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第6話

陸川一航は震える手で熊のぬいぐるみを拾い上げ、再生ボタンを押した。

画面には、涙をぬぐう赤楚司の姿が映し出されている。「僕のピアノの発表会が、陸川豊のサッカーの試合と同じ日なんだ。陸川おじさんは陸川豊の試合を見に行くって言ってるし、どうしよう......」

「バカね」温井恵は赤楚司の頭を撫で、ウインクしながら言った。「陸川豊が怪我でもして試合に出られなければ、陸川おじさんはあなたの発表会に来てくれるわ」

「でも......でも......」赤楚司は少しためらっているようだった。

「赤楚司」温井恵の声は低くなり、「あなた、陸川おじさんがパパになってほしいんでしょ?」

「うん!なってほしい!」赤楚司はうれしそうに顔を輝かせた。

「それなら、ママの言うとおりにするのよ」

赤楚司は慌てて頷いた。温井恵は花火を取り出し、彼に手渡す。「これを持って陸川豊のところへ行って、一緒に遊ぼうって言うのよ。必ず倉庫で遊ぶの、いいわね?」

赤楚司は花火を受け取り、すぐに駆け出した。

画面が切り替わると、赤楚司が陸川豊の手を引いて倉庫に入り、得意げに花火を見せながら言った。「陸川豊、僕たち一緒に遊ぼう!」

陸川豊は彼の手を押さえた。「待って、ここは危ないよ。中庭に行こう」

「大丈夫だって!」赤楚司はすばやく花火に火をつけ、陸川豊に手渡した。

飛び散る火花が、温井恵が仕掛けた可燃物に瞬く間に燃え移り、火が倉庫中に広がっていった。

「早く逃げて、火事だ!」陸川豊は叫び、赤楚司の手を引いて走り出した。

だが、慌てた赤楚司は数歩進んだところで、散乱する物に足を引っ掛け、転んでしまった。陸川豊はすぐに振り返り、彼を抱え起こした。

その瞬間、陸川豊の服の端が火の粉に燃え移ったが、彼は赤楚司が火に焼かれないよう気遣い、痛みを堪えながら彼を倉庫の外へ押し出した。

しかし、立ち上がった赤楚司は振り返ることもなく、ただ走り去っていった。

映像はここで終わった。

私は陸川一航を見て言った。「その後のことは、あなたも知ってるんだろう」

陸川一航は青ざめた顔でその場に崩れ落ち、魂が抜けたような虚ろな眼差しをしていた。「どうしてこんなことに......」彼は唇を震わせ、呟いた。

彼はずっと陸川豊を問題児だと思い込み、ことごとく敵対していると決めつけてきたが、まさか彼がこんなにも優
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