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第0345話

綿は改めて秀美の威厳を実感した。

秀美は嫌いな人に対してはいつもこんなふうに厳しく、容赦しないのだ。

そしてそれは、嬌が高杉家に入ることがどれほど難しいかを示していた。

嬌は長年経っても、高杉家の誰にも好かれておらず、むしろ彼らの間で彼女への反感が募っていた。

嬌はうつむき、小さな声で言った。「伯母様、あたしのこと、どうして気に入らないんですか?どうしてあたしばかりを責めるんですか?」

秀美が答える前に、嬌はさらに悲しそうに言った。「ただ、明くんを愛しているだけです。それが悪いんですか?今、明くんは独身で、あたしも独身です。あたしには彼を追いかける権利がないんですか?」

「それに……」嬌はここで秀美を見上げたが、綿の姿に気づいて言葉を飲み込んだ。

「それに何?」秀美は冷静に、続けるように促した。

だが、嬌は黙り込んでしまった。

「お母さん、もう嬌ちゃんを困らせないで。彼女を帰らせてくれ」輝明の声は穏やかだった。

嬌は彼を見つめ、切なげに言った。「明くん、あなたも帰れって言うの?」

「君がここにいるのは確かに都合が悪いんだ。今日は帰ってくれ」輝明は静かに言った。

「綿がいるから、都合が悪いなの?」嬌は傷ついたように聞き返した。

綿はそのやりとりを見ながら頭を抱えた。本当にこの騒動には関わりたくなかった。

輝明が嬌を帰らせるのは、自分がいるからではなく、ただ彼女と秀美の対立を避けたいからだろう。

片方は彼の「女神」、もう片方は彼の母親。どちらを守るか迷っているのだ。

「嬌」輝明は彼女の名を呼び、その声には苛立ちが含まれていた。

嬌は、彼が病気で不調なこともあり、これ以上彼に嫌われたくはなかった。

結局、彼女は涙をこらえて「分かったわ、帰るわ。でも、明日……」と言いながら、秀美に視線を投げた。

「明日、また来るね」最後にそう言った。

秀美は黙って彼女を睨んだが、何も言わなかった。

嬌が部屋を出ようとしたとき、秀美は「私が送っていくわ」と言った。

嬌は嫌な予感がした。

輝明は数秒黙り、「お母さん、やりすぎないでくれ」と静かに言った。

秀美は彼を一瞥してから、嬌と共に病室を出て行った。

部屋は静かになった。

綿も出て行こうとしたとき、輝明が問いかけた。「あの時、どういう意味で『清算』って言ったんだ?」

彼女が最後に言った言
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