信した。佑樹からの返信をもらい、入江紀美子はやっと安心できた。「お母さんは大丈夫よ、そっちは?」「僕達は渡辺家にいて、携帯も返してくれたけど、前使ってた携帯はきっと全部監視プログラムを仕込まれているだろうから、こっそり新しいのに換えた」「分かった。用心に越したことはないわ。ところで、彼達に暴力を振るわれたりはしてない?」「うん、そんなことはないけど、沢山のボディーガードに監視されてる。お母さん……自殺とか、もうしないで……」紀美子は心が痛み、自分の愚行で子供達を悲しませてしまったことを後悔した。「ごめん。また心配をかけるなんて、お母さんがバカだった」「お母さんが無事でいることが分かったから安心した。僕と念江くんは瑠美おばちゃんにパソコンを用意して貰ってる。できるだけ早く塚原悟の犯罪の証拠を集めて、お母さんを助け出すから!」「この件は、そんなに簡単なことじゃないわ。くれぐれも慎重にね」もちろん彼は無暗に動くつもりはなかった。母が塚原悟に捕まっている今、絶対に慎重に動かなければならない。さらに母がそう言ってくるのを聞いて、反論できなかった。でないとまたお母さんに心配をかけさせてしまう。「分かった、お母さん。いつお母さんに会えるの?」「彼はお母さんを藤河別荘に連れ帰ると言ってるわ。佑樹くん、これから、隙をついてはあなたと念江くんの技術的支援が必要になるかも」佑樹は警戒しながら周りのボディーガードを眺めた。「何をやってほ
続きを読む

第952話

塚原悟はその分厚い書類を見て、眉を寄せた。まだ2日目にも関わらず、解約の申し込みが既に十数件も来ていた。森川晋太郎にこんなに沢山の忠実なパートナがいたとは!「今後はこういう書類は見せなくていい、そのまま違約金を請求しろ!」「彼達は弁償を断っています」杉本肇は悟に注意した。「しかも、彼達は逆に我々に賠償金を請求しています。如何せん彼達と契約を結んだのは晋……森川社長であり、あなたではありませんでしたので。契約期間内に断りなく株主を変更したため、彼達は如何なる違約弁償も拒否するとのことです」悟は書類を見て、目つきが段々冷たくなった。彼は書類を手に取り確認した。最初に目に入ってきたのは、田中グループからの契約中止の申込書だった。悟はあざ笑った。どうやらこの人達は、自分がこの座に着く資格はないと思っているようだ!帝都での地位を固めることは、そう簡単ではないようだ。悟は、このままこの反対が続くとMKが没落してしまうのではないかと考え始めた。おそらく彼には、帝都において相当な力を持つ女に頼る必要があるのだろう。帝都では、森川家、田中家そして渡辺家以外、あと4番目の地位を持つ加藤家がある。加藤家……そう考えながら、悟は段々と笑顔になった。どうやらそろそろ加藤家に協力する時が来たようだ。……3日後。悟は病院にいた。入江紀美子の退院を迎えにきたのだった。紀美子を車いすに座らせ、悟は後ろでゆっくりと押して病院を出た。病院の入り口には沢山のボディーガードが立っていて、その派手さで彼女は眩暈がしそうになった。悟が後ろにいなかったら、てっきり森川晋太郎が戻ってきたと勘違いするところだった。あの男も沢山のボディーガードを連れて出かけることが好きだった。紀美子は悔しさで心が痛み、ふと真っ青な空を見上げた。晋太郎、あなたは生きているの?こんな簡単に約束を破るなんて、子供達と私だけにこんな難局と対面させるつもりじゃないよね?紀美子を車の傍まで押していき、悟は手を伸ばし彼女を支えようとした。しかし目元が赤く染まった紀美子が目に入り、一瞬動きが止まった。「君はあの人のことを思っているのか?」悟は低い声で尋ねた。紀美子は唇を軽く噛んだ。彼女はまるで悟の話が聞こえなかっ
続きを読む

第953話

「それはいつのことですか?」入江紀美子は真っ青になった唇を動かして尋ねた。「もう大分前のことです。森川社長にできるだけ早く工事を完了させろと指示を受け、作業員たちに無理な工程を組んで作業してもらいました」紀美子は、ある日晋太郎に文句を言ったのを思い出した。確かその時自分は、「徹夜してまで工事を進めるなんて、一体どんな隣人さんでしょう」と言った。また、「この別荘の買主はきっと変わった性格をしてるからこんな無理な仕事をさせるんだ」とも言った。当時の晋太郎の顔色はどんなのだったっけ?なぜもっとちゃんと確かめなかったのだろう?そこまで考えると、彼女の目元からは涙がこぼれ落ちてきた。紀美子は拳を握りしめ、深呼吸をしてから震えた声で言った。「分かりました、ちゃんと残金を支払います。別荘の鍵をください」「ありがとうございます!」男は何度もお辞儀をした。「いいえ、礼には及びません」「私の携帯を返して」紀美子は塚原悟に言った。悟は目でボディーガードに指示して、携帯を持ってこさせた。紀美子は携帯で残金を支払い、男から別荘の鍵を受け取った。男が帰った後、紀美子は別荘の方を眺めて悟に頼んだ。「別荘の中を見回ってきたいの。時間をちょうだい」「分かった」紀美子は別荘に向かって歩いた。入り口には指紋認証のカギがかかっていた。彼女は手を伸ばし、迷わず自分の誕生日を入力した。「カチャッ」と、ドアのロックが解除された。紀美子は唇を噛みしめ、悲しい気持ちを無理に抑えながらドアを開いた。目に映ってきたのは、温もりのある内装スタイルの部屋だった。一階の部屋の壁は全部取り除かれ、大きなリビングとなっていた。リビングの隅には、入江ゆみが大好きなマスコットが置かれており、ソファと飾り物もちょうど良い所に置かれていた。彼女は脳裏で、ゆみが兄たちと手を繋いで遊んでいる光景を思い浮かべた。自分は晋太郎とソファに座っていて、暖かい目で子供達を見守るんだ。しかしその幸せなシーンは、今となってはもう夢の話だ。胸に強烈な陣痛が走り、紀美子は思わず胸を手で押さえ、ゆっくりと壁に寄りかかりながらしゃがみこんだ。彼女は唇を噛みしめたが、悲しみを抑えきれなかった。晋太郎……あなたは一体どこにいるの
続きを読む

第954話

入江紀美子は、視線をエリーのガーゼを包まれた左手に落とした。ガーゼには血がついていた。数秒経ってから、紀美子は視線を戻し、2階に上がろうとした。「紀美子」塚原悟は急に口を開いた。紀美子は足を止め、冷たい表情で悟の方へ振り返った。「これからエリーを別荘に駐在させ流。そしてもう一人の家政婦を雇って君の生活の世話をさせる」紀美子はあざ笑いをして、悟に言った。「私をいつまで監禁するつもり?」「監禁するつもりはない」悟は言った。「もし出かけたいなら、エリーに同行してもらえばいい」「監視じゃない?まさかあんたにこんな扱いされるとは」「違う、私はただ、君の安全を考えてそうしているのだ」「私を殺そうとした人に、そんなことを言う資格があるの?」紀美子はそう言うと、階段を上っていった。部屋に戻ると、懐かしい匂いがしてきた。それは森川晋太郎特有の雪松の香りだった。更衣室に入ると、晋太郎の服はまだずっしりとハンガーにかけられていた。紀美子は優しく晋太郎の服の上に手を置き、ゆっくりと掠めた。彼はいつか帰ってくる、そうよね?しばらくすると、紀美子は寝室を出た。真正面の寝室を眺めると、彼女の眼底には侘しさが浮かんだ。自分は露間朔也の最期を看取ってあげられなかった。明日に墓園に行って彼の墓参りをしよう。そう考えながら紀美子がドアを押し開けようとすると、階段の方から会話が聞こえた。「影山さん、既に手配済みです。明日加藤さんが警察署から釈放されます」ボディーガードの話は紀美子を驚かせた。自分の勘違いでなければ、ボディーガードが今言っていた「加藤さん」は、加藤藍子のことだ!悟が藍子を釈放させるつもり?一体なぜ?佳世子は彼を害するようなことをなど一切していないのに、彼女まで傷つけるつもり?紀美子は我慢できず、怒りを抑えながら1階に降りようとした。しかし階段を降り始めたところで、誰かが上ってくる音がした。2階に上がろうとしているエリーを見て、紀美子は冷たい声で言った。「ここはあなたが上がっていい場所じゃない!」エリーは冷たい目つきを浮かべ、紀美子に近づいてきた。「さっきボディーガードの話が聞こえたんでしょ?」「だったら何?」紀美子は直ちに聞き返した。
続きを読む

第955話

入江紀美子が1階に降りると、塚原悟は別荘を出ようとしていた。「待って」彼女は悟を呼び止めた。悟は脚を止め、彼女の方に振り向いた。「どうした?」悟は俊美な眉を上げて尋ねた。紀美子は一瞬動揺した。まるで彼はまだあの悟で、何でも話せる親友のようだった。しかし今まで起きた一連の出来事も事実だった。「なぜ加藤藍子を助けるの?」「紀美子、私にはやりたいことがあるんだ」悟は彼女に面と向かって言った。「藍子は佳世子を陥れた犯人よ!これ以上佳世子を苦しめるつもり?」「紀美子」悟は落ち着いた顔で言った。「私は他の人の気持ちまで構っていられない。利用できる価値のある人は助けねばならない」「つまり、あんたが生かしてくれたのは、私にまだ利用する価値があるから?」悟の目つきがやや暗くなった。その質問に対して、彼自身もどう答えたらいいかよく分からなかった。紀美子に答えられなかった彼は、振り向いて別荘を出た。部屋に戻った紀美子は、先ほどのことを田中晴に教えた。紀美子の話を聞き、晴の怒りは爆発した。彼が無意識に彼女の電話番号をかけようとすると、隣にいる鈴木隆一に抑えられた。「お前、正気か?紀美子に電話をするなんて!」隆一は焦った声で彼を止めた。「俺は今すぐ彼女にどうなっているかを聞きたい!藍子を釈放させる訳にはいかない!絶対にだ!」「お前が反対するからって、あいつが聞いてくれるわけがない!」隆一は続けて言った。「そう簡単に藍子を助け出せるとは、ヤツは刑務所にもとんでもないコネを持ってるに違いない!もし本当に藍子を助け出させたくないなら、前晋太郎に言われた通りにしろ!」「うちの両親に助けを求める?」晴は驚いて隆一に確かめた。隆一は頷いた。「まだ藍子が釈放されていないうちに、今すぐお前の父に頼むのだ」「彼達がやってくれるとは限らない!」晴は歯を食いしばった。「試さないと分からないだろ?行こう、俺がついて行ってやる。応援してやるから!」晴は暫く黙ってから頷いた。午後2時。晴と隆一は田中家に着いた。家に入ると、外から帰ってきたばかりの晴の父に会った。晴の父は彼らを見て、ため息をついて尋ねた。「晋太郎の消息はまだ掴めないのか?」晴は頷いた。
続きを読む

第956話

「自分が何を言っているか分かってるのか?」晴の父の顔色は急に険しくなった。「俺は本気で言っている!」晴は真顔で答えた。「俺と一緒にならなかったら、佳世子はあんな風にならずに済んだ!誰がどう言おうと、彼女を手放すつもりはない!」「このまま意地を張ったら、どうなるか分かってるのか?」晴の父は厳しい声で尋ねた。「分かっていなかったら、今日こんな相談をしにくることはなかった!」晴は答えた。「女一人の為に、健康な体が薬漬けに成り下がってもいいのか?」「本当に愛し合っていたら、苦難派ともに乗り越えるものだ!」晴は真剣に言った。「たとえお前がそう考えているとしても、相手は分からないだろ?」そう言われると、晴は黙り込んだ。そして、彼はあざ笑いをした。「佳世子がどう思っているとしても、俺は彼女を裏切らない!」晴は言った。「彼女は俺の元に戻ってきたくないと言っているが、俺はこんなことで彼女を手放すつもりはない!」「だからお前は愛と言う名の鎖で彼女を束縛し、彼女を一生苦しめるつもりか?」その話を聞いて、隣の鈴木隆一は驚いた。晴の父の言い分に、反論の余地はなかった。とても理にかなっているように聞こえる!隆一は心配して晴を見た。もう終わりだ……「晴、彼女は家を出て随分経っているよな?」晴の父は持っている茶碗を置いて尋ねた。晴は何も言わなかった。「彼女の勇気と決心は認める。たとえお前のせいで彼女が加藤藍子に陥れたのだとしても、彼女にはお前を道連れにする考えがなかったと言うことだ。それならお前も彼女の意見を尊重すべきだ、違うか?」「俺は今日、藍子のことだけを相談しにきたんだ!」晴は両手に拳を握りしめ、話を逸らそうとした。「加藤家に刃向かうつもりか?」晴の父は尋ねた。「お前、加藤家の帝都での地位を知らないのか?」「知ってる!」晴は答えた。「地位が高いからって、犯人を野放しにするのを黙ってみろというのか?」「お前はその女の為に田中家を巻き込むつもりか?」晴の父の顔は真っ青になった。「どうやらあんたたちには、助けてくれる気がないんだな?」晴はがっかりして言った。「俺は、何を優先すべきかが分からないほど老いぼれてはいない!」「分かった」晴
続きを読む

第957話

「もし加藤家が塚原のヤツを助けようとしたら、絶対に放ってはおけない!」田中晴は叫んだ。「本当にそうなったら、きっとお前は手を出せないよ」鈴木隆一はため息をついた。「どういう意味だ?」「放っておけないと言ったが、お前は一体どうするつもりだ?」隆一は聞き返した。「彼らが塚原と手を組むなら、俺は加藤家が100年かけて守ってきた加藤家の名を潰してやる!」晴は答えた。「覚えてるか?俺たちはまだ、藍子の汚い裏の顔をメディアにばらしていない!」「無駄だ。それくらいで加藤家が動揺するはずがない」「なぜそう言い切れるんだ?」晴は焦った。「藍子は加藤家の人間だぞ!」「お前、忘れてないか?藍子が警察に連れていかれる前、加藤家と縁を切ると言ってたじゃないか。そうなると、お前がその事実を公表しても加藤家には何の影響もないだろう」「でも塚原はどうやって加藤家を利用して地位を固めるんだ?」「メンツだよ」隆一はそう言うと表情を暗くした。「つまり、たとえ藍子が加藤家と関係を断っても、加藤家の顔に免じて塚原の面子を立てる人もいる、ということか?」「そういうことだ」隆一は頷いた。「なんと言っても、藍子は彼らが一番可愛がっていた子さ!血は水よりも濃い!彼らが塚原の肩を持てば、塚原も自然的に藍子を支援してくれるだろうからな」そこまで言うと、2人は目を合わせた。「まさか!悟は政略結婚を考えているのか?」2人は同時に言った。「最悪、藍子は塚原の力を借りてお前に手を出すかもしれない!」隆一は少し震えた。「俺が彼女に手を出す前に彼女が何か手を打ってくるとでも?」晴は怒りで目を大きくい開いた。「可能性はゼロではない」隆一は冷静に言った。「お前は藍子にあんなに薄情な態度をとったからな。彼女は仕返しをしてくるだろう」そこまで聞くと、晴はまるで喉に綿を詰められたかのように、息が苦しくなった。「佳世子にいうかどうかを決める前に、まずは藍子をどうするかを考えるべきだ」隆一は言った。「彼女が塚原と結託した後はきっと、塚原は自分の地位を固める為に、絶対真っ先に田中家を潰しにくる!」「それがうちとどんな関係があるんだ?」晴は怒ってきた。「うちの両親は、藍子に親切だったじゃないか」
続きを読む
前へ
1
...
919293949596
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status