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第 0090 話

隼人はそう言いながら、そのまま座ろうとした。蛍がわざとらしく彼の腕を軽く引っ張り、気を利かせたように言った。

「隼人、こんなの大丈夫かしら?瑠璃はあんまり気が進まなさそうよ」

瑠璃はジュースを蛍の顔にぶちまけたい気持ちでいっぱいだった。彼女のどこを見てそんなことを言うのか。

しばらく沈黙が続いた後、隼人の冷たい声が耳に入った。

「彼女にはそんな資格はない」

そうだ、自分には何の資格もない。隼人の目には、自分は何の価値もないのだ。

瑠璃が何も言わず、沈黙しているのを見て、蛍は心底満足そうな表情を浮かべた。

彼女はバッグを置き、瑠璃の隣に座ろうとしたが、隼人は向きを変えて、瑠璃の隣に座った。

蛍は一瞬気まずそうにしたが、瑠璃も少し驚いた。

しかし、夫婦としての立場からすれば、隼人が彼女の隣に座ることは特におかしなことではなかった。

蛍は不満を内に秘めながら、瞬の隣に座ることにした。すぐに気を取り直した。瞬はルックスも気質も完璧で、一流の男性だったからだ。

隼人が注文した料理が次々と運ばれたが、どれも蛍の好物ばかりだった。瑠璃はその様子を見て、食欲がなくなった。

何度も自分に言い聞かせたが、心はまだ脆く、またしても傷ついてしまう。

その時、隼人が辛い料理を瑠璃の前に置いた。

「お前のために特別に頼んだんだ」

「……」瑠璃は困惑し、彼を見上げた。

隼人は意味深に笑って言った。「君は辛い物が好きだろう?特に焼き鳥が」

「……」瑠璃は思わず笑いたくなった。彼はまだ彼女が若年と一緒に路上で焼き鳥を食べたことを覚えていて、それを持ち出しては彼女を非難し、嘲笑した。

「瑠璃、隼人がわざわざ頼んでくれたんだから、しっかり食べてね」蛍がタイミングを見計らって言った。

瑠璃は笑みを浮かべ、蛍に向かって言った。

「愛人の前で、食事はちょっと無理だわ」

蛍の顔色は一瞬で暗くなり、隼人も食事の手を止めた。

「瑠璃、わざと場を乱すつもりか?」

「そんなことするわけないじゃない」瑠璃は隼人に微笑んで答えた。「夫と一緒に食事する機会なんて滅多にないんだから、嬉しくて仕方がないわ」

隼人は意味ありげな笑みを浮かべ、彼女の顔を鋭く見つめた。「それなら、もっと食べろ」

「ありがとう、でももうお腹いっぱいなの」瑠璃は瞬を見て、「目黒社長、ご馳走様でした。先に会
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