飛行機は順調に飛行し、桃は雅彦の肩に寄りかかりながらゆっくりと夢の世界へと入っていった。彼女の呼吸が次第に静かになったのを見て、雅彦は客室乗務員の人に毛布を持ってきてもらって、桃の体にかけた。数時間後、飛行機が降下を始める時、雅彦は静かに桃の肩を軽く押した。「桃、起きて」桃はゆっくりと目を開け、まだ少し眠たそうだった。「もう着いたの?」寝起きだったためか、桃の声はいつもより柔らかく、まるで甘えているように聞こえ、雅彦の心は少しだけ和らいだ。「うん、もうすぐ着くよ」雅彦は静かに言った。桃はうなずき、座り直したが、ふと自分がぐっすり寝ていたことに気づき、雅彦の肩にしっかりと口紅の跡を残していたことに驚いた。桃はすぐに恥ずかしさが込み上げてきた。ずっと寝ていた自分に、この男は一度も動かずに肩を貸してくれただろうから、肩が痛くなっているだろう。「なんで早く起こしてくれなかったの?ちょっと寝るだけでよかったのに。ごめんね、服を汚しちゃって」桃の言葉を聞いた雅彦は、にっこりと微笑んだ。「大丈夫だよ。君が寝ている間に枕になれたことは、俺にとって名誉だよ」雅彦の真剣な顔を見て、桃の心の中の申し訳なさは少し軽くなった。彼女は視線を逸らし、もう彼を見ないようにした。雅彦は無理に追及せず、桃の手を握った。「もうすぐ空港に人が迎えに来るよ。ここからさらに二時間、車で小さな町に向かうことになる」桃はうなずいた。さらにしばらくして、飛行機は空港に着陸した。桃は雅彦の指示通り、素直に彼の後ろを歩いた。空港を出ると、そこには目立たないジープが停まっていた。その車は、雅彦が普段好むようなものとは全く違っていて、灰色で、おそらく目立たないようにしているのだろう。雅彦が現れると、その人物は手を振って彼らに挨拶した。雅彦はすぐに桃を連れて歩き、車に乗り込んだ後、流暢に外国語でその人物と会話を始めた。桃はその言語にあまり詳しくなく、静かに座っているだけで、何も尋ねなかった。しばらくして、雅彦が彼女に説明を始めた。「この人は、海が現地で見つけた傭兵で、普段からセキュリティの仕事をしていて、国のさまざまな地域についても詳しいんだ。俺たちがこの地で迷子になったり、トラブルを起こしたりしないようにするためだよ。それに、退役軍人で腕もいいから
Read More