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第7話

一週間後、新しい家の片づけに忙しくしていた私の耳に、テレビのニュースが流れてきた。

「本日、市内で行われたピアノコンクールの会場にて、悪質な傷害事件が発生しました。ある男性が選手の赤楚氏の演奏終了後、突然舞台に駆け上がり、赤楚氏とその母親にガソリンを浴びせ、火を放ちました......」

画面には火の手が上がり、人々の悲鳴が響きわたる中、観客が四方へと散り逃げていく様子が映し出されている。

ニュースの映像は続き、キャスターの声が痛ましく響いた。「被害者の二名は重度の火傷を負い、救急措置の甲斐なく死亡しましたが、現場の観客に負傷者はいません。加害男性は重度の火傷を負っており、現在警察により身柄が拘束されています......」

画面に映るのは、間違いなく陸川一航と温井恵、そして赤楚司だ。

だが、私はそのニュースを聞いても何の感情も湧いてこなかった。ただ、自分とは無関係の話を眺めているような気持ちだ。

それから一月後、刑務所から電話がかかってきた。

「大江花子さんでいらっしゃいますか?陸川一航が死刑執行前にあなたと面会を希望していますが、ご来訪いただけますか?」

私はしばらく無言で受話器を握りしめていた。

結局、私は面会を了承した。

冷たい鉄格子越しに陸川一航と向き合うと、彼は全身に包帯を巻かれ、見る影もなく憔悴していた。かつての自信に満ちた面影など、どこにもない。

「花子......やっと来てくれた......」陸川一航は私を見て、濁った目に一瞬光を宿したが、痛みに顔を歪ませながら、必死にこちらに寄ろうとした。

私は無意識に一歩後退し、その瞬間、彼の目の光が再び消えていった。

「呼んだのは、何が言いたいの?」私は冷ややかに見つめ、抑揚のない声で言った。

「花子......ごめん......豊に......申し訳ないことを......」陸川一航は途切れ途切れに語り、声はほとんど聞き取れないほど弱々しかった。

「今さらそんなことを言って、何の意味があるの?」私は冷たい表情で彼を見据えた。

「俺は豊ために復讐したんだ。だから、彼も......許してくれるんじゃないか......?」陸川一航は苦しそうに呟き、祈るような目で私を見つめた。

信じられない思いで、私は目を見開いた。「その言葉はどういう意味?豊ちゃんを死なせたのは、他でもないあなただった
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