共有

第0402話

「このドレス……」綿は目の前の白いドレスを指さした。

オフィスのドアの前で、綿は突然聞き覚えのある声を耳にした。「実は外のあの白いドレス、私も結構気に入ってるのよ。時間がないなら、あのドレスも悪くないわ」

「じゃあこれに……」

話している間に、その人がオフィスから出てきた。

綿が顔を上げると、その人と目が合い、驚いた表情をしていた。

「綿?」

綿は目を細め、目の前にいるのが嬌であることに気づいた。

まったく、こんなところでまた嬌に会うなんて、まさに縁というか、狭い世界だ。

嬌は眉を上げ、ふと笑みを浮かべた。

綿、今このタイミングでドレスを選んでいるのって…「もしかしてクルーズパーティーのため?」

綿は唇を引き結び、平静な口調で答えた。「うん」

「なんて偶然!私も行くのよ」嬌は目を細め、とても美しく微笑んだ。

綿はうなずいたが、驚くことはなかった。

さすがにお金持ちの娯楽だ。四大家族の一つ、陸川家の最も愛されている娘が来ないわけがない。

「でも、私は明くん様と一緒に行くのよ。私は彼の同伴者なんだから」嬌は口元を上げ、少し自慢げな様子だった。

綿は眉を上げ、意に介さず、店員に目を向けた。「このドレス、試着したいんです」

「綿、あんたもこのドレスが気に入ったの?」嬌はすぐに目の前に掛かっている白いドレスに目を向けた。

綿は笑った。「あなたも気に入ったの?」

「綿、私たちの趣味って本当にいつも同じね……」嬌はドレスを見つめ、ため息をついた。

学歴から男性、最後にはドレスまで、まったく一緒だ。

「そうね」綿も感慨深げに言った。「気に入ったのなら、譲るわ」

このドレスだけじゃなく、嬌が気に入るものは何でも、綿は譲ってあげても構わなかった。

結局、本当の強者は人生の些細な障害なんて気にしないものだ。

「綿、あんたったら。まるで私があんたの大事なものを奪っているかのような言い方じゃない!」嬌は顎を上げ、そのドレスを見つめながら淡々と言った。「あんたが好きなら、私は争わないわ。何度も勝つのも、実際にはあまり面白くないもの」

綿はそれを聞いて、心の中で大きなため息をついた。

彼女が勝ったものって何?輝明を勝ち取ったことだけじゃないか?

「私はダーリンさんにオーダーメイドしてもらったわ」嬌は微笑み、「最近、ダーリンさんは休暇中でオーダー
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status