第75話

「刺激的なこと？何か?」

伊吹嵐はどうも勝手がわからない。

鈴木美香は不機嫌そうに口を尖らせた。「私みたいな美人が目の前にいるのに、見えないの」と言った。

「聞いたことあるけど、万豪ホテルのプレジデンシャルスイートのダブルベッドはとてもいいらしい。私と一緒に体験してみよう」

鈴木美香は媚びた目で、密かにストッキングを履いた長い足を伊吹嵐の腰に触れさせ、軽く擦り付けた。

「君とそのホテルで少し休みたい。

「安心して、このことは君と私が知ってるだけだ。智子ちゃんにさえ、知らせないわ」

伊吹嵐は急いで顔をそむけ、一時の衝動で相手と何かが起こるのを恐れた。

「鈴木さん、私たちは…えぇと！やはり今、東田社長に会ったほうがいいよ」

鈴木美香は言葉を聞いて、くすりと笑った。

「はは！あなたを焦らせてごめんなさい、冗談だよ！さあ、智子ちゃんに会いに行こう」

伊吹嵐は安心した。「ただの冗談だったのね」

しかし、鈴木美香の何気ない表情に、気づかれにくい失望の色がちらっと見えた。

自分の魅力が東田智子に比べて劣っているのか？

自分がこんなに積極的になったのに、この男はまだとぼけている。

やはり、

東田智子が後悔する前に、伊吹嵐を自分の手に入れなければならないと彼女は心の中で決めた。

同時に、

万豪ホテルの事件が波紋を広げる。

虎門の上野研介は失踪し、春名沙織は病院に運ばれ、植物人となった。

夫の春名幸司は病院に運ばれる途中で、自らの呼吸器を抜いて自殺した。

函館市、さらには東北地方全体に衝撃と波紋が広がった。

遠く万里ので、一群のスーツ姿の老人たちは、怒りで新聞を投げ捨てた。

「こんな大胆な行動をとる人は誰だ？まさか沙織さんに手を出すとは！これはまさに我々の面目を地に踏みにじる行為だ」

「最精鋭の部隊を派遣して、函館へ調査せよ」

「聞いたところによると、鈴木家の鈴木美香がこの事件を自分がやったと認めたらしい」

「ふん、京都の鈴木家か？地方の家族が我々の頭にまで上がってきたとは。

「彼女がやったかどうかにかかわらず、代償を払わせなければならない」

函館市の何処かの隅、

一人の黒衣の男が腹を立て足を組みながら言った。

「その東田智子が死んでいないとは。伊吹嵐を甘く見ていたね」

陰山翔太はもともと、若生玲子を利用した反間計で、彼らが