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第429話

北條守は前に出て葉月琴音の手首を掴んだ。「行くぞ、建康侯爵家へ」

琴音は力強く彼の手を振り払った。「行かないわ」

北條守は庭に立ち、目つきを険しくした。「行かないなら、縛り上げて連れて行く。自分で行くか、それとも縄で縛られて背中に鞭を負うて行くか、どちらがいい?」

「よくも!」琴音は怒りと屈辱感に駆られた。「たかが一言で、どんな大罪を犯したというの?どうして謝罪しなきゃいけないの?」

北條守は歯ぎしりした。「お前が何をしたか、自分でわかっているはずだ。お前の罪は、謝罪どころか、殺されても足りないくらいだ」

彼は横にいる侍女たちを一瞥し、怒鳴った。「出て行け!」

侍女たちは驚いて慌てて逃げ出した。

琴音は彼を見つめ、目を赤くした。「今のあなたに、かつての面影は微塵もないわ。本当に私を嫌悪しているのね。そうなら、なぜ私と結婚したの?」

守は崩壊寸前だった。彼は琴音に向かって怒鳴った。「俺が間抜けだった。目が眩んでいた。人を見る目がなかった。お前が言うように正々堂々としていると思ったんだ。でもそうじゃなかった!」

琴音は耳を塞いだ。「黙って!あなたが見誤ったのよ。上原さくらが私を受け入れると思ったから、私を娶ったんでしょう。でも彼女はあなたが平妻を娶ることを許さなかった。あなたが私を好きだと言ったのは、ただ新鮮さを求めただけ。あなたには良心がない。薄情で裏切り者よ、北條守。私があなたを見誤ったのよ」

守の顔色が灰白になり、一瞬彼女の言葉が心の奥深くを突いたかのようだった。

彼は背筋を伸ばし、冷たく言った。「過去のことはもう言わない。だが今日、お前は必ず私と建康侯爵家に行く。それに昨日手足を折った者には、お前が賠償金を払え。さもなければお前は牢獄行きだ」

「でたらめを!昨日誰も殴ってなんかいないわ」琴音は突然思い出した。「まさか親房夕美が私のことを言ったの?私が彼女を殴ったって?」

守は怒鳴った。「とぼけるな!昨日糞尿をかけた奴だ。お前が捕まえて手足を折ったんだろう。その男はもう京都奉行所に訴えている。京都奉行所の役人が来るのを待っていろ。今日の朝廷で弾正忠たちが俺を告発した。家を統制できず、下僕が民を傷つけたと。この将軍家で、お前以外にそんな乱暴な真似ができる者がいるか?」

琴音は怒りで顔を青くした。「私じゃない。昨日は庭の門さえ出ていないわ。
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