第3話

美香の表情が一変し、企みが成功したかのように得意げな笑みを浮かべた。

「やっと私一人が両親の娘になれたわ！もう姉とケーキを分ける必要もないわね」

そう言いながら、美香が嬉しそうにケーキを切ろうとした瞬間、突然のノックに手が止まった。

母がドアを開けようとしたが、相手の顔を見た途端に閉めかけた。しかし、祖母の手がそれを阻んだ。

「末菜に会いに来たんだよ」

来訪者は他でもない、母の実母である私の祖母だった。

母は祖母を嫌っていた。それは美香が祖母を嫌っているからだ。

美香が祖母を嫌うようになったのは、初めて会った時のことだった。

私が6歳の時、小学校入学を前に、祖母が私を連れて遠路はるばる両親を訪ねてきた。

ドアを開けると、ピンクのフリルドレスを着た美香が出迎えた。

私たちを一目見るなり、美香の笑顔は凍りつき、失望した表情を見せた。

「あんたが不吉な姉の末菜？ダサいわね」

美香は私を馬鹿にした後、祖母に向かって鼻をつまむしぐさをした。

「おばあさん、臭いわ。何日もお風呂に入ってないの？」

期待に胸を膨らませていた私と祖母は、その場で固まってしまった。

すると美香は母の胸に飛び込んで、泣きながら言った。

「どうしておばあちゃんは汚くて臭いの？

お友達のおばあちゃんはみんないい匂いがして、高級車に乗って、たくさんお小遣いをくれるのに」

その後、祖母は私のことを心配して、都会に住んで面倒を見ようとした。

だが美香は猛反対し、祖母が住むなら死んでやると脅した。

家族で大騒ぎになった末、結局祖母が諦めて田舎に戻ることになった。

千キロ以上の距離を、乗り心地の悪い普通席で十数時間かけて、祖母は私のために何度も往復してくれた。

毎年の誕生日に必ず来てくれた祖母は、今年も来てくれた。でももう私には会えない。

祖母の来訪に、両親は明らかに動揺していた。

私も焦った。祖母に私の死を知られたら、高齢の彼女が受け止められるはずがない。

だが母は祖母を止められず、祖母は急いで家に入り、私を探し始めた。

「末菜はどこ？今日は末菜の誕生日でしょう？どうしていないの？」

リビングで私を見つけられず、祖母は私の部屋のドアを開けた。

「末菜の部屋がどうしてこんな風に？」

部屋いっぱいの服を見た祖母は様子がおかしいと気づき、母の腕をつかんだ。

「由美子！末菜をどこへやった？」

祖母の詰問に、母は目を逸らしたまま答えられなかった。

しかし美香は平然と言い放った。

「死んだわよ。自分で遊び回って病気になったから、お母さんが山に捨てたの。もう一週間も経つから、死体は腐ってるでしょうね」

美香は得意げにそう言った。

私は思わず彼女の口を塞ごうとしたが、手は美香の体をすり抜けた。

祖母は目を真っ赤にし、再び母の手を掴んで確認した。

「美香の言うことは本当なの？本当に末菜を捨てたの？」

母は体を縮こませ、かすかに頷いた。

祖母はその場に崩れ落ち、私への土産が床に散らばった。

私は必死に祖母を支えようとしたが、手は空を切るだけだった。

「誰か祖母を支えて！体が弱いのに、倒れたら大変よ！」

私は泣きながら叫んだが、誰にも聞こえず、誰も祖母を助けようとしなかった。

美香は笑みを浮かべた。

「自業自得よ。なんであんたみたいな年寄りが末菜を可愛がるのかしら。

不吉な子なのに、これで報いを受けたでしょう」

祖母は涙を拭いながら顔を上げ、美香に言い返した。

「末菜は不吉な子じゃない。むしろあんたこそ、小さい頃から末菜を虐めて、あんたのやってきたことは全部わかってるんだよ。

本当は病気になったのはあんたの方じゃないのかい？」