第169話

紗希は少し溜息をついて言った。「いいえ、最優主演男優賞が私を助けてくれただけです」

最優主演男優賞のあいまいな公式発表は、確かに効果的だった。

風間は紗希を見つめながら言った。「紗希、お前が最優主演男優賞と知り合いだとは思わなかった！」

紗希は奈美の方をちらりと見た。奈美の表情もあまり良くなかった。奈美は冷ややかに皮肉を言った。「最優主演男優賞が助けてくれたからって、何も証明できないわ」

奈美は少し嫉妬していた。彼女も紗希に劣らないのに、なぜ紗希はこんなに人付き合いが良くて、最優主演男優賞のようなイケメンとまでも知り合いなのか。

紗希は時計を見た。そろそろ人が来るはずだ。

彼女は笑顔で奈美を見たが、その笑みは目には届いていなかった。「先輩、心配しないで。すぐに釈明しますから」

風間は疑わしげに言った。「紗希、証拠があるなら出してみろよ」

「まだその時じゃありません」

奈美は冷ややかに言った。「紗希、あなたは証拠があると言い続けているが、隠して出さないでいて、誰もあなたの話を信じるはずない。その最優主演男優賞だってただの役者でしょ。芸能界はあんなに乱れてるんだから、彼だってお金持ちのおばさんや、おじいさんとベッドインをして最優主演男優賞を取ったんでしょ。最優主演男優賞という後ろ盾があるからといって、疑惑が晴れると思わないで」

「奈美、そんな汚い言葉を吐くなんて、今朝歯を磨いてないの？最優主演男優賞が今日まで来れたのは実力のおかげよ。あなたは口を開けばすぐ噂を流すなんて、母親に行儀作法を教わらなかったの？」

紗希は他人が最優主演男優賞を中傷するのを許さなかった。南が最優主演男優賞のスタントマンだったからだ。この数年間、最優主演男優賞も南も一生懸命頑張ってきた。

奈美は声を高くした。「ほら、怒って言わせないようにする。もしかして当たってるんじゃない？」

紗希は深呼吸をした。突然、彼女はある人々が同情に値しないと感じた。

奈美と同じ女性として、彼女は奈美にたくさんのチャンスを与えていた。これらの証拠がいったんネットにアップロードされたら、奈美は一生人として生きていけなくなる。

しかし、奈美のような悪意のある女性は同情するに値しない！

彼女は風間を見て言った。「先輩、あなたの言う通りです。今すぐ証拠をネットにアップロードします。そうすれば真相が