第9話

夜の山は冷たく湿っていて、霧が立ちこめ、空気はどこか重苦しかった。僕は携帯のわずかな光を頼りに、子どもたちの足跡を追っていた。

月子は狂ったように体をよじり、怒りに満ちた目で、まるで僕を殺すかのように睨んでいた。

僕は彼女に尋ねた。

「知っているか？星奈のDNA検査結果では、僕と血の繋がりはなかった」

月子は叫んだ。

「それは当然よ！星奈は誰とも血縁なんてない！」

「いや、君と関係があるんだ。検査結果は、星奈が君自身だと言っている。つまり、君と星奈は同じ存在だ。普通の検査では、それを証明できなかっただけださ」

池のほとりにたどり着くと、雪奈は無事で、地面に座りながら星奈が語る話に耳を傾けていた。

僕たちが近づくと、星奈は顔を上げて言った。

「父親として、あなたはとても立派だわ。もしあなたが本当に私のパパだったら、よかったのにね」

「山田星奈、いや、中村星奈と呼ぶべきか？」

星奈は立ち上がったが、その目は僕の後ろにいる月子に向けられていた。

「どうやらすべてを理解したようね」

そうだ、すべてがはっきりとわかった。なぜ星奈が僕や雪奈を傷つけなかったのか、なぜ彼女が月子に対してこれほど強い憎しみを抱いているのか。

彼女は月子の双子の姉だったのだ。

月子は幼い頃、体が弱かった。彼女たちの村は迷信が根強く、巫術が盛んだった。ある老媼が「この双子はどちらか一人しか生き残れない。二人とも生き続けると、体の弱い方が生き地獄を味わうことになる」と言ったらしい。

おそらく、月子は大人たちの会話を盗み聞きし、無知で自分勝手な彼女は、姉の星奈が自分を苦しめるのではないかと恐れた。そして、ある夜、彼女は星奈に「オタマジャクシを捕まえに行こう」と裏山に誘い出した。

冷たい夜風の中、池に突き落として溺死させた。こうして双子のうち、唯一生き残ったのが月子だった。

お義母さんはこの真実を知っていたようだが、唯一残された娘を守るため、警察に通報しなかったのだ。

池の底に沈んだ星奈の遺体は、そのまま何十年も眠り続けていた。

そして、月子の体調はその後、本当に良くなり、幸せな生活を手に入れた。

だが今、星奈が戻ってきた。

「星奈、君の気持ちはわかる。今すぐ警察に通報して、月子を逮捕させるさ。彼女とは離婚して、すべてを失わせ、刑務所で罪を償わせる。彼女の人生はもう