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第21話

伊吹嵐は眉をひそめながら窓ガラスの前に立ち、遠くから大声で言った。

「うるさい。静かにしろ」

階下の数万人が即座に口を閉ざし、しんと静まり返り、針が落ちる音さえ聞こえた。

ドスン

上野浩志は脚を震わせ、ほとんど立てなくなりそうになり、冷汗を流した。

西坂和夫が本当に伊吹嵐の呼びかけに応じて来たのか?

それは函館市の三巨頭の一つだ。

この男の前では、何でも人の言いなりになった。

東田智子も唖然として言った。

「あなたが西坂和夫も呼べるの?」

「早く」と上野浩志がしわがれた声で言った。

「父さんに電話して!虎門から援軍を送ってもらえ。数万のヤクザに囲まれた」

「信号がないです。きっと遮断されていました」

「市庁の連中はどこへ行ったのか?こんな大騒ぎがあって、なぜ彼らはまだ人をよこさないんだ」

上野浩志はもう気が狂いそうだ。心の中で恐ろしい念が浮かんでいた。

もしかして、すべては伊吹嵐のせいか?

あり得ない。彼の力がどれほど大きくても、地域の通信を遮断し、市庁をコントロールすることはできない。

その間、伊吹嵐は険のある表情で迫っていた。

手下たちも恐怖で逃げ散り、誰も彼を止めることができなかった。

上野浩志はビクビクしながら絹を咲くように叫んだ。

「誰か助けてくれ!一億、十億、一百億を出す。虎門の半分でもいい!」

手下たちは声も出さず、誰も動かなかった。

金は確かに重要だが、命が最も大事だ。

上野浩志のために伊吹嵐という殺人鬼に逆らって命をかける人はいない。

そのとき、静かな声が響き渡った。

「若旦那様、どうしてそんなに動揺していますか?」

一言で千重波を巻き起こし、全員が目を見張った。武道の達人だけがこの生まれながらの圧倒的な存在感を持っている。

武道はこの世界の真の支配者だ。そして武道の達人は、すべての人が仰ぎ見る存在だ。

道服を纏った年老いた老人が、落ち着いた様子で歩いて登場した。

「宮崎さん、今日はどうしてここに」と上野浩志は大喜びで言った。

相手は虎門の供奉の武道達人である宮崎政昭だった。

函館市では、武道達人は珍しい存在で、西坂和夫が武道の片端をかじっただけて、地下組織の主宰者として称えられた。

たとえ最も弱い武道達人でも、十人の西坂和夫を秒殺できる。

虎門は毎年数十億円を使って宮崎政昭に守護さ
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