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第397話

彼の目の前には、果てしなく広がる濃密な森が立ちはだかっていた。

この森には、数多くの野獣が潜んでいる。

昼間でさえ、この森に足を踏み入れれば襲われる危険性がある。ましてや夜であれば、なおさらだ。

奏はボディガードたちに守られながら、この恐怖が潜む森の中に足を踏み入れた。

彼は手に持った懐中電灯で、絡み合ったツルや枝葉が密集する前方を照らし、胸中に絶望が次第に膨らんでいくのを感じた。

どうして彼女はこんなことをしたのだ?!

一体どうして、この森に入るという決断をしたのか?

本当にここから無事に抜け出せるとでも思ったのだろうか?

これが死への道だと分かっていながら、なぜ引き返さなかったのか?

たとえ途中で恐怖に駆られて戻ってきたとしても、彼はここまで怒りはしなかったはずだ。

「とわこ!」彼は喉を震わせ、震える声で彼女の名前を呼んだ。

彼が叫んだのを皮切りに、ボディガードたちも声を揃えて呼びかけ始めた。

「とわこさん!私たちはあなたを探しに来ました!もし声が聞こえているなら、応答してください!」

しかし、返ってくるのは、ただ風が鳴り響く音と、動物たちのかすかな動きの音だけだった。

彼らは約20分ほど苦労しながら前進した。すると、懐中電灯の光が地面に落ちている一枚のガウンを照らし出した。

それは今夜、とわこが着ていたガウンだった。

夕方、彼女に風呂を使わせた後、彼女のための替えの服がなかったので、奏が自分のガウンを彼女に着せたのだ。

この灰色のガウン……それを彼が自ら彼女に着せたのだ。

それが今、どうしてここに落ちているのだ?

どうしてガウンが彼女の体から離れたのか?

彼の胸は張り裂けそうになり、慌ててガウンのもとに駆け寄り、それを拾い上げた。

「奏さん、服が破れている……しかも、血がついています!」

ボディガードは、ガウンの破れた部分と血がついている箇所を奏に見せた。

奏はガウンを握る手が震えを止められなかった。

彼女は間違いなく野獣に襲われたに違いない!

そうでなければ、服が引き裂かれたり、血がついていたりすることはなかったはずだ。

彼女は今、きっと怪我をしている。

しかも、彼女の身には何もまとっていない……た
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