第4話

美香は慌てふためき、祖母の頬を思い切り叩いた。

「この老いぼれ、なんの証拠もないのにでたらめを言うな。誹謗中傷で訴えてやるわよ」

美香の暴力的な行為に、両親は目を背け、母はむしろ美香を庇った。

「美香はこんなにいい子なのに、そんな病気になるはずがないわ。

お母さん、もう頭がおかしくなったんじゃないの」

祖母は失望の表情を浮かべたまま、目を閉じ、息を引き取った。

美香は笑いながら、祖母を足で軽く蹴った。

「死んじゃったの？」

母は冷静を装いながら「まさか」と呟いていたが、祖母の息を確かめようと屈んだ瞬間、顔色が変わった。

「どうして......」

美香は母の様子を見て、自分も祖母の息を確かめた。

「本当に死んでる？」

二人はその場に座り込み、呆然としていた。

美香は泣き出し、母にすがりついた。

「どうしよう、ちょっと蹴っただけなのに。私、刑務所に入りたくない！」

母は一瞬の戸惑いの後、すぐに美香を抱きしめて慰めた。

「大丈夫よ。美香は人を殺してないわ。刑務所なんか行かないから」

そして両親は祖母の遺体を冷凍庫に隠した。

今になって怖くなったのは、美香が本当に刑務所に入り、前科者になることだった。

美香は可愛がられていたが、祖母は母の実の母親で、育ての親だった。

今、祖母は美香に殺されたも同然なのに、母は一言も文句を言わず、むしろ遺体を隠そうとする。本当に美香を溺愛しているのだ。

しかし、その大切な娘は遺体を隠している間に主寝室に忍び込み、貴重な装飾品と数百万円の現金を持ち去っていた。

気付いた時には、美香は大金を持って姿を消していた。

父は空っぽの金庫を見て、ついに怒りを爆発させ、母の頬を叩いた。

「由美子！これがお前の言う福の子か？ただの泥棒じゃないか！

こんなに甘やかしてやったのに、警察に通報する」

母は父が警察に通報しようとするのを見て慌て、頬を押さえながら泣きついた。

「お願い、健二。美香はいつもいい子なの。今回はただ怖くなって家のお金を持って逃げただけよ。見つければいいの」

父が躊躇うのを見て、母は更に言い続けた。

「大丈夫よ。私は美香のことをよく分かってるから」

父は結局携帯を置き、母と共に家を出た。

だが、母は間違っていた。彼女は美香のことを全く理解していなかったのだ。

二人が街中を走り回り