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第 0194 話

彼が近づいてきた瞬間に瀬川秋辞は気が戻った。再び焦点を合わせた視線には男の魅力的な唇があった。彼女は思わず後ろに身を引いたが、その瞬間に相手に腰を抱き寄せられた。「10分だけでいい」

意味不明な話だったが、彼女はなんとかわかった。

男の体から漂う香りは彼女にとって馴染み深いものだった。親密な行為はなくても、3年間一緒に過ごしてきた。瀬川秋辞は彼の胸に寄りかかって、耳には安定感のある鼓動が聞こえた。

それ以外は、世界は静まり返っていた。

この瞬間、瀬川秋辞は本当に彼を拒絶する気持ちがなかった。おそらくは、さっきの疲れ果てた論争で全てのエネルギーを使いきってしまったからだろう。

彼女は体を緩めて、
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