第292話 鉱山視察

午後。豊勢グループの責任者、真一が早めにホテルの前で待っていた。三井鈴を見ると、丁寧に挨拶した。「三井さん、豊勢グループの責任者森川真一です。こちらが私の名刺です。三井さん、京東へようこそ。豊勢グループを選んでくれてありがとう」

三井鈴は軽く頷いて名刺を受け取った。熱々の金色の名刺には「真一」一文字が書かれていた。「森川さん、ずっとお会いしたかった！」

「いやいや、三井さんこそありがとう」真一は礼を示し、「三井さん、田中さん！乗りましょう！」と言って、三井鈴と田中仁を車に乗せた。車は道を進みながら、真一が京東の風景や文化を熱心に紹介した。鉱場に到着すると、真一はまだ興奮気味に言った。「京東は小さいけど、鉱業、農業、畜産業が盛んなんだ。今日はまず鉱山を見学して、後で農場にも行こう」

「それじゃあ、森川さんにお任せだね」三井鈴はそう言って田中仁と車を降りた。周りは荒れ果てていて、高い鉱山が積み上がっているだけだった。

鉱山では、工員たちが忙しく働いていて、地下から出てくる工員もいた。真一は安全帽を渡しながら、「三井さん、鉱山は危ないから気をつけて」と言った。そして田中仁にも安全帽を渡した。「田中さん、三井さん、1号炭鉱から行こう」真一は二人を連れて鉱山に入っていった。途中、真一は各炭鉱の仕組みを熱心に説明した。

三井鈴は初めて鉱山労働者の大変さを実感した。特に炭を掘る工員たちは顔が黒く、目は輝いていて、全身汚れているのに、背中に炭を背負って階段を一歩一歩登ってきた。「彼らは一日にどれくらい働いてるの？」と三井鈴が尋ねた。

真一は急いで答えた。「一線の炭鉱労働者は本当に大変で、1日に12時間以上働くこともある。でも、働いた分だけ収入も増えるし、結構な額だ。ただ、炭鉱には不確定な要素が多くて、地上よりも危険度が高い。だから、炭鉱に下りる工員は家庭の基盤が弱くて、もっと稼ぎたいから選ぶんだ」

底辺の人々の生活はそんなに華やかじゃない。三井鈴はその瞬間、深く理解した。

「三井さん、田中さん、前に休憩室があるから、そこでお茶でも飲んで休もう」

三井鈴の気分はあまり良くなかった。田中仁が彼女の肩を抱き寄せて小声で聞いた。「何考えてるの？」

三井鈴は気を取り直して軽く首を振った。「別に、ただこれらの鉱山労働者が大変だって思っただけ。生活のために頑張ってるんだし」