その女性のカウンセラーはもう少しで入江ゆみが霊を見たと言い出すところだった。森川晋太郎は心配そうにもう一度手に持っている絵を見た。クズ共が!子供一人すら治せないなんて!彼は怒りを抑えきれず、その絵を力ずくで丸め、リビングに向かった。後ろのドアから入る瞬間、ゆみの声が聞こえてきた。「お香?」ゆみは不思議に尋ねた。「お香って何?ロウソクなら知ってるけど」そしてゆみは続けて言った。「あっ、知ってる、ゆみはわかるよ。でもこれをどうやって食べるの?何言ってるか分からないよ。でもお兄ちゃんからお金を貰って買ってあげることはできるよ。お墓?!やだ、ゆみはそんな怖いとこ行きたくない!」ゆみの話を聞いて、晋太郎はその場に立って動けなくなった。娘が独り言を言う姿を見て、彼はますます悪い予感がしてきた。脳裏に女性カウンセラーの話が繰り返して響いた。暫く眺めたあと、晋太郎は険しい顔でゆみに近づいた。彼が近づいてくるのを見て、その女性の霊は少し遠くに飛んでいった。ゆみはその霊を見て、そしてまた晋太郎を見た。「この子を驚かせないで!あんなに遠く飛んで行っちゃった……」晋太郎は娘の視線を辿ってみたが、何も見えなかった。彼は拳をきつく握った。「ゆみ、本当のことを教えてくれ、その『子』とは誰のことだ?」「彼女、名前は『絹江』だと言ってた……」ゆみは呆然とした表情で晋太郎を見て答えた。「その『絹江』はどんな顔をしている?」「とてもお肌が白いの!」ゆみはすぐに答えた。「まるで紙のように白い!」「彼女は何を欲しがっている?」「お香!あと、ロウソク!お腹が空いたって!」ゆみはそう言っていると、急に何かを思い出したかのように、御守を取り出した。「彼女はこれが怖いから、私に近づけないと言ってる」その御守を見て、晋太郎は脳裏であの墓守の姿を思い浮かべた。まさか、この世の中に本当に霊が存在するのか。その事実は彼の認識を遥かに超えていた!晋太郎は長らくゆみの御守を見つめ、そして視線を戻した。「ゆみ、2階で兄たちと遊んでおいて」「分かった」ゆみは立ち上がり2階に上がった。娘が行ってから、晋太郎は再び先ほどゆみが見つめていた方向を眺めた。彼は曇った顔で携帯
Last Updated : 2024-12-15 Read more