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第0018話

瑠璃は自分の反撃がうまくいったと思っていた。しかし、蛍の一言が彼女を一瞬で打ちのめした。

隼人が蛍の妊娠検査に付き添っているなんて、考えもしなかった。

本来なら夫婦が一緒に行うはずのことなのに、彼はその大切な瞬間を蛍と共有していた。

蛍は得意げに瑠璃に近づいてきて、「瑠璃、どうしたの?もしかして、すごく辛くて悲しいんじゃない?」と笑みを浮かべた。

瑠璃は拳をぎゅっと握りしめ、冷静さを保とうと努めた。「ただ、あなたの恥知らずさに驚いているだけよ」

彼女は蛍を鋭い目で見つめ、蛍の表情が一瞬曇った。

「四宮蛍、あなたみたいな恥知らずで不倫を誇る女なんて、世界中どこにもいないわ」

「この……!」

「隼人はいずれ、そのお腹の子が彼の子供じゃないって気づくわ」

蛍の偽善的な笑顔は一瞬崩れたが、すぐに皮肉な笑みを浮かべた。

「隼人は私を愛している。たとえお腹の子供が彼の子じゃなくても、間違いなく私を愛し続けるわ。あんたみたいにね、たとえ隼人の子を宿していたとしても、彼はその子を望んでいないし、産むチャンスさえ与えないのよ!」

蛍は怒りを抑えつつ、瑠璃の腕を掴み、表情を変えて急に泣き出し、大声で叫んだ。

「瑠璃、お願い、隼人を返して!私は彼を心から愛しているの!」

この女、一体何を言っているのか?

「瑠璃、殴るなり罵るなり好きにして、どうか私の赤ちゃんを傷つけないで!あああ!」

突然、蛍は叫び声を上げ、瑠璃の手を離して階段から転げ落ちた。

周囲の人々は驚き、集まってきてざわつき始め、何人かは瑠璃を指さして叫んだ。「この女、妊婦を階段から突き落としたぞ!」

「違う!私は突き落としていない!」

瑠璃は必死に否定したが、誰一人として彼女を信じようとはしなかった。

蛍の様子を確認しようとした瞬間、突然誰かに力強く突き飛ばされ、瑠璃は踏みとどまることができずに手すりにぶつかった。お腹を押さえて座り込んだ彼女は、顔を上げると、隼人が階段を駆け下り、意識を失った蛍を抱き上げるのが見えた。

自分の夫であるはずなのに、別の女を心配し、彼女が非難されても無視していた。瑠璃はそんな隼人の姿を見て、心の中がどんどん冷えていくのを感じた。

隼人、どうして彼女にこんなことをするの?

もし愛していることが間違いだというなら、瑠璃はとんでもない過ちを犯してしまったのかもしれない。

瑠璃は、隼人が叱責するくらいだと思っていた。しかし、彼が取った行動は警察への通報だった。

瑠璃は妊娠検査や腫瘍の検査結果を待つ暇もなく、代わりに冷たい手錠が手首にかけられることになった。

警察官は厳しい表情で告げた。「四宮瑠璃さん、証拠と証言に基づき、あなたは故意に傷害を加えた疑いで捜査されます。直ちに警察署に同行してください」

瑠璃の主張は全く聞き入れられず、取調室に連れて行かれた。

彼女は繰り返し、自分は蛍を突き落としていないと主張したが、警察は監視カメラの映像を突きつけた。

病院のホールに設置されたカメラには、瑠璃と蛍が階段付近で話している様子が映っていた。

蛍は穏やかで優しそうな表情をしているのに対し、瑠璃は冷たい表情をしていた。そして、二人が軽く揉み合った後、瑠璃が蛍を押し倒したように見える映像が映し出された。

さらに、妊婦二人がわざわざ警察署に来て証言した。彼女たちは蛍が「赤ちゃんを傷つけないで」と懇願しているのを聞き、その後、瑠璃が蛍を突き落とすのを見たと証言していた。

この「証拠」と「証言」の前に、瑠璃は愕然とした。

完全に蛍に罠にはめられ、周りの全員が蛍の演技に騙されていた。そして彼女はそのまま拘置所に入れられた。

薄暗く冷たい鉄格子の中で、瑠璃は恐怖に包まれた。

もし故意傷害の罪が確定すれば、刑務所行きだ。しかし、彼女は妊娠していて、この子供をこんな目に遭わせるわけにはいかないのだ。

その思いに駆られ、瑠璃は鉄格子にしがみついて叫んだ。「私は無実です!誰も突き落としていません!夫に会わせてください!お願いです、夫に会わせて!」

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