第36章 向井蒼真との繋がりのために

その時、警察がホールに現れ、逮捕する容疑者の位置を確認した後、近づいてきた。

「安田遥、佐藤若菜、警察署までご同行願います」

小泉由香里は連れて行かれるのを見て、急いで前に出て止めようとしたが、スカートの裾を踏んで転んで頭を打ち、そのまま気を失ってしまった。

警察は安田遥と佐藤若菜を連行し、安田翔平は気絶した小泉由香里を支えてその場を離れた。

一連の騒動はこれで終わりを告げた。

宴会の出席者がほとんど帰ったのを見て、三井陽翔は三井鈴をホールの中心に連れて行き、彼女を紹介し始めた。

「皆さん、こんにちは。三井鈴さんは安田家の社長秘書を辞職し、現在は私の帝盛グループ浜白支社のゼネラルマネージャーを務めています。今後、皆さんと協力する機会があることを願っています」

その言葉が終わると、会場の人々は互いに低い声で話し始めた。

「この三井さん、本当に昇進が早いね。安田家を辞めたばかりで、すぐに帝盛の支社に行ったんだ。彼女と三井会長は一体どんな関係なんだろう？」

「同じ三井の姓だけど、親戚関係ではないと思うよ。もし親戚だったら、どうして三井家のお嬢様がわざわざ浜白に嫁いで秘書なんかするんだ？それも三年間も」

「とにかく、彼女が安田家での三年間は本当に辛かったと思うよ。たとえ本当に婚内不倫があったとしても、仕方ないかもしれない」

……

三井陽翔が後ろ盾となり、さらに安田家の人々が宴会で自らの短所を曝け出したことで、ホットニュースによる負の影響は完全に相殺された。

会場の出席者全員が三井鈴に接触のオリーブの枝を投げかけ、一晩で三井鈴はこれまで接触できなかった新しい有力者たちと知り合うことができた。例えば、啓航グループの若社長、向井蒼真だ。

向井蒼真はワイングラスを揺らしながら三井鈴に近づいてきた。「三井さん、こんにちは。お名前はかねてより存じ上げております。私は向井蒼真です」

三井鈴は微笑み、同じくグラスを持ち上げて示した。「向井社長、こんにちは」

帝盛の医療研究開発プロジェクトはまもなく量産に入る予定で、信頼できるパートナーを探しているところであり、啓航グループは彼女の第一選択肢であった。

今夜、安田遥と佐藤若菜を法の裁きにかけることは二次的な重要事項に過ぎず、ここに来た最も根本的な目的は向井蒼真との繋がりを築き、支社の利益を最大化することだった